2019.08.02更新

1 知財調停制度開始!
 少し前から業界で話題にはなっていますが、東京地裁と大阪地裁で、10月から新たに「知財調停」という制度の運用が開始されるそうです。8月1日に東京地裁のHPで指針が公表されました。
 この件については、弁理士会の研修所主催の継続研修がありました。私は今年から研修所の委員になったので、司会役に立候補して司会枠で受講をしてきました。
 タイミング的に合いますので、この新たな制度に対する私の個人的な感想を述べさせていただきたいと思います。

 

2 制度の内容
 この知財調停制度、法律が変わるわけではなく、従前あった民事調停制度の運用を少し変えて、知財に関する調停の場合には、一般の民事調停に携わっている裁判官・調停委員ではなく、知財部の裁判官・知財に携わる弁護士や弁理士の調停委員が担当してくれるというものです。
 侵害訴訟でも侵害論と損害論を分けて侵害か否か心証開示をするという運用がなされているため、当事者は裁判所がどう判断するかを考慮に入れながら和解交渉をしているわけですが、今回の知財調停はそれを調停という訴訟とは異なる制度の中で行えることになります。
 なお、調停でまとまらない場合には訴訟に移行できますが、その場合、調停を担当した裁判体とは別の裁判体が訴訟を担当するということでした。つまり、調停における裁判体が示した見解は、訴訟には引き継がれないということです。とはいえ、調停段階で裁判所が和解案などを提示した場合には、和解案の内容から裁判所の見立てが読み取れることもありますから、調停における和解案の内容を訴訟で証拠として提出して、訴訟の方の結論に事実上の影響を与えるといったことも考えられそうです。

 

3 新制度のメリットは?
 報道では、短期間で解決ができることがクローズアップされているようです。しかし、3か月から6か月で解決というのはあくまで目標であって、原則3回という期日も、当事者双方からの要請があればさらに回数を重ねられるとのことでした。直感的で判断のしやすい商標の類比などの事案であれば3か月から6か月で決着がつくケースもありそうですが、特許の案件について3か月で裁判所から充足論・無効論の心証を引き出すというのは、通常の案件では難しいと考えられます。
 むしろ、私個人としては、非公開ということや訴訟という手続でないことの方が、知財調停のメリットになるように思いました。
 訴訟の場合、第1回期日は公開の法廷で行われますから、訴訟があったこと自体は、世間に知られることになります(当事者がプレスリリースをしたり報道機関が報道したりでもしない限り、インターネットを見ればすぐに分かるということはありませんが、知財提訴データベースなどのサービスを使えば、全ての案件を把握することも可能です。)。これに対し、調停制度の場合は、申立ての有無も含め非公開です。訴訟をしていること自体を知られたくない場合、かつ、現実に判断を下す裁判官の意見がほしいという場合(この点が必要なければ、知財仲裁センターの調停でも同じことが実現できます。)には、利用価値がありそうです。
 もう一点は、訴訟という手続ではない点です。大企業の場合、知財訴訟をする場合には取締役会の決議が必要といった具合に、社内手続が大変で訴訟を断念するといったケースもなくはありません。会社によって社内手続も様々でしょうが、調停であれば知財部の判断で申立てができるといった企業にとっては、この知財調停という制度は使いやすいものになります。先ほど説明したとおり、訴訟に至った場合と同じ裁判体ではないですが、それでも裁判官が見解を示してくれるので、和解をする際に社内の合意も得られやすいかと思います。

 

4 大阪地裁のHPで更なる情報が…
 なお、東京地裁知財部のHPによれば、今の東京地裁のHPより詳しい内容が、9月頃に大阪地裁知財のHPで発表されるそうです。こちらも確認してまたブログをアップしたいと思います。

(河部)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

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