2019.10.29更新

 弓削田弁護士がインドネシア法務を取り扱っていることもあり、私は、日本インドネシア法律家協会(通称「JILA」)という団体に所属しています。
 先日、その関係でインドネシア最高裁・弁護士会を訪問しました。

 

 私のような平会員までインドネシア最高裁判所の判事との意見交換会に参加できてしまうのがJILAの凄いところで、2回インドネシアを訪問しているだけの私も、2回ともインドネシア最高裁判事との意見交換会に参加させていただいています(1回目はおそれ多くも弊所で扱った即決和解のケースについてお伝えさせていただきました。)。
 今年はスケジュールの都合で最高裁を撮影する時間がなかったので、前回訪問した際の写真を貼り付けておきます。
 1枚目は正面からの写真↓

2019.10.29

 

 2枚目は最高裁判事全員が着席して会議ができる豪華な大会議室のようなところ(法廷っぽいですが、法廷ではないらしいです。)↓

2019.10.29.2

 いずれもJILAのHPに載っている写真と全く同じですが、撮影者が私なので著作権法的には問題なしです。

 

 また、今回は初めて弁護士会を訪問しました。インドネシアの弁護士会は複数に分裂しており(東京の弁護士会みたいなものでしょうか?)、訪問したのは「KONGRES ADVOCAT INDONESIA」(通称「KAI」)です。会長のお話だと、現在インドネシアには7万人くらいの弁護士がいて、そのうちの2万数千人の弁護士がKAIに所属しているそうです。
 KAIは日弁連を訪問したことがあるようで、KAIの事務所には日弁連を訪問した際の写真が飾ってありました。
 わざわざ日本語でJILAのロゴ入りのポスターや横断幕まで作ってくれる歓迎ぶりで、KAIのバッジまでいただきました。

2019

 最後に、インドネシアで知財的に気になったものの写真を貼っておきます。

2019.10

 以上、インドネシア訪問の報告でした。

(河部)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2019.10.17更新

 前回に引き続き、『知的財産紛争の最前線No.5』を読んでみて気になったことについて触れてみたいと思います。

 

 「大坂高等裁判所第8民事部および大阪地方裁判所第21・26民事部と大阪弁護士会知的財産委員会との協議会」では、「特許権等に関する訴え」(民事訴訟法6条1項)の管轄についての話が興味深かったです。
 「特許権等に関する訴え」は、東日本は東京地裁、西日本は大阪地裁の専属管轄です。上記協議会では、「特許権等に関する訴え」でないと誤って判断して、東京地裁・大阪地裁以外の裁判所に提訴をすると、後々そのことが控訴理由(民事訴訟法299条1項ただし書)・上告理由(民事訴訟法312条2項)にさえなってしまうことに言及がなされていました。
 私も、「たしかに訴状の中に特許の話は出てくるけど、特許の内容はほとんど関係ない普通の民事事件なんだけどなぁ。」と思う事件が東京地裁の知的財産部に移送された案件を経験したことがあります。
 東京・大阪以外の弁護士からすれば、クライアントに交通費や日当を請求するのは申し訳ないから、できる限り「特許権等に関する訴え」でないとして地元の裁判所で裁判をしたいところです。しかし、後でそのことが控訴理由・上告理由になってしまったのではたまりません。
 特許に関する話が出てくる訴訟を東京地裁・大阪地裁以外で提起する場合には、本当に「特許権等に関する訴え」に当たらないか、慎重に吟味した方がよさそうです。

(河部)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2019.10.01更新

1 毎年1回出る『Law&Technology』の「別冊」
 今年で5年目になりますが、知財関係の話を扱うことが多い雑誌『Law&Technology』は、「知的財産紛争の最前線」というタイトルで、毎年1回、裁判所と日弁連知的財産センターとの意見交換会、大阪高裁・大阪地裁の知財部と大阪弁護士会知的財産委員会との協議会の内容などを盛り込んだ「別冊」を発行しています。
 この「別冊」、上記の現役の知財部裁判官が色々なテーマについて話した内容だけでなく、現役の知財部裁判官が書いた記事も載っているので、弊所弁護士もかなり関心を持って読んでいます(実際に判断を下す裁判官の考えは気になるものですし、知財部裁判官自身の書いたものであれば、裁判例に類似するものとして、準備書面で引用しやすいからです。)。
 先日、『知的財産紛争の最前線No.5』が発行されたので、読んでみて気になったことについて触れてみたいと思います。

 

2 「ミニプレゼン」
 もう3年近く前に「口頭弁論の活性化」に言及しましたが、裁判所と日弁連知的財産センターとの意見交換会では、この点について言及がありました。どうやらこの5分程度のプレゼンテーションの通称は、「ミニプレゼン」のようです。
 「ミニプレゼン」について、寺田裁判官は、「また、審決取消訴訟の審理においては、現在、口頭弁論終結時に当事者双方にそれぞれ5分ないし10分程度のミニプレゼンを行っていただいている部もありますので、口頭弁論の活性化、充実化を図るという観点から、これを侵害訴訟の控訴審の審理において、応用するということも考えられます。」と話しています。
 ここからは、①審決取消訴訟では行われているけれども、今のところ侵害訴訟の控訴審では行われていない、②ミニプレゼンを行う部と行わない部がある、ことが分かります。
 私の「ミニプレゼン」経験数は3件ですが、1件が知財高裁4部、2件が知財高裁1部の案件でした。知財高裁4部での1件は髙部裁判官が部総括判事だった時期、残りの2件は髙部裁判官が知財高裁所長就任と同時に1部の部総括判事になった後の案件でしたので、おそらく今のところ髙部裁判官が総括する部でのみ行われているものと思われます。しかし、特許・実用新案の審決取消訴訟の審理要領にも「ミニプレゼン」についての記載がなされ、意見交換会のような発言内容が書籍に残る公式な場で現役の知財高裁裁判官が言及するようになったので、今後はもっと広がっていくのかもしれません。
 ちなみに、毎回の弁論準備手続期日で口頭のプレゼンテーションを行うという案件に1件だけ遭遇したことがありましたが、こちらについては審理要領などでも言及されておらず、実験的な試みだったようです。

 

3 「ミニプレゼン」対策
 前回は経験数が1件だけだったので「ミニプレゼン」についてどう準備すべきかなどには特に言及しなかったのですが、3件経験したので、少しだけお話させていただきます。
 プレゼンテーションという意味では技術説明会と同じなので、原稿の棒読みにならないよう、原稿を見ずに何度も練習することは重要だと思います。
 技術説明会と違うのは、①5分ないし10分程度と持ち時間が非常に限られている点(しかも時間厳守の要請はかなり強いです。)、②パワーポイント等での説明が想定されていない点です。
 ①については、それなりの時間をもらえることが多い技術説明会とは異なり、かなり論点を絞る作業が必要になります。
 ②については、せいぜい使えるのが特許の図面を引き延ばして大きく印刷した紙(法廷なので裁判官との距離が結構遠いです。)くらいなので、動きが問題になる機械系の案件などでは身振り手振りで口頭説明を補う努力も必要かもしれません。

(河部)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2019.09.18更新

 前回のブログで言及したとおり、大阪地裁知財部のHPで知財調停についての情報が掲載されました。


 率直に言って、追加の情報はあまりありませんでした。目新しいのは、
① 大阪地裁では知財部ではなく調停部である第10民事部が受付となっていること(東京地裁はまだ分かりません。)、
② 調停は非訟事件であり(民事調停法22条)、弁理士法6条の2が適用されないため、弁理士が代理人になろうとするときは、委任状と一緒に代理人許可申請書を提出して、調停委員(民事調停規則8条2項)又は裁判所(民事調停法22条、非訟事件手続法22条)の許可を得る必要があること、
③ 訴訟の場合と同じように、調停委員用に写し3部(調査官が関与する場合は4部)を提出する必要があること、
といった事務手続的な内容くらいです。


 ちなみに、②ですが、侵害訴訟のように弁護士と一緒でなければ代理できないという規定はないため、調停委員又は裁判所の許可があれば、弁理士の先生単独で代理できます。私個人の想像ですが、大阪地裁がわざわざ「弁理士が代理人となろうとする場合は」と記載して弁理士が代理人になることを想定している以上、基本的に許可を出す方向なのだと思います。
 運用開始まで残り13日、ぜひとも第1号事件を経験してみたいものです。

(河部)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2019.09.09更新

 現在の民事裁判上、書類は全て「紙」で裁判所へ提出されます。一定の例外的な書面を除き、 FAXで送信されることもあり、民事訴訟規則第3条1項には「ファクシミリ」というやや前時代的な用語も残っています。


 最近、裁判手続の迅速化の観点から、2021年度には、準備書面などのウェブ提出が導入される旨報じられています。特許事件においては、民事訴訟規則第3条の2等に基づき、「紙」媒体と同時にword等のデータファイルも提出するよう裁判所から要請を受けますが、「紙」媒体自体の提出を止め、ウェブ提出のみに絞るという方向のようです。


 弊所が頻繁に扱う審決取消訴訟では、審判段階で提出された書面を、基本的書証として原告側が全て提出する必要があり、時にはその紙の量は膨大なものになります。手続上必要性の低いものまで全て印刷して提出することは、手間、時間、印刷コスト(こちらは依頼者に負担いただくことが多いです。)が非常にかかり、上記のウェブ提出については非常に良い傾向と考えます。


 また、このようなウェブ提出と合わせ、民事裁判の審理を半年以内とする特別な訴訟手続の導入が検討されていることも報じられています(https://www.sankeibiz.jp/workstyle/news/190904/cpd1909041540004-n1.htm)。通常、訴訟となると1年半から2年程度を要し、コストと時間を考えると訴訟に躊躇する企業の方も少なくありません。上記の特別な手続においては、両当事者が同意することが前提のようですが、書面のウェブ提出による素早い主張交換を背景にして、紛争の早期解決を目指す企業の方によって良い手続となることは間違いありません。

(神田)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2019.08.26更新

 特許に関する侵害訴訟や審決取消訴訟のうち、事案が複雑なものに関しては、主張立証が尽きた段階(一般の民事訴訟でいうと証人尋問のタイミング)で、当事者双方が一定の時間をもらって事案について口頭で説明を行う技術説明会が行われることがあります。この技術説明会は、事前に開催の有無・持ち時間・説明内容・説明の順番などが決められて、当事者双方が当日のプレゼンテーション準備に十分な時間をかけて行われるものです。

 

 これに対し、無効審判段階では、口頭審理当日に審判体から当事者双方に主張を口頭で説明するように促されたり、当事者が審判体の質問に口頭で回答したりすることはありましたが、事前に持ち時間が決められ、当事者双方が十分な準備をして説明に臨むということは行われていませんでした。


 ところが、小林・弓削田法律事務所で担当している無効審判事件で、最近になって、審理事項通知書段階で持ち時間が決められ、十分な準備期間をもらって説明をする、技術説明会類似の運用が行われるケースに遭遇しました。


 この件だけなのか、他の件でも同様の運用がなされているかは分かりません。しかし、もしかすると、今後は無効審判の段階でも、技術説明会の際に必要なプレゼンテーション能力が問われるようになるのかもしれません。

(河部)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2019.08.13更新

 株式会社リクルートキャリアが提供する「リクナビDMPフォロー」というサービスに関し、同社が学生の「内定辞退率」を、学生の同意を得ずに38社の企業に販売していたことが問題となっています。


 この件に関し、リクルートキャリアは、「リクナビでは、2019年3月に『リクナビDMPフォロー』について言及したプライバシーポリシーへ変更いたしました。学生の皆さまが使用する複数の画面においてプライバシーポリシーに同意いただくサイト構成になっていますが、一部の画面においてその反映ができていませんでした。また、プライバシーポリシー変更の際には、『リクナビDMPフォロー』で分析スコアの対象となるすべての学生から適切な同意が取得できるよう設計すべきところ、考慮が漏れてしまっておりました。」(https://www.recruitcareer.co.jp/news/pressrelease/2019/190805-01/)と説明した上、「リクナビDMPフォロー」を廃止することを決定しています。


 周知のとおり、個人情報保護法23条1項は、同項各号に定める事由以外では、本人の同意を得ない限り、個人データを第三者に提供することを禁止しています。また、個人情報保護法16条1項は、本人の同意を得ない限り、個人情報取得当時に特定された目的以外の利用を禁止しており、同項の違反も疑われるところです。


 では、本件では、どのような「同意」を得ればよかったのでしょうか。上記のリクルートキャリアの説明から推察される問題点としては、①「複数の画面」の一部においてプライバシーポリシーへの同意取得画面が落ちていたこと、②「リクナビDMPフォロー」のサービスの対象となる「全ての学生」から同意を得ていなかったことと考えられます。したがって、プライバシーポリシーにどのような記載がされているべきであったか、という内容の問題ではなく、プライバシーポリシー変更に際し、学生の同意を得るプロセスに問題があったものと考えられます。


 このようなプロセスの問題については、ウェブサイトの適切な設計を求める他ないですが、サービスを複数展開する会社においては、個人情報を取得するにあたって。サービスごとにプライバシーポリシーの同意を得るという運用を心掛けるべきです。なぜなら、サービスごとに取得する個人情報が異なり、それぞれについて本人の同意を得るプロセスが必須であるにもかかわらず、本件のようにあるサービスにおいて同意を得ていたことから、他のサービスでも当然同意を得ていたという「誤解」を生む可能性があるからです。また、サービス間において、勝手に個人情報を連携させることは個人情報保護法16条1項の目的外利用にも該当しうる行為ともいえますので、注意が必要です。


 本件は、適切なプライバシーポリシーの作成のみならず、その運用にも十分注意を払うべきことを想起させる事案といえます。

(神田)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2019.08.02更新

1 知財調停制度開始!
 少し前から業界で話題にはなっていますが、東京地裁と大阪地裁で、10月から新たに「知財調停」という制度の運用が開始されるそうです。8月1日に東京地裁のHPで指針が公表されました。
 この件については、弁理士会の研修所主催の継続研修がありました。私は今年から研修所の委員になったので、司会役に立候補して司会枠で受講をしてきました。
 タイミング的に合いますので、この新たな制度に対する私の個人的な感想を述べさせていただきたいと思います。

 

2 制度の内容
 この知財調停制度、法律が変わるわけではなく、従前あった民事調停制度の運用を少し変えて、知財に関する調停の場合には、一般の民事調停に携わっている裁判官・調停委員ではなく、知財部の裁判官・知財に携わる弁護士や弁理士の調停委員が担当してくれるというものです。
 侵害訴訟でも侵害論と損害論を分けて侵害か否か心証開示をするという運用がなされているため、当事者は裁判所がどう判断するかを考慮に入れながら和解交渉をしているわけですが、今回の知財調停はそれを調停という訴訟とは異なる制度の中で行えることになります。
 なお、調停でまとまらない場合には訴訟に移行できますが、その場合、調停を担当した裁判体とは別の裁判体が訴訟を担当するということでした。つまり、調停における裁判体が示した見解は、訴訟には引き継がれないということです。とはいえ、調停段階で裁判所が和解案などを提示した場合には、和解案の内容から裁判所の見立てが読み取れることもありますから、調停における和解案の内容を訴訟で証拠として提出して、訴訟の方の結論に事実上の影響を与えるといったことも考えられそうです。

 

3 新制度のメリットは?
 報道では、短期間で解決ができることがクローズアップされているようです。しかし、3か月から6か月で解決というのはあくまで目標であって、原則3回という期日も、当事者双方からの要請があればさらに回数を重ねられるとのことでした。直感的で判断のしやすい商標の類比などの事案であれば3か月から6か月で決着がつくケースもありそうですが、特許の案件について3か月で裁判所から充足論・無効論の心証を引き出すというのは、通常の案件では難しいと考えられます。
 むしろ、私個人としては、非公開ということや訴訟という手続でないことの方が、知財調停のメリットになるように思いました。
 訴訟の場合、第1回期日は公開の法廷で行われますから、訴訟があったこと自体は、世間に知られることになります(当事者がプレスリリースをしたり報道機関が報道したりでもしない限り、インターネットを見ればすぐに分かるということはありませんが、知財提訴データベースなどのサービスを使えば、全ての案件を把握することも可能です。)。これに対し、調停制度の場合は、申立ての有無も含め非公開です。訴訟をしていること自体を知られたくない場合、かつ、現実に判断を下す裁判官の意見がほしいという場合(この点が必要なければ、知財仲裁センターの調停でも同じことが実現できます。)には、利用価値がありそうです。
 もう一点は、訴訟という手続ではない点です。大企業の場合、知財訴訟をする場合には取締役会の決議が必要といった具合に、社内手続が大変で訴訟を断念するといったケースもなくはありません。会社によって社内手続も様々でしょうが、調停であれば知財部の判断で申立てができるといった企業にとっては、この知財調停という制度は使いやすいものになります。先ほど説明したとおり、訴訟に至った場合と同じ裁判体ではないですが、それでも裁判官が見解を示してくれるので、和解をする際に社内の合意も得られやすいかと思います。

 

4 大阪地裁のHPで更なる情報が…
 なお、東京地裁知財部のHPによれば、今の東京地裁のHPより詳しい内容が、9月頃に大阪地裁知財のHPで発表されるそうです。こちらも確認してまたブログをアップしたいと思います。

(河部)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2019.08.01更新

1 前回ブログに引き続き…
 前回のブログで「知財業界での初体験」をテーマに特許権移転登録手続等請求事件を担当したことを取り上げましたが、今回も私自身の初体験事案として、税関の輸入差止手続の利害関係人として意見書を提出した案件について書いてみたいと思います。

 

2 輸入差止手続の流れ
 輸入差止手続の流れですが、まず、申立人が税関宛てに輸入差止申立てを行います。以前は全国の税関で差止めをしたい場合、各税関に書類を提出しなければならず事務作業が大変だったようですが、今は最寄りの税関に申立てを行うだけで良くなっており、だいぶ楽になっています。
 申立てがあると、税関は輸入差止申立て申請内容を公表します(営業秘密案件を除く。)。
 申立てが受理され、認定手続が開始されると、輸入を差し止められると困る業者(輸入者)は、認定手続開始通知書の日付の翌日から起算して10執務日(生鮮疑義貨物については3執務日)以内に、意見書を提出しなければなりません(詳しくは税関のHPをご覧ください。)。公表に気づいてから10執務日以内ではありません。訴訟手続であれば、訴状が手元に届いてから(≒訴訟提起をされたことを知ってから)30日くらいは時間があるので、訴訟のスケジュール感が普通だと思っていた私からすると、輸入差止手続のスケジュールは利害関係人側にとって非常に厳しく、驚いてしまいました。
 輸入差止めを受ける可能性のある商品を輸入するのであれば、毎日税関のウェブサイトをチェックするのはもちろん、自分が輸入したいものが輸入差止手続に入ったことを知ったらすぐに知財の専門家に相談できる体制を整えていないと、このスケジュールに対応できないかもしれません。差止めを受けやすい商品かどうかは、過去に輸入差止めを受けた商品をチェックすれば雰囲気を掴めると思います。
 このような手続を経て、権利侵害に当たるか否かが認定されることになります。

 

3 税関の知的財産調査官の陣容
 私の体験した案件では、意見書の提出だけでなく、一度税関の知的財産調査官の方々と面接をして、現物を実際に見てもらう機会をいただけました。
 この案件を受任した際には、どこかの段階で専門委員(ちなみに弊所の弓削田弁護士も専門委員候補です。)にバトンタッチをするのかなと思っていましたが、実際に面接に行って知的財産調査官の方々とご挨拶をしたところ、特許庁から出向している調査官の方、弁理士の方など、知的財産調査官の肩書は錚々たるものでした。
 担当者となる知的財産調査官は申立てのあった税関の調査官でしたが、私が担当した案件では、東京税関で面接が行われ、審理は東京税関の総括知的財産調査官の方も多数関与して行われているようでした。地方で申立てをされたけれども、東京の代理人に依頼をしたという場合には、東京で面接をしてもらうように働きかけてみることをお勧めします。

(河部)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2019.07.01更新

 とある知財系の懇親会で、弁理士の内田浩輔先生から、7月1日の弁理士の日に、「知財業界での初体験」というテーマでブログを書いてほしいとのご依頼をいただきました。内田先生は、弁理士の日にブログをやっている知財関係者が同じテーマでブログを書くイベントを毎年やっているそうです。

 

 https://benrishikoza.com/blog/benrishinohi2019/

 

 「知財業界での初体験」ということで、何を書こうか悩みましたが、私の中で面白かった初体験事案として、初めて特許権移転登録手続等請求事件を扱った件を挙げてみたいと思います。

 

 一般に冒認を立証するのは大変ですが、私の担当した案件では、開発段階で非常に詳細なノートをつけていたこと、一緒に担当した弁理士の先生が証拠の細かいが重要な部分に気づいてくださったこともあり、最終的に冒認を認める内容の判決を得ることができ、記念すべき平成23年改正で導入された特許法74条1項に基づく特許権移転登録手続の第1号案件となりました!(移転登録手続をやっていただいた弁理士の先生が特許庁で「初めての手続なので…」と言われたということなので、確かだと思います。)

 もちろん和解によって解決している事件もあるのでしょうが、平成23年に改正されているのに、平成30年になって第1号案件ですから、やはり冒認関係の訴訟は少ないのだと思います。特に冒認立証について、貴重な経験ができました。

 

 最近になって、公正取引委員会から「製造業者のノウハウ・知的財産権 を対象とした優越的地位の濫用行為等に関する実態調査報告書」が発表されました。その中では、「ほとんど自社の技術を用いて行う名ばかりの共同研究開発であるにもかかわらず、その成果である新技術は、発明の寄与度に関係なく、全て取引先にのみ無償で帰属するという取引先作成の雛形で契約させられ、新技術を奪われる」(事例18)、「新しい発明を出願する場合には、取引先が一切関与していない場合でも、必ず共同出願にしなければならないという取引条件を一方的に受け入れさせられる」(事例20)、「完全に自社単独で生み出した技術であるにもかかわらず、取引先から共同出願とするよう強要されるとともに、自社が第三者へのライセンスを行う場合のみ取引先の承諾が必要となる契約まで締結させられる」(事例21)、といった事例が問題事例として取り上げられています。
 上記のような案件では、元々どちらの技術であったかが争点となり、公正取引委員会に動いてもらえるよう働きかけたり、独占禁止法違反に基づく民事訴訟を提起したりする場合、被害を受けた中小企業側で、自社の技術が奪われていることを立証する必要が出てくる可能性があります。
 冒認の事実が認められた珍しい案件である本件が、今後独占禁止法という別の分野で注目されることもあるかもしれません。

(河部)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

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