2020.07.03更新

1 「電子署名」
 電子署名法第2条1項は、「電子署名」の意義について、以下のとおり規定しています。

 

「この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。」

 

 また、繰り返しになりますが、電子署名法第3条は、以下のとおり規定しています。

 

「第三条 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。」

 

 したがって、電子署名法第3条にいう「電子署名」の要件は、以下の4つです。
① 電磁的記録に記録することができる情報に関する措置であること
② 当該情報が本人作成であることを示すものであること
③ 当該情報が改変されていないことを確認できるものであること
④ 当該情報について行われる措置が本人のみが行うことができるものであること

 

 ①は簡単です。要は紙ではなく、データということです。
 ②は本人証明、③は非改ざん証明です。現在ではいわゆる公開鍵暗号技術が用いられており、詳細は割愛しますが、一般に流通する公開鍵と、当人のみが持ちうる秘密鍵を対照することにより、当人の電子署名と判定する方式です。
 ③は、公開鍵暗号技術であれば、公開鍵が本物か(本人の物か)否かに関する要件であり、これは、認証機関に公開鍵を預けて認証することが想定されています。
 以上のとおり、公開鍵暗号技術と認証制度を併用することにより、電子署名法第3条の「電子署名」となり、民事訴訟法第228条第4項の「押印」の代わりとなります。

 

 

2 押印と電子署名の使い分け
 電子署名法第3条と民事訴訟法第228条第4項は矛盾するものではないので、紙での契約書と電子署名が付された電子契約のいずれも、民事裁判における証拠としての効力は同様です。では、これらをどのように使い分けていくべきでしょうか。
 今後の民事裁判における立証に関わってくることですので難問ですが、個人と企業では対応が異なるように思われます。個人が金銭消費貸借契約書や遺産分割協議書を作成するにあたって、わざわざ電子署名サービスを利用して多数の契約書をさばくことは少ないでしょうから、従前どおり押印による契約書が残っていくと考えられます。
 他方で、企業にとって、電子署名は今後間違いなく増えていくと思われますが、電子署名の方式が裁判所において受け入れられるには時間を要すると思われますので、例えば取引の重要性(取引相手や取引額等)に応じて電子署名と紙契約書を使い分けていくことが無難な予想でしょうか。中小企業等(個人の方も含みます。)では電子署名を導入する経済的負担から、押印原則がしばらくは継続していくと予想されます。

 

 

3 知財業界ではどうか?
 本題が遅くなりましたが、知財業界では、押印の扱いはどうなっていくのでしょうか。知財が絡む契約としては、ライセンス契約や譲渡契約、共同開発契約等がありますが、こちらも「契約」であることに変わりない以上、「電子署名」がなされる限り、電子署名法に基づき真正に成立したことが推定されます。例えば、ライセンサーは一人ですが、ライセンシーは複数代理店のように振る舞うことにより商品を全国展開する例もあり、多数の契約締結の面倒さを避けるため、電子署名によるライセンス契約等は今後増えていくのではないでしょうか。
 また、対特許庁との関係でいうと、特許庁に提出する出願は、オンラインでも可能な扱いになっています(http://www.pcinfo.jpo.go.jp/site/https://www.jpo.go.jp/system/process/shutugan/pcinfo/hajimete/index.html)。今後、(包括)委任状についても電子署名が可能となるとさらに出願のスピードが上がるかもしれません。
 特許庁に提出する単独申請承諾書や譲渡証書等はどうでしょうか。こちらの書面を法的に検討すると、一方当事者の意思表示を書面化したものと考えられます。契約とは、申込みの意思表示と承諾の意思表示が合致したものですので、その一部分である一方当事者の意思表示を電子書面で行うことは法的には可能です。
 他方で、権利放棄証書等、権利関係の処分に関する手続を証する書面や無効審判請求書等の法的に重要な手続を開始する書面については、今後も押印が必要となるという対応が予想されます。
 いずれにせよ、いくら電子署名が法的に有効であっても、これを特許庁が受け入れなければ意味がありません。こちらは、特許庁の対応を待つほかないところが歯がゆいところです。

(神田)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2020.07.02更新

1 原則押印は不要!?
 典型的な法律行為である契約について検討すると、民法上、契約締結方式自由の原則というものがあります。これは、契約を締結するにあたっての方式(書面や口頭等)について、当事者が自由に決定できることをいいます。従来はこれについて明文の規定はありませんでしたが、本年の4月1日から施行されている改正民法第522条第2項には、契約締結方式自由の原則が明文化されています。
 したがって、契約は、原則として口頭でも成立しますので、契約成立の要件として、書面を用意して押印をすることは必須ではないということが分かります。前回ご説明したことは、契約書が裁判において証拠としての効力を有するために押印が必要であるという話であって、契約自体は口頭でも成立するということと分けて考える必要があります。
 もっとも、契約自体は口頭でも成立するという原則には一部例外があります(改正民法第522条第2項は「法令に特別の定めがある場合を除き」と規定しています。)。代表的な例でいえば、保証契約は民法上書面でしなければならないというものです(民法第446条第2項)。この場合には、物理的な保証契約(書面)を作成する以上、押印(+印鑑証明書の添付)をすることが通常です。


 
2 メールでの代用
 前回ご説明したとおり、裁判において書面が証拠としての効力を有するためには、民事訴訟法第228条第4項に従い、押印が必要です。かかる規定が無くならない限り、いくら契約締結方式が自由と言っても、裁判での立証リスクに備え、押印することをやめる人はいないように思われます。
 内閣府等が公表したQ&Aには締結前後のメール等により、押印に代えられるとしていますが、「メールという不確かな立証手段に頼るよりも、確実な押印を。」というのが実務感覚かなと思います。

 

 

3 電子署名
 以上からすれば、「やっぱり押印はなくならないじゃないか。」と思われるかもしれません。もっとも、民事訴訟法第228条第4項には例外があります。それは、電子署名及び認証業務に関する法律(以下「電子署名法」といいます。)第3条です。重要な条文ですので、以下引用します。

 

「電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。」

 

 これについては、長くなりますので、次回説明します。
 


4 印紙について
 押印不要論からは、印紙の点も主張されていますので、若干触れます。
 結論として、電子契約であれば印紙は不要です。印紙税法基本通達第44条第1項によれば、印紙税が発生する課税文書の作成とは、「単なる課税文書の調製行為をいうのではなく、課税文書となるべき用紙等に課税事項を記載し、これを当該文書の目的に従って行使することをいう。」とされています(https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/inshi/inshi01/07.htm)。これは明らかに「紙」を想定した記載です。かかる通達から、印紙の対象となる課税文書には電子契約は含まれないと解されています。 


 
5 次回
 次回は、電子署名法第3条の意義、押印の是非について並存説立場及び知財関係書類への影響について検討してみたいと思います。


(神田)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2020.07.01更新

1 弁理士の日ブログ
 弁理士の内田浩輔先生のご紹介で本年の「弁理士の日」に「押印と契約書」という内容で投稿させていただきます。

 https://benrishikoza.com/blog/benrishinohi2020/

 

 昨年は河部弁護士が「知財業界の初体験」という記事を投稿しており、よろしければこちらもご参照ください。

 

2 内閣府等のQ&A発表
 令和2年6月19日に内閣府・法務省・経済産業省が連名で「押印についてのQ&A」を発表しました。従来から契約書に押印する面倒さは指摘されていましたが、昨今の新型コロナウイルスの流行から、出社が必要な契約書押印は避けたいという民間企業の要請を受けたものと考えられます。
 内容としては、押印の法律上の意義(民事訴訟法第228条第4項)に触れながら、契約書作成にあたり押印は必ずしも必要ではないというものとなっています。弁護士という立場からすれば、内容自体に目新しいものはありません。
 他方で、日本においてはいわゆる押印文化というものが根強く残っており、「契約書には押印しなければ!」という強迫観念があります。これ自体、実は一定程度合理性があるものです。
 そこで、押印が要求される法律上の理由を踏まえながら、今後押印を一切無くしていくべきか、押印済み契約書と押印無し契約書(電子契約を含む。)が並存していくべきか、知財関係書類にどのような影響があるか等について検討したいと思います。

 

3 なぜ押印が必要か
 民事訴訟法第228条第4項は、「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」と規定しています。ここでは、「真正に成立」とはどういう意味かを理解することが重要です。
 ざっくり言うと、「真正に成立」とは、当該文書について、「本人」の意思に基づいて作成されたということです(偽造ではないということです。)。民事裁判においては、証拠が命と言われるように、ある事実についてそれを裏付ける書面をたくさん提出します。その証拠書面について、裁判で有効な場合とは、その書面が作成者の意思に基づいて作成された場合です。偽造された書類が飛び交う裁判には意味がないことは分かっていただけると思います。
 したがって、文書の成立の真正というのは非常に重要です。特に契約書は、それがあるかないか(証拠として使用できるかできないか)により、裁判の帰趨を決定します。例えば、ライセンサーとして提起する実施料支払請求訴訟において、ライセンス契約書がない場合(押印がない場合を含む。)、実施料額、ライセンス日、弁済期等について、契約書以外の証拠(メールや第三者の証言)から立証していかなければなりません。これは非常に大変です。
 以上のとおり、文書に本人の押印があることは、裁判において当該文書を証拠として使用できるという重要な効果をもたらします。押印必要派が何の理由もなく押印が必要と言っていたわけではなく、法律上の背景があるわけです。

 

4 次回
 次回は、押印を無くしていく立場から検討してみたいと思います。

(神田)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2020.04.01更新

 とうとう、本日から、改正後の民法が施行されます。非常に大きな改正であり、私も一通り学んだ知識を基に実務にどのように活かしていくか日々研究しているところです。
 改正の内容やその趣旨説明については、種々の文献が発刊されておりますので、そちらを参照いただければと思います。本ブログでは、契約書チェックにあたって、どの程度改正に対応しなければならないのかについて思うところを述べたいと思います。


 よくお客様から、「民法改正に対応して、契約書を修正しなければならないのでしょうか。」といったご質問を受けます。また、「契約書を改正しなければ罰則があるのでしょうか。」といったご質問までありました。
 ここで、私はいつも、「なぜ、民法改正に合わせて契約書を変えたいのか。」について、質問をするようにしています。そうすると、お客様からは契約書修正の必要性について明確なご回答がない場合がほとんどです。
 そもそも、民法は、ほとんどの条文が任意規定であるため、当事者の合意がない場合にその合意内容を補充するもの、あるいは合意があっても抽象的である場合にその解釈指針を示すものとして機能しています。したがって、当事者間に契約書等で明確に合意がある場合には、民法の規定よりも、当事者の合意が優先することになります。
 このような前提に立つと、民法改正に合わせて契約書を修正する「義務」はないということになります。例えば、瑕疵を「契約不適合」に変更しなければならない必然性は全くありません。
 要するに、既に当事者間で契約書があり、当該契約書に従って恙なく業務が遂行されているのであれば、焦って民法改正に合わせて契約書を変更する必要はないのではないか、というのが私の考えです。
そうすると、民法改正に伴う契約書チェックに関する我々弁護士の仕事は、改正によって依頼者にとって有利な条文が増えた部分について、「変えたほうがよいのではないか。」と提案することが主たる業務になると考えています。改正対応については、義務ではなく、自身に有利な条項へ修正するためのきっかけとして用いるのがよいのではないかと思う次第です。
 他方で、根保証における極度額の明文化等、規定しなければ契約書自体が無効となりうる改正内容もあり、これは契約書作成・チェックにあたっては要注意です。

(神田)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2020.03.02更新

1 年1回行われる弁理士会と二弁の合同研修
 2月13日に、清水節先生と松下正先生が講師を務める日本弁理士会・第二東京弁護士会の合同研修「近時の裁判例を踏まえた戦略的実務」を受講してきました。
 この弁理士会と二弁の合同研修は毎年1回行われていますが、今年から私が日本弁理士会研修所側の担当者となり、今回初めて企画に携わらせていただいたものです。
 本ブログでは、この研修に参加した感想について、以下の①~③の内容の中から、②と③についてお書きしたいと思います。
 ① 進歩性についての最高裁令和元年8月27日判決「局所的眼科用処方物事件」を分析する(清水先生)
 ② 近年の逆転判決について(松下先生)
 ③ 裁判体の心証形成と当事者の主張の在り方について

 

2 松下先生ご担当「近年の逆転判決について」
 松下先生は、判決の速報をまとめたサイト「知財道しるべ」を運営されている最新の知財裁判例に非常に詳しい先生であり、今回の「近時の裁判例を踏まえた戦略的実務」というテーマで弁理士側から推薦するとしたら松下先生が一番と思い、推薦させていただきました。松下先生の担当部分は、ラストのディスカッション部分で清水先生にお聴きした事項を引き出すために工夫いただいており、受講された多くの先生方が「よくその内容を引き出してくれた」と思われたのではないでしょうか。

 

3 構成要件解釈はそうそう覆らない!?
 清水先生にお話しいただいた内容で印象に残っているものの1つ目は、「第一審で下された構成要件解釈はそうそう覆らない」というものでした。
 題材は一審判決逆転で構成要件の充足が認められた知財高裁平成29年(ネ)第10092号で、松下先生からの「構成要件解釈が原審と控訴審で覆るケースは珍しいのか。」という趣旨の質問に、清水先生は「構成要件解釈という特許訴訟の最も基本的な部分について原審が下した判決について、原審と同じ事情の下で解釈が覆ることはほとんどない。実際に審理をした中でも、ほとんどなかった。」という趣旨の回答をしていました。
 全ての知財裁判官が同じ感覚をお持ちかどうかは分かりませんが、上記からすると、控訴審で構成要件解釈について逆転を狙う際には、単に理屈を主張するのみならず、何かしら原審とは異なる判断材料を提供できるように一審以上に知恵を絞り、立証手段の模索に労力を注ぐ必要があることになります。

 

4 個別具体的な案件を見よ!
 そして、2つ目は、「個別具体的な案件に集中し、他の裁判例にとらわれすぎない」ということです。
 題材はプーマのパロディ図形が逆転で無効となった知財高裁平成29年(行ケ)第10206号で、松下先生が関連する事件の影響について清水先生にお尋ねしたところ、清水先生は、「関連事件では、『シーサー』を表す文字などが入った商標の事件が存在している。本件の審決は、その結論に引きずられて、『シーサー』を表す文字が入っていないにもかかわらず、結論を決めてしまったのではないか。具体的な商標を見れば、シーサーの観念は生じないはずである。」という趣旨のことをおっしゃっていました。
 また、別事件の判決の影響について、清水先生は、「別事件の判決は、最高裁判決及び知財高裁代合議判決を除いて、過度に重視しない⇒通常の判決は、一般論の部分は重要ではなく個別事案における具体的判断が最も大切である」であると記されておられます(当日の配布資料)。
 口頭の説明では、「知財部の裁判官なら、参考にしなければならない有名な判決は知っている。準備書面内で言及してもらえれば十分で、資料などは必要ない。その他の知らない裁判例については、個別具体的な案件の方が重要であまり参考にしない。異なる判断をしたくないのは、ほとんど同じ構成の商標について先行判決がある場合くらいである。なお、裁判所の判断を経ていない審決については、それを参考に判決をすることはあまりない。」という趣旨のことをおっしゃっていました。
 知財事件において裁判例や審決例をどの程度参考にするのかについて、裁判官のリアルな感覚がうかがえたことだけでも、今回の研修には価値があったと思います。

(河部)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2020.02.17更新

 最近、さかなクンさんがハコフグの帽子を被ったまま参議院の調査会に出席できることになったというニュースが話題になっていますね。
 このハコフグの帽子ですが、弊所HPの「推薦者の声」に掲載しているとおり、立体商標として登録されており(商標登録第5169970号、小林弁護士はこの商標の無効審判の代理人を務めており、現在も契約書のチェックなどをしています。
 私も小林・弓削田法律事務所に入所して半年のときに一度だけお会いしており、名刺交換の際に↓の手書きのメッセージ付きの名刺をいただきました。

 

2.17

 

 お会いしてからもう7年近く経ち、その間にどんどん有名になって、とても気軽にお会いできる方ではなくなりましたが(お会いできているのは弊所でも小林、弓削田、河部だけです。)、我々弁護士しかいないのに「ありがとうギョざいます」とサービストークをしてくださるテレビの中そのままのいい人感は、今でも記憶に残っています。

(河部)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2020.01.31更新

 前回に引き続き、自動車エンジンについてご説明いたします。今回は、実用化されているエンジンから研究段階のものまで、種々の自動車エンジンを紹介いたします。

 

 

1 ハイブリッドシステム(ストロングハイブリッド)
 ガソリンエンジンとモーターから成るパワートレインにより、①発進・低速時はモーターで走行、②加速時・通常走行時はエンジンとモーターの両方で走行、③減速時はエンジンを停止させてモーターを回生ブレーキとして機能させる制御を行うものです。2018年度国内登録車販売ランキングの上位10車種中9車種をハイブリッドカーが占めています。


 ハイブリッドシステムは、大きく分けて
(1)パラレル方式(エンジン・モーターが駆動系に直結したもの)
(2)シリーズ方式(モーターのみが駆動系に直結し、エンジンは発電用に使用されるもの)
(3)シリーズ・パラレル方式(エンジンの出力を発電用と駆動用に使い分けるもの)
の3つがあります。

 

20.1.31

図:代表的なハイブリッドシステム(clicccar.com【自動車用語辞典:電動化技術「ハイブリッド」】ウェブページ、株式会社三栄)

 

 

2 マイルドハイブリッド
 駆動用のモーターを備えておらず、通常の自動車に搭載されている発電機(オルターネーター)を強化してモーターの役割として使うようにしたものです。
 モーターやバッテリーを小さくできるため、コンパクトカーや軽自動車に採用される傾向があります。

 

   
3 ミラーサイクルエンジン
 通常のタイミングよりも吸気バルブを早く閉じる(又は遅く閉じる)ことで、実質的な圧縮比を小さく抑え、膨張比だけをより大きくすることにより、少ない混合気から効率よく膨張圧力を取り出し、エネルギー効率の向上を実現したエンジンです。アトキンソンサイクルとも呼ばれています。
 前述のハイブリッドシステムのエンジン等、低燃費車に広く採用されています。

 

 

4 ロータリーエンジン
 ローターハウジング内をおにぎり型のローターが回転して4サイクルを行う方式のエンジンです。

 

2.10

図:ロータリーエンジン概要(カーセンサー「ロータリーエンジンで快適室内空間!家族全員で楽しめるスポーツカーRX-8」ウェブページ、株式会社リクルート)

 

 ローターの円運動をそのまま回転運動として駆動系に伝達できるためパワーロスが少ない、部品点数が少なくコンパクトで軽量、というメリットがある一方、燃費が悪くオイル消費が激しい等のデメリットがあります。

 

 

5 ディーゼルエンジン

 軽油を燃料とするエンジンで、ガソリンエンジンと異なり点火プラグを有しておらず、圧縮されて高温となったシリンダ内に燃料を霧状に噴射して自然着火させる方式です。ガソリンエンジンよりも圧縮比を上げることができるため、熱効率も40%~50%と高いです。
 1990年代後半からコモンレール方式が採用され、エミッション性能が飛躍的に向上した「クリーンディーゼル」が登場しました。

 

 

6 水素レシプロエンジン
 ガソリンや軽油等の化石燃料ではなく、水素ガスを燃料とするレシプロエンジンです。
 ガソリンエンジンと同じ構造が使えるためエンジン設計が容易な上に、排ガスがほとんど出ない(ほぼ水しか排出されない)という優れたエンジンですが、水素の漏れ防止やインフラ整備等の課題があります。

 

 

7 スターリングエンジン
 シリンダ内のガスを外部から加熱・冷却し、ガスを膨張・収縮させることで仕事を得る方式のエンジンです。
 存在し得る熱機関で最も高い効率で熱エネルギーを仕事に変換できる(カルノーサイクルに近い)エンジンと言われていますが、ガスのシーリング問題、ピストン(ディスプレーサーピストン及びパワーピストン)の摺動性向上など多くの課題が存在しており、未だ自動車エンジンとして実用化には至っていません。

 

(田仲)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2020.01.24更新

はじめに
 私は、大学院を修了後、自動車メーカーに入社してエンジンの研究開発を担当しました。法曹の道に進んでからは、数々の自動車に関する知財紛争を経験する機会に恵まれましたが、その際に、自動車エンジンにかかる知識が紛争解決に大いに役立ちました。
そこで、弁理士先生や知財弁護士先生のお役に立てればと思い、自動車エンジンに関する基礎技術について書いてみることにしました。
 まずは、自動車エンジン開発に求められることについてご説明いたします。

 

 

1 自動車エンジン開発に求められること

 自動車エンジンは、高出力、軽量・コンパクト、低燃費、低公害、低コスト等が要求されますが、それらを達成するために、①熱効率の向上、②高回転化、③吸気・排気効率の向上等を目指した開発が求められます。

 

 

2 ①熱効率の向上
 ①熱効率の向上とは、自動車エンジン(ガソリン)の燃焼サイクルを、できる限り理想燃焼サイクル(オットーサイクル)に近づけることです。

20.1.25

図:4ストロークガソリンエンジンのサイクル(JSMEテキストシリーズ熱力学、社団法人日本機械学会、2002.7.1、p134)

 

 エンジンの熱効率は、圧縮比((燃焼室容積+排気量)/燃焼室容積)を上げることで向上しますが、圧縮比を上げると異常燃焼によるノッキング等の弊害が生じてしまうため、現状はガソリンエンジンで圧縮比10程度に設定されています(圧縮比10だと、理論熱効率で60%程度、実際の熱効率はせいぜい35%程度です。)。

 

 そこで、異常燃焼を抑制しつつ、より圧縮比を上げるために、燃焼室のコンパクト化、筒内乱流(スワール流、タンブル流等)強度の向上による急速燃焼の実現、センタープラグ化による均一燃焼の実現等を目指した開発が進められています。

 

 

3 ②高回転化

 ②高回転化を図るためには、ショートストローク化や摩擦損失(フリクション)低減が効果的です。
 フリクションの低減を図るために、固体潤滑剤を用いたピストンの表面処理、クランクピン・ジャーナル径の細軸化、エンジンオイルの低粘度化等についての研究開発が進められています。

 

 

4 ③吸気・排気効率の向上
 ③吸気・排気効率の向上には、吸気バルブと排気バルブの大径化が効果的ですが、大径化するにもレイアウト上の限界があります。
 そこで、バルブタイミング制御、吸気管長の調整等によって吸気・排気効率を向上させるための開発が進められています。

(田仲)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2020.01.14更新

 明けましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします。


 今回は、前回話題にした専門委員の選ばれ方について。
 専門委員は、裁判所の専門委員候補リストの中から複数人の候補が選ばれ(事件によって、技術説明会に出席する専門委員の数にもばらつきがあります。)、専門委員候補について何か意見があるか原告被告双方に確認がなされた上で最終的には裁判所が決定するという流れで決定されます。
 この「意見」ですが、基本的には、原告・被告のそれぞれが候補者の中から当該事件を担当するのは適切ではない専門委員を指摘し、その理由を上申する作業になります。
 裁判所は技術分野に応じた専門家をリストから選ぶだけであり、専門委員の過去の経歴を全て調べているわけではありません。意外と多いのが、専門委員が相手方企業の関係者であるパターンです。こういった場合、当事者側で上申書を提出してその専門委員が事件を担当するのが適切でないことを知らせる必要があります。
 もっとも、ある技術者の方が以前にどこの企業にお勤めであったかといった個人情報は、Google検索では発見できないことも多いです。
 そこで威力を発揮するのが、J-PlatPatです。専門委員の先生方は技術の専門家だけあって、過去に特許の発明者になっていることが非常に多く、そこから以前にどこに勤めていたかが割り出せます。

(河部)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2020.01.07更新

 明けましておめでとうございます。

 

 平素は、小林・弓削田法律事務所に格別のご高配を賜り、厚くお礼申しあげます。


 本年も、小林・弓削田法律事務所は、知財ブティック事務所ならではのリーズナブルで質の高い案件対応、ビジネスの勢いを止めない迅速なサービスを心がけて参ります。


 引き続きご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます。

 

2020年1月吉日

 

小林・弓削田法律事務所
所長弁護士・弁理士 小林 幸夫

パートナー弁護士  弓削田 博

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

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