2015.05.26更新

1 特許や商標だけではありません

 こんにちは、河部です。小林・弓削田法律事務所は特許法や商標法などの知的財産分野を強みにはしていますが、これに限らず、様々な法律問題を扱っています。変わったところでは、弓削田弁護士が7年間にもわたり鉱業法関連の訴訟を手掛けていたこともあり、鉱業法絡みの法律問題を扱うことがあります。

 

2 鉱業法基本書入手!

 私も入所するまで鉱業法の知識は当然ゼロで、入所後に解説書を購入して勉強することになったのですが、我が国に鉱業法の解説書はほとんど存在せず、昭和33年発行のあの我妻榮先生の著作(当然のことながら絶版です)にまで遡ります。平成24年1月21日には改正鉱業法が施行されてはいるはずなのですが(^_^;)

 

アマゾンで中古品を取り寄せ…

 鉱業法1

 

 

なんと東京高裁第三刑事部の不要図書!

鉱業法4

 

 600円という価格設定、経済産業省は通産省、引き合いに出される外国法はプロイセン法……時代を感じずにはいられません(^_^;)             (河部)

 

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2015.05.22更新

1 国語辞典と弁護士業務

 こんにちは、河部です。

小説・映画で『舟を編む』が話題になったりしていて、以前はあまり注目されなかった国語辞典に少しだけ目が向けられているような気がしています。

 今回は、そんな国語辞典を例にとって、あまり気づいてもらえない弁護士業務における地味な努力をご紹介したいと思います。

 

2 訴訟における国語辞典の提出

 国語辞典が証拠として裁判所に提出される場合、岩波書店の『広辞苑』が提出されることが圧倒的に多いですが、細かなニュアンスを伝えたい場合など、『広辞苑』が最適でない場合もあります(私の主観ですが、『広辞苑』は必要最小限だけを記載していて、細かなニュアンスには踏み込んでいないイメージです。)。

 サンキュータツオ著『学校では教えてくれない!国語辞典の遊び方』が各国語辞典の性格に踏み込んでいて勉強になるのですが、同じ日本語を説明していても、国語辞典によってその説明の仕方は結構異なります。

 その違いをうまく使って主張を組み立て、また逆に揚げ足を取られないようにするため、私が国語辞典の記載を証拠として提出するときは、複数の国語辞典を引き、その事案に一番適した国語辞典の記載を提出しています。

 微妙なニュアンスが重要な場合は多数の辞書を引いて一番適した辞書、揚げ足を取られる危険に配慮し守りに徹する場合は『広辞苑』、といった具合です。

 

3 複数の『広辞苑』

 小林・弓削田法律事務所には、広辞苑だけで、『広辞苑第四版』、『広辞苑第五版』、『広辞苑第六版』の3つが置いてあります。最新のものだけ残して残りは捨ててしまえば、と思われるかもしれませんが、これには理由があります。

 特許訴訟においては、特許請求の範囲に記載された文言の意味解釈が問題になることが多いのですが、意味解釈は、出願当時の意味を基準として行われます。

 分かりにくいと思うので、卑近な例を挙げて説明してみます。

 昔は「ヤバい」という言葉が否定的な場合にのみ使われていましたが、最近は肯定的な意味でも使われています。出願日が古い特許で「ヤバい」が使われていたら、否定的な意味だと解釈しなければなりませんが、最近出願された特許で「ヤバい」が使われていたら、肯定的な意味で解釈した方が正しい場合もあり得るということです。

 言葉の意味が変わるのには時間がかかり、版が変わっても『広辞苑』の記載は同じことがほとんどですが、出願時点で出版されていない『広辞苑』に則って主張することは、理論的に正しくない(と相手に突っ込まれる余地を与えない)ため、特許の出願日に応じて、提出する『広辞苑』の版を変えているのです。

 

4 地味に努力しています

 このように、誰にも気づいてもらえないだろうなと思いながら、プロの矜恃で行っている地味な努力は、結構あります。いつか報われると信じて…       (河部)

 

 

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2015.05.20更新

1 弁論準備手続と電話会議

 こんにちは、河部です。今回は、民事訴訟の手続のうち、弁論淳手続期日の電話会議を取り上げて、弊所の仕事方針をご紹介したいと思います。

 訴訟が開始して1回目か2回目の期日となると、裁判官から次回期日以降を弁論準備手続期日とする旨の打診があり、それ以降は尋問と最後の口頭弁論期日を除いて弁論準備手続期日で行われることが一般的です。

 そして、弁論準備手続期日では、一方の代理人弁護士が遠方の事務所に所属している場合、他方が裁判所に出頭していれば、電話会議によって期日を進めることができます(民事訴訟法170条3項)。

 

2 小林・弓削田法律事務所の方針:電話会議はなるべく使わない

 この電話会議、弁護士にとっては便利なので、特に支部が多くて移動距離が長くなる地方では、頻繁に利用されています。私が司法修習をしていた山口では、高速道路を車で移動中に、突如路側帯に停車し、携帯電話で電話会議を始めたなどという強者先生の話も聞いたことがあります(^_^;)

 しかし、弊所の所属弁護士は、電話会議をなるべく使わずに裁判所に出頭する、という方針を採用しています。

 これは、①電話会議を使うと、電話会議の前後にも裁判官と相手方弁護士は会話をすることになり、何を会話しているのか分からないという怖さがある、②当該事件に対する本気度を裁判官に伝える、③裁判官も人間であり、和解などの局面では何度も顔を合わせていた方が有利に働く可能性も否定できない、という理由によります。

 とりわけ小林弁護士は実際に会って話をすることを重視しており、裁判の期日に限らず、メールより電話、電話より会って話をすることが重要と常々言っています。

 

3 柔軟な対応

 もちろん、事件の規模と交通費の大きさが見合わない場合、スケジュール調整が難しいが訴訟の進行を急ぎたい場合などは、柔軟に対処しています。      (河部)

 

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2015.05.20更新

1 弁論準備手続と電話会議

 こんにちは、河部です。今回は、民事訴訟の手続のうち、弁論淳手続期日の電話会議を取り上げて、弊所の仕事方針をご紹介したいと思います。

 訴訟が開始して1回目か2回目の期日となると、裁判官から次回期日以降を弁論準備手続期日とする旨の打診があり、それ以降は尋問と最後の口頭弁論期日を除いて弁論準備手続期日で行われることが一般的です。

 そして、弁論準備手続期日では、一方の代理人弁護士が遠方の事務所に所属している場合、他方が裁判所に出頭していれば、電話会議によって期日を進めることができます(民事訴訟法170条3項)。

 

2 小林・弓削田法律事務所の方針:電話会議はなるべく使わない

 この電話会議、弁護士にとっては便利なので、特に支部が多くて移動距離が長くなる地方では、頻繁に利用されています。私が司法修習をしていた山口では、高速道路を車で移動中に、突如路側帯に停車し、携帯電話で電話会議を始めたなどという強者先生の話も聞いたことがあります(^_^;)

 しかし、弊所の所属弁護士は、電話会議をなるべく使わずに裁判所に出頭する、という方針を採用しています。

 これは、①電話会議を使うと、電話会議の前後にも裁判官と相手方弁護士は会話をすることになり、何を会話しているのか分からないという怖さがある、②当該事件に対する本気度を裁判官に伝える、③裁判官も人間であり、和解などの局面では何度も顔を合わせていた方が有利に働く可能性も否定できない、という理由によります。

 とりわけ小林弁護士は実際に会って話をすることを重視しており、裁判の期日に限らず、メールより電話、電話より会って話をすることが重要と常々言っています。

 

3 柔軟な対応

 もちろん、事件の規模と交通費の大きさが見合わない場合、スケジュール調整が難しいが訴訟の進行を急ぎたい場合などは、柔軟に対処しています。      (河部)

 

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2015.05.18更新

 こんにちは、河部です。我らが小林・弓削田法律事務所が所在する溜池山王周辺では、ちょっと前から、警察官の方がやたら多い気がします。区画ごとに1人いらっしゃるようなイメージです。ドローン騒ぎの影響でしょうか?既に逮捕されたとはいえ、ちょうどその頃から警察官が増え始めた気がします。

 あまり性質の良くない相手方の対応をしなければならない時期などは、相手方が事務所に乗り込んでくる可能性も考えなければなりません。弁護士が事務所で相手方に殺害される痛ましい事件も過去には発生していますし、事務所の近くをたくさんの警察官の方が歩き回っていた方が、そういう輩に対する抑止力になっていいかなという気はします。

 …しかし、別に何も後ろ暗いことがなくても、特殊警棒を持っている警察官の近くを通ると、何となく萎縮しますね (^_^;)                 (河部)

 

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2015.05.15更新

1 第1回口頭弁論期日と擬制陳述

 こんにちは、河部です。1回目のブログで、弁護士選びの判断材料をご提供できるよう、弊所の仕事に対する取り組み方などをご紹介したいとお伝えしていますので、今回は被告事件の第1回口頭弁論期日を例にとって、弊所が仕事のスピード感を大切にしていることをお伝えしたいと思います。

 被告事件の場合、第1回口頭弁論期日には、擬制陳述が認められています。擬制陳述とは、答弁書を事前に提出しておけば、第1回口頭弁論期日に限り、欠席しても答弁書を陳述したことにする(第1回口頭弁論期日は、被告の意向を確認することなく、原告と裁判所の都合だけで決められてしまうため。)という民事訴訟法上の扱いのことをいいます。

 実務上、擬制陳述をする際の答弁書の記載は、

 1 原告の主張を棄却する。

 2 訴訟費用は、原告の負担とする。

 との判決を求める。

 の3行だけのもので、次回期日までに準備書面で主張を補充することが多いです。

 

2 できる限り答弁書で認否反論すべき

 被告事件であれば、遅延損害金の請求をされていることがほとんどです。14.6%の遅延損害金であれば、1か月(裁判の期日は通常約1か月おきに入ります。)違うだけでも請求総額の1%以上(1億円なら100万円以上です。)の遅延損害金が発生することになります。

 それだけではなく、多くの事件で3行答弁書しか提出されない中で認否反論が早ければ、裁判官に対し事件に対する本気度をアピールできますし、そういった姿勢が和解の局面などで裁判官の態度に影響を与えないとも限りません。

 反論作成が難しいことも多いですが、やはりできる限り迅速な書面提出が必要だと思います。

 

3 知財事件の特色と弊所の姿勢

 一般に知的財産訴訟は他の通常事件よりも訴状が分厚いことが多い(50頁超えはザラです。)のですが、知的財産訴訟では、慣習として、答弁書段階で認否反論ができていることが求められます。

 弊所は知財事件のタイトなスケジュールに慣れていますので、ご依頼から第1回口頭弁論期日まで間もなくて依頼者の方と打ち合わせの時間が取れない場合などを除き、知財事件以外の一般の事件でも、答弁書段階できちんとした主張反論を行っています。

                                   (河部)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2015.05.13更新

1 警告書作成業務

 こんにちは、河部です。今回は、我々にとってほとんど日常的ともいえる警告書作成を題材に、弁護士業務で日々起こっていることを取り上げてみたいと思います。

 弊所では、模倣品対策の仕事を担当させていただくことがよくあります。よくあるのは、勝手にブランドのロゴを用いた商品を販売するインターネット通販業者に対し、弁護士名で警告書を送付し、販売とネット掲載をやめさせるというものです。

 

2 確認作業で閲覧履歴が…

 弁護士名で内容証明郵便を送るというのはそれなりの重大事ですから、本当にロゴを用いているか、まずは確認作業をしなければなりません。

 商標権侵害品をネットで売る業者は自分でサイトを持っていることよりも大手ネット通販サイトを複数利用していることの方が多いので、○mazonや楽○市場、ヤフ○クあたりの有名ネット通販サイトをしらみつぶしに探していきます。

 私はわりと我慢強い性質でして、作業自体はそんなに苦にならないのですが(数百種類のスマホケースを見続けたときはちょっときつかったですけどね…)、問題は、上記のような大手通販サイトの場合、閲覧した商品に応じて広告が出ることです。

 一回検索作業を行うと、商品の特定のためかなりの回数閲覧することになりますから、優秀な行動ターゲティングシステムが私の嗜好を割り出し、いかにも模倣品感がムンムン臭ってくる商品が、大量にオススメ商品に並びます(――;)

 ○mazonや楽○市場は至るところにウェブ広告を出していますから、別のサイトを閲覧する際も、偽物商品が追いかけてきます…

  

3 裁判所への証拠提出

 ただウェブサイトを閲覧するだけならいいのですが、私のようなアソシエイト弁護士には、必要なウェブページを印刷して裁判所に証拠提出するというお仕事もあります。

 

  これが恥ずかしい。

 

 辞書を閲覧できるサイトなどは広告表示が多かったりして(広告収入で成り立っているのでしょうね。)、印刷すると、辞書の記載はほんの数行なのに大量の偽物商品情報が表示されてしまいます。私が模倣品大好きかのように…

 弊所の依頼者様や案件の内容が外部から推測できてしまうというのも問題です。というか、こちらが真の問題です。

 

4 広告の内容が変わるまで無意味な閲覧…

 キャッシュやcookieを削除するという手もあるのでしょうが、それはそれで面倒だったり不便だったりします。

 そんなこんなで、自分がプライベートで購入した商品の履歴を隠ぺいするため小林・弓削田法律事務所の品位を保ち依頼者の秘密保持を全うするため、証拠提出前に法律書のページを何回もクリックして行動ターゲティング広告から逃げ回るという無駄な作業が、日々発生しています(^_^;)

 

5 商品購入でメルマガ…

 さて、ネットでの確認作業が済んだら、商品現物を見るために、実際に購入します。購入者の名前は…当然私。

 怪しげな模倣品業者の個人情報を提供するのは、あまり気持ちよくないですよね…しかも、メルマガ送付☑を外すのを忘れたりすると、警告書を送った後も、延々と私の元にメルマガが届きます…。

 

6 新規の仕事獲得(^^)

 ある依頼者様のために商品情報を見ていたら、別の依頼者様の商標権侵害を発見することも。無視するわけにもいかずご報告し、そのまま新たな警告書作成のお仕事になったりすることもあります。

 

7 まとめ

 警告書作成は知財を扱う法律事務所にとって最も基本的といってもいい業務ですが、依頼者様に見えない部分では、日々こんなことが起こっています。     (河部)

 

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2015.05.11更新

1 まずは「WHO IS」で検索

 こんにちは、河部です。

 今回はJPドメイン名の調査からJPドメイン紛争処理手続に至るまでの流れについて、順を追って説明していきたいと思います。3回も同じテーマで引っ張りすぎかもしれませんが、これが最後なので許してください(^_^;)

 取得しようと思っていたJPドメイン名を第三者が既に購入していたことに気付くのは、おそらく自分がJPドメイン名を購入しようとした際に、自らのロゴ等が入ったJPドメイン名を購入できないことが判明したときでしょう。この場合、まずは株式会社日本レジストリサービス(以下「JPRS」といいます。)の運営する「WHO IS」で、当該ドメイン名を検索すると、誰がドメイン名の所有者かが分かります。

 

2 「WHO IS」でも分からなかったら…方法は2つ

 「WHO IS」で検索すれば、登録者名や連絡先が分かることが多いです。しかし、中には登録者名が「○○○」などと伏せ字にされている場合も存在します。私の経験でも、「WHO IS」では伏せ字にされていて「WHO IS」だけでは対応できない事例がありました。

 こういった場合にどうやって登録者名や登録者の連絡先(連絡先が分からないと譲渡交渉ができませんので。)を入手するか?方法としては、①JPドメイン名登録情報の公開・開示制度を用いる方法、②弁護士照会(弁護士法23条の2)による方法の2つがあります。

 ①による場合、JPRSは決められた範囲までしか情報を教えてくれません。しかし、②の弁護士照会であれば、JPRSに登録されている情報を漏れなく開示してくれます(実際にJPRSに問い合わせたので、確かなはずです。)。

 

3 弁護士照会がお勧め

 ①であれば、弁護士に頼まなくても自分で行うことができます。しかし、私としては②の弁護士照会がお勧めです。なぜなら、JPドメイン名の譲渡交渉においてはファーストコンタクトが重要であり(重要である理由は後ほどご説明します。)、できるだけ情報を入手した上で連絡を取る方法を考えた方が得策だからです。

 

4 JPドメイン名の譲渡交渉は入り方が重要

 ⑴ 不正の意図がない相手の場合

 登録者の意思に反してJPドメイン名の移転を受けるためには、JPドメイン名紛争処理手続で移転裁定を勝ち取らなければならず、移転裁定を勝ち取るためには、登録者の不正の目的を立証することが要求されます(JPドメイン名紛争処理方針4条a.(ⅲ))。

 金銭を要求するでもなく、ドメイン名を商業利用するでもない場合(例えばそのブランドのファンの方が、好きが高じてドメイン名を取得したような場合が想定できます。)には、任意に譲渡に応じてもらえる可能性がありますが、これができなければ、いかにJPドメイン名紛争処理手続において申立人側に有利な結論が出やすいといえども、ドメイン名を取得できるか怪しい部分が出てきます。したがって、下手に高圧的な態度に出てファーストコンタクトで心を閉ざされないように、配慮が必要です。

 

⑵ 不正の意図がある相手の場合

 逆に、金銭を目的とした相手であれば、どう登録者の悪意を立証する証拠(≒登録費用を超える金銭を要求する証拠)を引き出すか、これが最大の課題です(フリーライドを目的としている場合は、交渉で引き出さずともインターネットで調べられるため、場合によってはいきなり裁定でも構いません。)。

 既にお伝えしたとおり、裁定では申立人よりの裁定が下ることが多いで すが、絶対とは言い切れません。下手をすると、最低手数料20万円+弁護士・弁理士費用をドブに捨てることになります。できれば確実な証拠を掴めるように、ファーストコンタクトのときから意識しておく必要があります。

 いずれにせよ、JPドメイン名の譲渡交渉においては、最初の入り方が重要です。

 

5 費用はかかってしまいますが…

 JPドメイン名紛争処理手続を行うためには、知財仲裁センターの手数料だけでも20万円近くかかります。また、代理人として弁護士や弁理士が手続を行う場合、どうしても相応の費用がかかってしまいます。

 もちろん、自社ブランドの顧客吸引力にフリーライドするような悪質な輩に対しては断固たる姿勢で臨むべきです。その姿勢は、裁定の結果という形で、外部に公表されることになり、抑止力として働きます。                  (河部)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2015.05.08更新

1 裁定例の分析

 こんにちは、河部です。JPドメイン紛争処理手続を受任するに当たり、せっかく裁定例に目を通したので、今回は、日本知的財産仲裁センターのウェブサイト上で公開されている裁定例について、若干の考察を加えてみたいと思います。

 

2 訴訟の感覚で判断してはならない

 多くの裁定例に目を通してみて、一番強く感じたのは、「訴訟の感覚で臨んではならない」ということです。

 JPドメイン紛争処理手続において移転命令が出るための要件は、①類似性、②登録者に正当な権利がないこと、③登録者の不正の目的です。

 多くの裁定例で、②登録者に正当な権利がないことについては、登録者が何も立証していないから正当な権利がない、というような判断がなされています。つまり、実質的に立証責任が転換されているのです。

 また、③登録者の不正の目的については、必ずしも不正の目的に結びつかないと思われる反論がないことと連絡を取れないことを理由として不正の目的があったと認めている裁定例(JP2007-0002JP2012-0005など、東京地方裁判所平成14年7月15日判決(平成13年(ワ)第12318号)の不正競争防止法2条1項12号に関する判断と比較すると、かなり認定が緩やかです。

 相手が答弁書を提出しない場合も多く(裁定例を見ればかなりの事案で答弁書が提出されていません。)JPドメイン紛争処理の結果が訴訟に至ることは少ないので、難しいところがあるなという事案でも、申し立ててしまえばドメイン名の移転を受けられる可能性は大いにあります。

費用の問題を受容できるのであれば、多少厳しくても申し立てる価値は十分です。

 

3 たまに厳しい判断も…

 しかし、厳しい裁定例も散見されます。例えば、JP2008-0002。「FIAT」という結構なメジャーブランドでありながら、棄却裁定が出ています。しかも、時期的な傾向というわけではなく、緩やかな認定がなされている合間合間に厳しい裁定例が出ています。パネリスト次第、というところでしょうか。

 

4 まとめ

 以上のとおり、JPドメイン紛争処理手続は認定基準が訴訟におけるそれと比べて緩やかであり、申立人側に有利な判断になる可能性が高いです。ちょっと厳しくても申し立てる価値はあります。しかし、裁定の内容には各パネリストによってばらつきが見られ、甘い見通しで申立てをすると、運悪く厳しいパネリストにぶつかった場合には棄却されてしまうことには注意が必要です。                 (河部)

 

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2015.05.07更新

1 JPドメイン名紛争処理手続:ドメイン名を取り戻す唯一の手段

 こんにちは、河部です。今回は、弊所で扱った珍しい事案、JPドメイン名紛争処理手続について触れてみたいと思います。

 ドメイン名について争う法的根拠としては、不正競争防止法(不競法)2条1項12号があります。しかし、不競法2条1項12号では、差止請求(ドメイン名の使用の中止を求める請求)や損害賠償請求は認められても、そのドメイン名をよこせと命令することはできません。

 これを実現する唯一の手段が、JPドメイン名紛争処理手続です。

 

2 私的機関の判断なのに強制力がある

 私は鉱業法上の裁定(鉱業法133条)について調査をしたことがあるのですが、JPドメイン名紛争処理手続は鉱業法の裁定のように行政機関が行う裁定とは異質です。他の裁定は法律上の根拠があって行政機関(鉱業法であれば経済産業省)が判断を下すのですが、JPドメイン名紛争処理手続は、あくまで私的機関が行っているというところに特徴があります。

 私的機関による紛争処理というと仲裁手続を思い浮かべますが、仲裁では仲裁合意が必要であり、つまりは相手方も同意していないと第三者が強制力を持つ判断を下すことはできません。これに対し、JPドメイン名紛争処理手続では、ドメインを有している側(登録者)の意向は関係ありません。ここは重要なポイントです。

 また、仲裁手続と異なり、裁定の結果に不服がある場合には、裁判所で争うことができます(JPドメイン名紛争処理方針第4条k)。

 

3 裁定申立てに処分禁止の仮処分と同じ効力がある

 JPドメイン名紛争処理手続が開始すると、民事裁判手続でいうところの処分禁止の仮処分と同じ効果が生じます(JPドメイン名紛争処理方針第8条(ⅰ))。

 すなわち、JPドメイン名紛争処理手続においては、申立書を登録者に送付した日(JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則第4条)から、ドメイン名を他の者に移転することができなくなります。

 相手方の不正の目的を立証できる証拠を掴んだら、できる限りに早期に申立てをして、第三者にドメイン名を移転されることを防ぐ必要があります。

 

4 JPドメイン名紛争処理手続を扱った弁護士・弁理士は少ない

 私も最近申立代理人としてJPドメイン名紛争処理手続を初めて扱い、無事ドメインの移転という結果を得ることができました。

 JPドメイン名紛争処理手続の結果は、知財仲裁センターに事例として全て掲載されます(JPドメイン名紛争処理方針第8条j)。しかも、その事例は年に数件程度であり、かなり少ないです。事例を見ていけば、JPドメイン紛争の経験を有する弁護士・弁理士の先生は思った以上に少ないことが分かります。

 こういうレアな事案で結果が公開されるというのは、移転裁定を得た担当弁護士にとっては気分がいいものです。                     (河部)

 

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

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