2016.03.11更新

1 裁判官は公用文の書き方に沿って文書を作成している

 皆様、裁判官が作成する文章が、どのようなルールに基づいているかご存知でしょうか?

 裁判官の作成する判決も役所が作成する公用文であり、その書き方は行政官庁で用いられている公用文の書き方に準拠しています。

 実は、我々弁護士も、裁判官が見慣れている公用文の書き方に従った方が読みやすいだろうと配慮して、フォントサイズ(12ポイント)や文字数及び行数、送り仮名の振り方、余白の取り方、項番を「第1、1、⑴、ア、…」とすることなど、公用文の書き方を参考にして裁判所に提出する書面を作成することが多いです。

 ちなみに、以前裁判官に「送り仮名の振り方が公用文と異なっている準備書面を見ると気になりますか?」という質問をしたところ、「結構気になってしまう。」という回答でした。

 学習用には、『分かりやすい公用文の書き方』(礒崎陽輔)が便利です。また、送り仮名の振り方については、迷ったときに『用字用語新表記辞典』(天沼寧・加藤彰彦編)を引くことがあります。

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2 読点と「,」

 公用文の書き方における特徴的な決まりとして、読点の「,」が挙げられます。

 裁判所が作成する文書では,読点として「、」ではなく「,」が使われており、かなりの数の弁護士が、これに倣って自分のパソコンの読点の設定を「、」から「,」に変更しています。

 何故「,」を使うのかについて、インターネットで調べてみた限りでは、「横書き句読点の謎 - 九州大学」に詳しい記載がありました。

 そもそも明治20年頃までは句読点が使われていなかった、公用文が昭和25年の『国語の書き表わし方』の付録である『横書きの場合の書き方』に従っているというのは、母国語として日本語を使用し、公用文の書き方を意識して仕事をしているつもりの私も全く知りませんでした。

 

3 弁護士の文書か見破る方法

 このルールを知っていると、契約書などの法律関係の文章の作成者が弁護士であることを見破ることができます。パソコンの基本設定では読点として「、」を使いますから,契約書などの法律関係の文章に「,」が使われていれば、それは弁護士が作成した文書である可能性が高いのです。

 契約書をチェックしていて、相手から返ってきた案文にまだらに「,」が入っている場合,背後に弁護士が控えているなと分かり、チェックする側からすると、何か法律上の意味があって修正を入れたのだろうなと少し意識します。

 もちろん,「、」を使用している弁護士の先生も多いため,「,」が入っていれば弁護士が書いた文章だなという推測はできても,残念ながらその逆,すなわち「、」が使用されている=弁護士が書いた文章ではない、は成り立ちません。

 

 例外もあり、必ずしも役に立つ知識ではないですが、法務担当者の方であれば、知っておいて損はないかもしれません。                    (河部)

 

 

 

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2016.03.08更新

1 実は大切な管轄

 司法試験受験生の頃は気にも留めませんでしたが、管轄(土地管轄の意味で用いています。)は訴訟実務にとって非常に大きな問題です。東京の弁護士が大阪地方裁判所に行かなければならないとすると(特許訴訟は東京と大阪に集められる(民事訴訟法6条)ため、このケースは結構多いです。)、東京駅と大阪駅の往復だけで1人3万円近くかかり、例えば1人の弁護士が10回出頭したとなると交通費だけで30万円を依頼者の方にご負担いただかねばなりません。知財訴訟を弁護士1人でやることはほとんどなく、弁護士だけでなく弁理士の先生とも共同して訴訟を行うことがほとんどなので、実際にはその数倍になってしまいます。

 なお、知財事件では基本的に電話会議を使わないので、電話会議で交通費カットというわけにもいきません。

 

2 私自身の経験

 私自身も、入所以来移送申立て(別の裁判所が管轄であるとして争うことです。)で高裁まで争うケースを何件も扱い、どの事件でも管轄争いだけで何か月も時間が経ってしまいました。

 司法試験のときは管轄など択一試験の知識問題という程度の意識しかなく、管轄について必死で意見書を作成するなどとは思いもよらなかったのですが、管轄争いが実務では如何に重要であるか、弁護士として実務に携わり、移送申立事件を経験する中で嫌というほど身に染みました。

 移送申立てがあると、提出期限を定めて相手方に意見書の提出が求められ、申立人側にも意見書に対する反論が求められるなど、審理に時間がかかります。決定が出たとしても、即時抗告がなされると、再度の考案(民事訴訟法333条)のために時間をとったり、再度意見書の提出が求められたりと、余計に時間がかかります。管轄争いをフルコースで行うと、実に半年近い時間が過ぎてしまうほどです。

 特許権侵害訴訟においては、特許を無効にするために文献を探す時間が必要です。特許事件では、「無効理由を探す時間を稼ぐために移送申立てを利用しているのではないか」と思うような事案に遭遇することもあります。

 

3 管轄にも強い弁護士を

 労働審判は支部が管轄を有していなかったり(以前のブログでお伝えしたとおり、いくつかの支部では労働審判の管轄が認められています。)、依頼者の方も合意管轄を取っていたことを覚えていなかったり、「不法行為地」(民事訴訟法5条9号)の解釈を巡って争ったり(特許事件では東京地裁か大阪地裁かを巡って「不法行為地」の解釈争いがしばしば起こります。)と、管轄は意外と難しいものです。訴訟に関わる弁護士たる者、訴訟の入り口である管轄の問題にも強くなければなりません。

                                   (河部)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2016.03.04更新

1 報道修習

 私が司法修習(司法試験の合格者が裁判官・検察・弁護士になる前に必ず受けなければいけない研修)をしていた山口県では、山口県弁護士会の先生のご尽力とテレビ局のご厚意により、選択修習(裁判所・検察・法律事務所を経験する所定のプログラムと異なり、修習生が自由に選択をすることができるプログラム)の一つとして、「報道修習」というのが用意されており、数日間だけテレビ局の内部を見せていただくことができました。

 そのときに改めて感じたのが、放送用語と法曹用語(?)の違いです。

 

2 「被告」と「被告人」

 慣行により、放送業界では、刑事被告人(刑事裁判にかけられている人です。)のことを、「被告」と呼び表します。法律的に正しいのは、「被告人」です。

 法律に則った正式な用語では、民事裁判(お金を返す返さない、代金を支払う支払わないといった、主に金銭に関わる裁判)について、訴えた側を「原告」、訴えられた側を「被告」といい、刑事の場合のみ、「被告人」という言葉を使います。

 しかし、一般の方はテレビで刑事被告人が「被告」と呼ばれているのを聞くことの方がずっと多いですから、民事裁判で訴えられた場合に、「被告」にされたことを、まるで刑事事件で犯罪者扱いされたかのように感じて不快感を示されることがよくあります。

 報道修習前から何故そういう言い方をするのかなと疑問に思ってはいたのですが、業界内での慣行に従っているからだとは…

報道の業界内で使用されている用語集を見せていただいたのですが、しっかり「被告」とすることと記載されていました。

 既に定着してしまっていて仕方ないのかもしれませんが、「被告人」と「被告」のわずか1文字の違いによって、民事裁判の「被告」が感情的になり、まとまる話もまとまらなくなってしまうことがあるので、この点は改善できないかなぁと思います。

                                   (河部)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

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