2019.08.26更新

 特許に関する侵害訴訟や審決取消訴訟のうち、事案が複雑なものに関しては、主張立証が尽きた段階(一般の民事訴訟でいうと証人尋問のタイミング)で、当事者双方が一定の時間をもらって事案について口頭で説明を行う技術説明会が行われることがあります。この技術説明会は、事前に開催の有無・持ち時間・説明内容・説明の順番などが決められて、当事者双方が当日のプレゼンテーション準備に十分な時間をかけて行われるものです。

 

 これに対し、無効審判段階では、口頭審理当日に審判体から当事者双方に主張を口頭で説明するように促されたり、当事者が審判体の質問に口頭で回答したりすることはありましたが、事前に持ち時間が決められ、当事者双方が十分な準備をして説明に臨むということは行われていませんでした。


 ところが、小林・弓削田法律事務所で担当している無効審判事件で、最近になって、審理事項通知書段階で持ち時間が決められ、十分な準備期間をもらって説明をする、技術説明会類似の運用が行われるケースに遭遇しました。


 この件だけなのか、他の件でも同様の運用がなされているかは分かりません。しかし、もしかすると、今後は無効審判の段階でも、技術説明会の際に必要なプレゼンテーション能力が問われるようになるのかもしれません。

(河部)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2019.08.13更新

 株式会社リクルートキャリアが提供する「リクナビDMPフォロー」というサービスに関し、同社が学生の「内定辞退率」を、学生の同意を得ずに38社の企業に販売していたことが問題となっています。


 この件に関し、リクルートキャリアは、「リクナビでは、2019年3月に『リクナビDMPフォロー』について言及したプライバシーポリシーへ変更いたしました。学生の皆さまが使用する複数の画面においてプライバシーポリシーに同意いただくサイト構成になっていますが、一部の画面においてその反映ができていませんでした。また、プライバシーポリシー変更の際には、『リクナビDMPフォロー』で分析スコアの対象となるすべての学生から適切な同意が取得できるよう設計すべきところ、考慮が漏れてしまっておりました。」(https://www.recruitcareer.co.jp/news/pressrelease/2019/190805-01/)と説明した上、「リクナビDMPフォロー」を廃止することを決定しています。


 周知のとおり、個人情報保護法23条1項は、同項各号に定める事由以外では、本人の同意を得ない限り、個人データを第三者に提供することを禁止しています。また、個人情報保護法16条1項は、本人の同意を得ない限り、個人情報取得当時に特定された目的以外の利用を禁止しており、同項の違反も疑われるところです。


 では、本件では、どのような「同意」を得ればよかったのでしょうか。上記のリクルートキャリアの説明から推察される問題点としては、①「複数の画面」の一部においてプライバシーポリシーへの同意取得画面が落ちていたこと、②「リクナビDMPフォロー」のサービスの対象となる「全ての学生」から同意を得ていなかったことと考えられます。したがって、プライバシーポリシーにどのような記載がされているべきであったか、という内容の問題ではなく、プライバシーポリシー変更に際し、学生の同意を得るプロセスに問題があったものと考えられます。


 このようなプロセスの問題については、ウェブサイトの適切な設計を求める他ないですが、サービスを複数展開する会社においては、個人情報を取得するにあたって。サービスごとにプライバシーポリシーの同意を得るという運用を心掛けるべきです。なぜなら、サービスごとに取得する個人情報が異なり、それぞれについて本人の同意を得るプロセスが必須であるにもかかわらず、本件のようにあるサービスにおいて同意を得ていたことから、他のサービスでも当然同意を得ていたという「誤解」を生む可能性があるからです。また、サービス間において、勝手に個人情報を連携させることは個人情報保護法16条1項の目的外利用にも該当しうる行為ともいえますので、注意が必要です。


 本件は、適切なプライバシーポリシーの作成のみならず、その運用にも十分注意を払うべきことを想起させる事案といえます。

(神田)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2019.08.13更新

 株式会社リクルートキャリアが提供する「リクナビDMPフォロー」というサービスに関し、同社が学生の「内定辞退率」を、学生の同意を得ずに38社の企業に販売していたことが問題となっています。


 この件に関し、リクルートキャリアは、「リクナビでは、2019年3月に『リクナビDMPフォロー』について言及したプライバシーポリシーへ変更いたしました。学生の皆さまが使用する複数の画面においてプライバシーポリシーに同意いただくサイト構成になっていますが、一部の画面においてその反映ができていませんでした。また、プライバシーポリシー変更の際には、『リクナビDMPフォロー』で分析スコアの対象となるすべての学生から適切な同意が取得できるよう設計すべきところ、考慮が漏れてしまっておりました。」(https://www.recruitcareer.co.jp/news/pressrelease/2019/190805-01/)と説明した上、「リクナビDMPフォロー」を廃止することを決定しています。


 周知のとおり、個人情報保護法23条1項は、同項各号に定める事由以外では、本人の同意を得ない限り、個人データを第三者に提供することを禁止しています。また、個人情報保護法16条1項は、本人の同意を得ない限り、個人情報取得当時に特定された目的以外の利用を禁止しており、同項の違反も疑われるところです。


 では、本件では、どのような「同意」を得ればよかったのでしょうか。上記のリクルートキャリアの説明から推察される問題点としては、①「複数の画面」の一部においてプライバシーポリシーへの同意取得画面が落ちていたこと、②「リクナビDMPフォロー」のサービスの対象となる「全ての学生」から同意を得ていなかったことと考えられます。したがって、プライバシーポリシーにどのような記載がされているべきであったか、という内容の問題ではなく、プライバシーポリシー変更に際し、学生の同意を得るプロセスに問題があったものと考えられます。


 このようなプロセスの問題については、ウェブサイトの適切な設計を求める他ないですが、サービスを複数展開する会社においては、個人情報を取得するにあたって。サービスごとにプライバシーポリシーの同意を得るという運用を心掛けるべきです。なぜなら、サービスごとに取得する個人情報が異なり、それぞれについて本人の同意を得るプロセスが必須であるにもかかわらず、本件のようにあるサービスにおいて同意を得ていたことから、他のサービスでも当然同意を得ていたという「誤解」を生む可能性があるからです。また、サービス間において、勝手に個人情報を連携させることは個人情報保護法16条1項の目的外利用にも該当しうる行為ともいえますので、注意が必要です。


 本件は、適切なプライバシーポリシーの作成のみならず、その運用にも十分注意を払うべきことを想起させる事案といえます。

(神田)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2019.08.02更新

1 知財調停制度開始!
 少し前から業界で話題にはなっていますが、東京地裁と大阪地裁で、10月から新たに「知財調停」という制度の運用が開始されるそうです。8月1日に東京地裁のHPで指針が公表されました。
 この件については、弁理士会の研修所主催の継続研修がありました。私は今年から研修所の委員になったので、司会役に立候補して司会枠で受講をしてきました。
 タイミング的に合いますので、この新たな制度に対する私の個人的な感想を述べさせていただきたいと思います。

 

2 制度の内容
 この知財調停制度、法律が変わるわけではなく、従前あった民事調停制度の運用を少し変えて、知財に関する調停の場合には、一般の民事調停に携わっている裁判官・調停委員ではなく、知財部の裁判官・知財に携わる弁護士や弁理士の調停委員が担当してくれるというものです。
 侵害訴訟でも侵害論と損害論を分けて侵害か否か心証開示をするという運用がなされているため、当事者は裁判所がどう判断するかを考慮に入れながら和解交渉をしているわけですが、今回の知財調停はそれを調停という訴訟とは異なる制度の中で行えることになります。
 なお、調停でまとまらない場合には訴訟に移行できますが、その場合、調停を担当した裁判体とは別の裁判体が訴訟を担当するということでした。つまり、調停における裁判体が示した見解は、訴訟には引き継がれないということです。とはいえ、調停段階で裁判所が和解案などを提示した場合には、和解案の内容から裁判所の見立てが読み取れることもありますから、調停における和解案の内容を訴訟で証拠として提出して、訴訟の方の結論に事実上の影響を与えるといったことも考えられそうです。

 

3 新制度のメリットは?
 報道では、短期間で解決ができることがクローズアップされているようです。しかし、3か月から6か月で解決というのはあくまで目標であって、原則3回という期日も、当事者双方からの要請があればさらに回数を重ねられるとのことでした。直感的で判断のしやすい商標の類比などの事案であれば3か月から6か月で決着がつくケースもありそうですが、特許の案件について3か月で裁判所から充足論・無効論の心証を引き出すというのは、通常の案件では難しいと考えられます。
 むしろ、私個人としては、非公開ということや訴訟という手続でないことの方が、知財調停のメリットになるように思いました。
 訴訟の場合、第1回期日は公開の法廷で行われますから、訴訟があったこと自体は、世間に知られることになります(当事者がプレスリリースをしたり報道機関が報道したりでもしない限り、インターネットを見ればすぐに分かるということはありませんが、知財提訴データベースなどのサービスを使えば、全ての案件を把握することも可能です。)。これに対し、調停制度の場合は、申立ての有無も含め非公開です。訴訟をしていること自体を知られたくない場合、かつ、現実に判断を下す裁判官の意見がほしいという場合(この点が必要なければ、知財仲裁センターの調停でも同じことが実現できます。)には、利用価値がありそうです。
 もう一点は、訴訟という手続ではない点です。大企業の場合、知財訴訟をする場合には取締役会の決議が必要といった具合に、社内手続が大変で訴訟を断念するといったケースもなくはありません。会社によって社内手続も様々でしょうが、調停であれば知財部の判断で申立てができるといった企業にとっては、この知財調停という制度は使いやすいものになります。先ほど説明したとおり、訴訟に至った場合と同じ裁判体ではないですが、それでも裁判官が見解を示してくれるので、和解をする際に社内の合意も得られやすいかと思います。

 

4 大阪地裁のHPで更なる情報が…
 なお、東京地裁知財部のHPによれば、今の東京地裁のHPより詳しい内容が、9月頃に大阪地裁知財のHPで発表されるそうです。こちらも確認してまたブログをアップしたいと思います。

(河部)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2019.08.01更新

1 前回ブログに引き続き…
 前回のブログで「知財業界での初体験」をテーマに特許権移転登録手続等請求事件を担当したことを取り上げましたが、今回も私自身の初体験事案として、税関の輸入差止手続の利害関係人として意見書を提出した案件について書いてみたいと思います。

 

2 輸入差止手続の流れ
 輸入差止手続の流れですが、まず、申立人が税関宛てに輸入差止申立てを行います。以前は全国の税関で差止めをしたい場合、各税関に書類を提出しなければならず事務作業が大変だったようですが、今は最寄りの税関に申立てを行うだけで良くなっており、だいぶ楽になっています。
 申立てがあると、税関は輸入差止申立て申請内容を公表します(営業秘密案件を除く。)。
 申立てが受理され、認定手続が開始されると、輸入を差し止められると困る業者(輸入者)は、認定手続開始通知書の日付の翌日から起算して10執務日(生鮮疑義貨物については3執務日)以内に、意見書を提出しなければなりません(詳しくは税関のHPをご覧ください。)。公表に気づいてから10執務日以内ではありません。訴訟手続であれば、訴状が手元に届いてから(≒訴訟提起をされたことを知ってから)30日くらいは時間があるので、訴訟のスケジュール感が普通だと思っていた私からすると、輸入差止手続のスケジュールは利害関係人側にとって非常に厳しく、驚いてしまいました。
 輸入差止めを受ける可能性のある商品を輸入するのであれば、毎日税関のウェブサイトをチェックするのはもちろん、自分が輸入したいものが輸入差止手続に入ったことを知ったらすぐに知財の専門家に相談できる体制を整えていないと、このスケジュールに対応できないかもしれません。差止めを受けやすい商品かどうかは、過去に輸入差止めを受けた商品をチェックすれば雰囲気を掴めると思います。
 このような手続を経て、権利侵害に当たるか否かが認定されることになります。

 

3 税関の知的財産調査官の陣容
 私の体験した案件では、意見書の提出だけでなく、一度税関の知的財産調査官の方々と面接をして、現物を実際に見てもらう機会をいただけました。
 この案件を受任した際には、どこかの段階で専門委員(ちなみに弊所の弓削田弁護士も専門委員候補です。)にバトンタッチをするのかなと思っていましたが、実際に面接に行って知的財産調査官の方々とご挨拶をしたところ、特許庁から出向している調査官の方、弁理士の方など、知的財産調査官の肩書は錚々たるものでした。
 担当者となる知的財産調査官は申立てのあった税関の調査官でしたが、私が担当した案件では、東京税関で面接が行われ、審理は東京税関の総括知的財産調査官の方も多数関与して行われているようでした。地方で申立てをされたけれども、東京の代理人に依頼をしたという場合には、東京で面接をしてもらうように働きかけてみることをお勧めします。

(河部)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2019.08.01更新

1 前回ブログに引き続き…
 前回のブログで「知財業界での初体験」をテーマに特許権移転登録手続等請求事件を担当したことを取り上げましたが、今回も私自身の初体験事案として、税関の輸入差止手続の利害関係人として意見書を提出した案件について書いてみたいと思います。

 

2 輸入差止手続の流れ
 輸入差止手続の流れですが、まず、申立人が税関宛てに輸入差止申立てを行います。以前は全国の税関で差止めをしたい場合、各税関に書類を提出しなければならず事務作業が大変だったようですが、今は最寄りの税関に申立てを行うだけで良くなっており、だいぶ楽になっています。
 申立てがあると、税関は輸入差止申立て申請内容を公表します(営業秘密案件を除く。)。
 申立てが受理され、認定手続が開始されると、輸入を差し止められると困る業者(輸入者)は、認定手続開始通知書の日付の翌日から起算して10執務日(生鮮疑義貨物については3執務日)以内に、意見書を提出しなければなりません(詳しくは税関のHPをご覧ください。)。公表に気づいてから10執務日以内ではありません。訴訟手続であれば、訴状が手元に届いてから(≒訴訟提起をされたことを知ってから)30日くらいは時間があるので、訴訟のスケジュール感が普通だと思っていた私からすると、輸入差止手続のスケジュールは利害関係人側にとって非常に厳しく、驚いてしまいました。
 輸入差止めを受ける可能性のある商品を輸入するのであれば、毎日税関のウェブサイトをチェックするのはもちろん、自分が輸入したいものが輸入差止手続に入ったことを知ったらすぐに知財の専門家に相談できる体制を整えていないと、このスケジュールに対応できないかもしれません。差止めを受けやすい商品かどうかは、過去に輸入差止めを受けた商品をチェックすれば雰囲気を掴めると思います。
 このような手続を経て、権利侵害に当たるか否かが認定されることになります。

 

3 税関の知的財産調査官の陣容
 私の体験した案件では、意見書の提出だけでなく、一度税関の知的財産調査官の方々と面接をして、現物を実際に見てもらう機会をいただけました。
 この案件を受任した際には、どこかの段階で専門委員(ちなみに弊所の弓削田弁護士も専門委員候補です。)にバトンタッチをするのかなと思っていましたが、実際に面接に行って知的財産調査官の方々とご挨拶をしたところ、特許庁から出向している調査官の方、弁理士の方など、知的財産調査官の肩書は錚々たるものでした。
 担当者となる知的財産調査官は申立てのあった税関の調査官でしたが、私が担当した案件では、東京税関で面接が行われ、審理は東京税関の総括知的財産調査官の方も多数関与して行われているようでした。地方で申立てをされたけれども、東京の代理人に依頼をしたという場合には、東京で面接をしてもらうように働きかけてみることをお勧めします。

(河部)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

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