2015.04.13更新

1 民法改正の影響は多方面に及ぶ

 こんにちは、河部です。今月初めに改正民法の条文案発表されましたが、その余波はあらゆる法律分野に及んでおり、改正民法の条文案と一緒に民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律案が発表されています。

 

2 特許法への影響

 弊所が専門とする知的財産法分野でも、若干の改正が予定されています。弊所の民法改正担当(?)として、今回は、特許法への影響(新旧対照条文の299頁~300頁)について確認していきます。

 

3 特許法65条1項6号の改正

 特許法65条1項6号の改正は、民法724条の規定が改正されたのに伴い、「同条中」を「同条第一号中」に修正するというものです。

 民法724条は、以下のとおり修正されています。

 

【改正前民法724条】

(不法行為による損害賠償請求権の期間の制限)

第724条

 不法行為による損害賠償の請求権は、被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。不法行為の時から20年を経過したときも、同様とする。

 

【改正後民法724条】

(不法行為による損害賠償請求権の消滅時効)

第724条

 不法行為による損害賠償請求権は、次に掲げる場合には、時効によって消滅する。

一 被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき。

二 不法行為の時から20年間行使しないとき。

 

 「同条中」が「同条第一号中」に変わっても、65条1項6号の意味内容は全く変わりません。

 しかし、民法の規定が「期間の制限」から「消滅時効」に変わった点は、若干の影響を及ぼします。この点については、改正民法724条に影響を受けて改正がなされている不正競争防止法について言及する際に、改めてご説明したいと思います。

 

4 特許法88条の改正

 特許法88条は、以下のとおり修正されています。

 

【改正前特許法88条】

(対価の供託)

第88条

 第86条第2項第2号の対価を支払うべき者は、次に掲げる場合は、その対価を供託しなければならない。

一 対価の弁済の提供をした場合において、その対価を受けるべき者がその受領を拒んだとき、又はこれを受領することができないとき。

二 その対価について第183条第1項の訴の提起があったとき。

三 (略)

 

【改正後特許法88条】

(対価の供託)

第88条

 第86条第2項第2号の対価を支払うべき者は、次に掲げる場合は、その対価を供託しなければならない。

一 対価の弁済の提供をした場合において、その対価を受けるべき者がその受領を拒んだとき。

二 その対価を受けるべき者がこれを受領することができないとき。

三 その対価について第183条第1項の訴えの提起があったとき。

四 (略)

 

 これは、改正民法494条(供託)の形式に対応して修正されたものですが、1号に詰め込んでいたものを分けた、「訴」に送り仮名をつけたという程度で、内容は全く変わっていません。裁定制度自体あまり利用されていませんし、実務に全く影響ないと断言してよさそうです。

 

5 特許法改正自体は実質的な影響なし

 このように、民法自体の改正はともかく、民法改正に伴う特許法改正について、あまり気に病む必要はなさそうです。次回は、商標法の改正を見ていきたいと思います。   

                                   (河部)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2015.04.09更新

1 特許権侵害訴訟の数は意外と少ない

 皆様こんにちは、河部です。今回は、特許権侵害訴訟の件数について、お話したいと思います。

 

 特許庁産業財産権制度問題調査研究報告書によると近年の特許権侵害訴訟の件数は、年間200件程度で推移しているとのことです。

 平成25年度の司法統計によれば、民事の通常訴訟の件数は14万7390件ということですから、非常に少ないことが分かります。

 

2 侵害訴訟経験弁護士は少ない

 件数自体が年間200件程度しかないのですから、準備書面等の第1案作成を経験できる弁護士(以下「起案担当」といいます。)は、毎年延べ人数で200人しかいないということになります。実際には1人の弁護士で複数事件の起案を担当することが多く、起案担当として特許権侵害訴訟の経験値を積み上げられるのは、本当に限られた人数になります。

 

3 小林・弓削田法律事務所の経験値

 昨年度に小林・弓削田法律事務所が新たに受任した特許権侵害訴訟の件数は、16件。これは、年間約200件のうちの、8%に該当します。弊所における起案担当者は私を含めて2名ですから、この1年だけでも、わずか2人で1年に起こる特許権侵害訴訟の8%分の起案経験を積んでいるということになります(アソシエイトの立場としては、弊所は知財訴訟の経験を積むには相当いい事務所だと思っています。)。

 訴訟経験の豊富さについては、現在、4つの東京地裁知的財産部のうち、小林弁護士は4つ全て、弓削田弁護士と私も3つの部で特許権侵害訴訟を担当していることからもご理解いただけるかと思います。

 弁護士4名の小規模な事務所であることから、不安に感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、訴訟は事務所の規模で行うものではありません。個々の弁護士の経験値については、このように客観的な数値から問題ないとお考えいただけるのではないでしょうか。                              (河部)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2015.03.23更新

 皆様、こんにちは。

 

 ウェブサイトのリニューアルと同時に所属弁護士が持ち回りで更新するはずだったブログは、「忙しい」を口実にただの1度も更新されないまま、半年が経過してしまいました。

 アソシエイトの河部弁護士から何度も何度も尻を叩かれ、ようやく重い腰を上げることとなりました。執筆担当はランダムになるかもしれませんが、週1回ペースでブログを更新していきたいと思います。

 

 さて、本年(平成27年)3月16日付け日本経済新聞の朝刊に、知的財産高等裁判所の設楽隆一所長が、特許権侵害訴訟における和解を含んだ特許権者(原告)の実質的勝訴率が約4割(約42%)にのぼり、欧米に比べて原告勝訴率が低いという指摘に反論されたとの記事がありました。

 ご存じの方も多いと思いますが、知的財産権訴訟の判決は、判決の言い渡しがなされると数日で最高裁判所のウェブサイトに掲載されます。私も時々チェックするのですが、確かに請求棄却(原告敗訴)判決が大半で、一部認容判決(原告の請求を一部認める判決)を含めて原告勝訴判決はチラホラという感じです。それもそのはず、上記記事によれば、平成23年~25年の3年間で下された144件の判決中、原告勝訴判決は37件、割合にするとわずか25.7%です。

 この数字だけを見てしまうと、特許権者としては訴訟提起を躊躇してしまって当然です。特許権者だってむやみやたらと訴訟を起こしているわけではなくて、何度も何度も検討して、相手方とも書面のやりとりや交渉を重ねて、吟味して訴訟を提起しているわけです。訴訟を起こせば印紙代もかかりますし、弁護士費用も決して安くありません(スミマセン)。それなのに1/4の確率でしか勝てない、場合によっては裁判所からアナタの特許は無効だなんて全世界に宣言されるわけですから、特許権者に、訴訟なんか起こすだけ損だと思われてしまうのもやむを得ません。

 

 でも、上の数字はどうにも特許権侵害訴訟の実態とは合いません。究極的にはお金で解決できる場合が多い特許権侵害訴訟は、和解で終わることが少なくないからです。そして、設楽所長がご指摘されているとおり、「特許訴訟では、裁判所は『原告が勝つ』と判断した場合に和解を勧告する」ので、和解の場合には、原告有利のものが多くを占めます。「和解で終わったケースは94件(中略)。このうち原告勝訴に等しい合意内容の和解は販売・製造差し止めが41件、十分な金銭の支払いもしくはライセンス契約の締結が23件」(上記記事)ということですから、和解に占める原告有利和解の割合は約68%にもなるのです。

 この原告有利和解と原告勝訴判決を合計すると、特許権者(原告)の実質的勝訴率は約42%という冒頭の数字になります。42%ともなれば、五分五分とまではいかないものの、ダメ元という数字ではありませんから、特許権者にとっても、紛争解決手段として訴訟提起を選択する大きな動機になり得るのではないでしょうか。

 費用と労力をかけて、特許権を取得し、これまで維持してきたわけです。権利は行使してこそ意味があります。訴訟を起こさなければ宝の持ち腐れです。いえ、そうでないと困るんです、弁護士も(笑)                    (弓削田)

 

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

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