2015.05.11更新

1 まずは「WHO IS」で検索

 こんにちは、河部です。

 今回はJPドメイン名の調査からJPドメイン紛争処理手続に至るまでの流れについて、順を追って説明していきたいと思います。3回も同じテーマで引っ張りすぎかもしれませんが、これが最後なので許してください(^_^;)

 取得しようと思っていたJPドメイン名を第三者が既に購入していたことに気付くのは、おそらく自分がJPドメイン名を購入しようとした際に、自らのロゴ等が入ったJPドメイン名を購入できないことが判明したときでしょう。この場合、まずは株式会社日本レジストリサービス(以下「JPRS」といいます。)の運営する「WHO IS」で、当該ドメイン名を検索すると、誰がドメイン名の所有者かが分かります。

 

2 「WHO IS」でも分からなかったら…方法は2つ

 「WHO IS」で検索すれば、登録者名や連絡先が分かることが多いです。しかし、中には登録者名が「○○○」などと伏せ字にされている場合も存在します。私の経験でも、「WHO IS」では伏せ字にされていて「WHO IS」だけでは対応できない事例がありました。

 こういった場合にどうやって登録者名や登録者の連絡先(連絡先が分からないと譲渡交渉ができませんので。)を入手するか?方法としては、①JPドメイン名登録情報の公開・開示制度を用いる方法、②弁護士照会(弁護士法23条の2)による方法の2つがあります。

 ①による場合、JPRSは決められた範囲までしか情報を教えてくれません。しかし、②の弁護士照会であれば、JPRSに登録されている情報を漏れなく開示してくれます(実際にJPRSに問い合わせたので、確かなはずです。)。

 

3 弁護士照会がお勧め

 ①であれば、弁護士に頼まなくても自分で行うことができます。しかし、私としては②の弁護士照会がお勧めです。なぜなら、JPドメイン名の譲渡交渉においてはファーストコンタクトが重要であり(重要である理由は後ほどご説明します。)、できるだけ情報を入手した上で連絡を取る方法を考えた方が得策だからです。

 

4 JPドメイン名の譲渡交渉は入り方が重要

 ⑴ 不正の意図がない相手の場合

 登録者の意思に反してJPドメイン名の移転を受けるためには、JPドメイン名紛争処理手続で移転裁定を勝ち取らなければならず、移転裁定を勝ち取るためには、登録者の不正の目的を立証することが要求されます(JPドメイン名紛争処理方針4条a.(ⅲ))。

 金銭を要求するでもなく、ドメイン名を商業利用するでもない場合(例えばそのブランドのファンの方が、好きが高じてドメイン名を取得したような場合が想定できます。)には、任意に譲渡に応じてもらえる可能性がありますが、これができなければ、いかにJPドメイン名紛争処理手続において申立人側に有利な結論が出やすいといえども、ドメイン名を取得できるか怪しい部分が出てきます。したがって、下手に高圧的な態度に出てファーストコンタクトで心を閉ざされないように、配慮が必要です。

 

⑵ 不正の意図がある相手の場合

 逆に、金銭を目的とした相手であれば、どう登録者の悪意を立証する証拠(≒登録費用を超える金銭を要求する証拠)を引き出すか、これが最大の課題です(フリーライドを目的としている場合は、交渉で引き出さずともインターネットで調べられるため、場合によってはいきなり裁定でも構いません。)。

 既にお伝えしたとおり、裁定では申立人よりの裁定が下ることが多いで すが、絶対とは言い切れません。下手をすると、最低手数料20万円+弁護士・弁理士費用をドブに捨てることになります。できれば確実な証拠を掴めるように、ファーストコンタクトのときから意識しておく必要があります。

 いずれにせよ、JPドメイン名の譲渡交渉においては、最初の入り方が重要です。

 

5 費用はかかってしまいますが…

 JPドメイン名紛争処理手続を行うためには、知財仲裁センターの手数料だけでも20万円近くかかります。また、代理人として弁護士や弁理士が手続を行う場合、どうしても相応の費用がかかってしまいます。

 もちろん、自社ブランドの顧客吸引力にフリーライドするような悪質な輩に対しては断固たる姿勢で臨むべきです。その姿勢は、裁定の結果という形で、外部に公表されることになり、抑止力として働きます。                  (河部)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2015.05.08更新

1 裁定例の分析

 こんにちは、河部です。JPドメイン紛争処理手続を受任するに当たり、せっかく裁定例に目を通したので、今回は、日本知的財産仲裁センターのウェブサイト上で公開されている裁定例について、若干の考察を加えてみたいと思います。

 

2 訴訟の感覚で判断してはならない

 多くの裁定例に目を通してみて、一番強く感じたのは、「訴訟の感覚で臨んではならない」ということです。

 JPドメイン紛争処理手続において移転命令が出るための要件は、①類似性、②登録者に正当な権利がないこと、③登録者の不正の目的です。

 多くの裁定例で、②登録者に正当な権利がないことについては、登録者が何も立証していないから正当な権利がない、というような判断がなされています。つまり、実質的に立証責任が転換されているのです。

 また、③登録者の不正の目的については、必ずしも不正の目的に結びつかないと思われる反論がないことと連絡を取れないことを理由として不正の目的があったと認めている裁定例(JP2007-0002JP2012-0005など、東京地方裁判所平成14年7月15日判決(平成13年(ワ)第12318号)の不正競争防止法2条1項12号に関する判断と比較すると、かなり認定が緩やかです。

 相手が答弁書を提出しない場合も多く(裁定例を見ればかなりの事案で答弁書が提出されていません。)JPドメイン紛争処理の結果が訴訟に至ることは少ないので、難しいところがあるなという事案でも、申し立ててしまえばドメイン名の移転を受けられる可能性は大いにあります。

費用の問題を受容できるのであれば、多少厳しくても申し立てる価値は十分です。

 

3 たまに厳しい判断も…

 しかし、厳しい裁定例も散見されます。例えば、JP2008-0002。「FIAT」という結構なメジャーブランドでありながら、棄却裁定が出ています。しかも、時期的な傾向というわけではなく、緩やかな認定がなされている合間合間に厳しい裁定例が出ています。パネリスト次第、というところでしょうか。

 

4 まとめ

 以上のとおり、JPドメイン紛争処理手続は認定基準が訴訟におけるそれと比べて緩やかであり、申立人側に有利な判断になる可能性が高いです。ちょっと厳しくても申し立てる価値はあります。しかし、裁定の内容には各パネリストによってばらつきが見られ、甘い見通しで申立てをすると、運悪く厳しいパネリストにぶつかった場合には棄却されてしまうことには注意が必要です。                 (河部)

 

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2015.05.07更新

1 JPドメイン名紛争処理手続:ドメイン名を取り戻す唯一の手段

 こんにちは、河部です。今回は、弊所で扱った珍しい事案、JPドメイン名紛争処理手続について触れてみたいと思います。

 ドメイン名について争う法的根拠としては、不正競争防止法(不競法)2条1項12号があります。しかし、不競法2条1項12号では、差止請求(ドメイン名の使用の中止を求める請求)や損害賠償請求は認められても、そのドメイン名をよこせと命令することはできません。

 これを実現する唯一の手段が、JPドメイン名紛争処理手続です。

 

2 私的機関の判断なのに強制力がある

 私は鉱業法上の裁定(鉱業法133条)について調査をしたことがあるのですが、JPドメイン名紛争処理手続は鉱業法の裁定のように行政機関が行う裁定とは異質です。他の裁定は法律上の根拠があって行政機関(鉱業法であれば経済産業省)が判断を下すのですが、JPドメイン名紛争処理手続は、あくまで私的機関が行っているというところに特徴があります。

 私的機関による紛争処理というと仲裁手続を思い浮かべますが、仲裁では仲裁合意が必要であり、つまりは相手方も同意していないと第三者が強制力を持つ判断を下すことはできません。これに対し、JPドメイン名紛争処理手続では、ドメインを有している側(登録者)の意向は関係ありません。ここは重要なポイントです。

 また、仲裁手続と異なり、裁定の結果に不服がある場合には、裁判所で争うことができます(JPドメイン名紛争処理方針第4条k)。

 

3 裁定申立てに処分禁止の仮処分と同じ効力がある

 JPドメイン名紛争処理手続が開始すると、民事裁判手続でいうところの処分禁止の仮処分と同じ効果が生じます(JPドメイン名紛争処理方針第8条(ⅰ))。

 すなわち、JPドメイン名紛争処理手続においては、申立書を登録者に送付した日(JPドメイン名紛争処理方針のための手続規則第4条)から、ドメイン名を他の者に移転することができなくなります。

 相手方の不正の目的を立証できる証拠を掴んだら、できる限りに早期に申立てをして、第三者にドメイン名を移転されることを防ぐ必要があります。

 

4 JPドメイン名紛争処理手続を扱った弁護士・弁理士は少ない

 私も最近申立代理人としてJPドメイン名紛争処理手続を初めて扱い、無事ドメインの移転という結果を得ることができました。

 JPドメイン名紛争処理手続の結果は、知財仲裁センターに事例として全て掲載されます(JPドメイン名紛争処理方針第8条j)。しかも、その事例は年に数件程度であり、かなり少ないです。事例を見ていけば、JPドメイン紛争の経験を有する弁護士・弁理士の先生は思った以上に少ないことが分かります。

 こういうレアな事案で結果が公開されるというのは、移転裁定を得た担当弁護士にとっては気分がいいものです。                     (河部)

 

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

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