2017.03.23更新

1 オプトアウト届出開始

 以前のブログ改正個人情報保護法①改正個人情報保護法⑤)でもお伝えしましたが、平成29年5月30日施行の個人情報保護法の改正により、オプトアウト方式による個人情報の第三者提供を行うためには、事前に個人情報保護委員会への届出が必要となります。従前のとおり届出をせずにオプトアウト方式による個人情報の提供を行うと違法になってしまうため、十分注意が必要です。

 施行から直ちにオプトアウト手続を利用するため、平成29年3月1日から、事前届出の受付が開始されています。

 

2 具体的な届出方法

 個人情報保護委員会のウェブページによると、オプトアウト届出手続の方法としては、届出書とそのデータのCD-Rを個人情報保護委員会の事務局宛てへ送付する方法のようです(郵送のみの対応とのことです。)。

 忘れていると違法になってしまうため、是非事前届出をされることをお勧めいたします。

(神田)

 

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2017.03.21更新

1 特許についての講演

 ブログの更新が滞っている間に、特許権関係訴訟についての講演にも出席しました。

 

2 記載要件違反は認められにくい?

 今回の講演で印象に残ったのは、「記載要件違反の主張については、よほどのことがない限り、特許庁における判断を尊重する」旨の発言をなさっていたことです(受講から時間が経っており、細かなニュアンスは違っているかもしれません。)。

 

3 『パテント』の記事にも

 この点については、『パテント2016 Vol.69 No.3』の記事になっている清水節現知財高裁所長の講演録にも言及があります。

 すなわち、清水判事は、「なお、私自身は、いったん成立した特許について特許法36 条6 項1 号又は2 号の明確性、サポート要件違反により無効と判断することは、例外的と考えています。特に明確性要件について、査定系はともかく、無効審判においては、当業者に準ずる特許庁の審査官が不明確でないとし、多少の文言上の不一致や、技術的にやや不明なところがあっても一応理解できて特許にしたのだから、無効にしなければならないということは、例外的だろうと思います。重箱の隅をつつけば、明細書に不備な記載は見つかるかもしれませんが、そのようなことで、一度特許にしたものを無効にすることは余りよいことではないと思います。ただし、個人的な意見なので、必ずしも裁判官に共通するものではありません。実際にも36 条違反のみで無効の抗弁が成立した事例は余りないと思います。進歩性もない事例について、36条についても、この際判断しておこうという場合はありますが、やはり無効の抗弁は、進歩性、新規性で勝負するのが本筋だと思います。また、個人的には、36条違反を余りたくさん主張すると争点が拡散しますので、なるべく無駄な論点は増やさないでいただきたいと思います。知財事件に限らず、一般に民事系の裁判官は、根拠の薄い論点で争点を拡散させないでほしいと考えています。」として、個人的な意見であるとはしながらも明確に述べています。

 髙部判事も同趣旨の発言をなさっていることからすると、これが知財裁判官の基本的な考え方なのかもしれません。侵害訴訟では必ずと言っていいほど無効論主張をすることになりますが、この点も踏まえて、どこまで記載要件違反の主張をするか、よく検討する必要がありそうです。

(河部)

 

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2017.03.17更新

1 印紙のご相談

 弊所では、契約書チェックのご依頼を日常的にいただいております。その際、「この契約書の印紙はいくらですか?」というご相談をあわせていただくことも多いです。

 印紙を貼るべきか、貼るとしていくら貼るべきか、貼るべき契約書に貼らなかった場合にはどうなるのか、企業のご担当者様としては気になる部分かと思いますので、以下ご説明いたします。

 

 

2 印紙税とは

 印紙税とは、「文書」に課税される税金のことをいいます。

 そもそもなぜ文書を作成するのに税金を支払わなければならないのでしょうか。それは、当事者間において契約書などの「文書」を作成することにより、口頭で行われる場合と比較したとき、取引関係が明確化し法律関係が安定化するというメリットが得られるからと説明されてます。つまり、当事者関係を安定化・明確化するメリットを契約書等は持っており、印紙税は、当該メリットを享受する必要費と考えられているのです。 

 

 

3 印紙を貼る文書とは

 印紙を貼るべき「文書」は、印紙税法2条に規定があり、「別表第一の課税物件の欄に掲げる文書」とされています。

 そこで、「別表第一」を見ると、番号1から20までの文書が規定されています。これらの文書のいずれかに該当すれば、印紙を貼らなければなりません(番号1から20に対応して、1号文書、2号文書などと呼ばれます)。

 そして、番号1から20のいずれの文書に該当するかによって、納めるべき印紙税額が異なります。したがって、まずは、1号から20号のいずれ の文書に該当するのか(あるいはしないのか)を判断する必要があります。

 以下では、よくご相談を受ける、 1号文書、2号文書、7号文書についてご説明いたします。なお、この点について、国税庁のHPで丁寧に解説されていますので、一読されることをおすすめいたします。

 

 

4 1号文書とは

 1号文書とは、

 ① 不動産、鉱業権、無体財産権、船舶、航空機及び営業の譲渡に関する契約書

 ② 地上権又は土地の賃借権の設定又は譲渡に関する契約書

 ③ 消費貸借に関する契約書

 ④ 運送に関する契約書

 をいうとされています(印紙税法別表1の1)。

 ①は、不動産売買契約書、土地建物売買契約書、不動産交換契約書、不動産売渡証書などです。したがって、動産売買契約書については、7号文書に該当する場合を除き、印紙は不要です。

 ②は、土地賃貸借契約書、土地賃料変更契約書などです。

 ③は、金銭借用証書、金銭消費貸借契約書などです。

 ④は、運送契約書、貨物運送引受書、用船契約書などです。

 以上の1号文書についてはいずれに該当するかは比較的明確ですね。

 

 

5 2号文書とは 

 (1) 請負とは

 2号文書とは、請負に関する契約書をいいます。

「請負」とは、民法上、「仕事の完成に対し報酬を支払う契約」をいいます。

 したがって、請負とは「仕事の完成」を目指すものです。つまり、仕事それ自体とは別に仕事の完成を考え、それと報酬との交換を考えるのが、請負ということになります。

 典型的な例でいえば、ビルの建築を依頼する場合です。これは、ビルの建築作業をするという「仕事」をすればよいというわけではなく、ビルの「完成」を目指さなければならないという意味で典型的な請負契約です。

 他方で、医者による診療行為は請負ではありません。それは、医者の診察が患者の病気を完治させるという「仕事の完成」を目指していないからです。

 

 

 (2) 業務委託契約書との相違

 ところで、実務で用いられるよく契約書に「業務委託契約書」というものがあります。実務担当者の方は、「業務委託契約書」≠「請負に関する契約書」として、印紙が不要と誤解されているがいらっしゃいます。

 しかしながら、印紙を貼付する必要があるか否かは、契約書のタイトルではなく、内容で判断されます。したがって、業務委託契約が「請負に関する契約書」に該当するか否かは、しっかりその内容を検討する必要があります。

 ここで、上記の請負の意義からすれば、委託する「業務」が仕事をすることのみならず、仕事の「完成」を目指すものであれば、印紙を貼る必要があります。

 この点の判断は微妙なことが多いので、事前に専門家に相談されることをおすすめします。 

 なお、別表2には、2号文書の例として、「工事請負契約書、工事注文請書、物品加工注文請書、広告契約書、映画俳優専属契約書、請負金額変更契約書など」が挙げられています。 

 

 

6 次回 

 次回は、7号文書の意義や7号文書と1号・2号文書の相違について説明いたします。

 

(神田)

 

 

 

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2017.03.16更新

1 弁理士と弁護士の感覚の違い

 だいぶ空いてしまいましたが、前回に引き続き、髙部判事の講演で感じた弁理士の先生と裁判所・弁護士の感覚の違いについて、ご紹介させていただきます。

 

2 登録例の証拠提出

 2つ目は、商標権についての審決取消訴訟で、当該審決取消訴訟で争われている商標とは関係のない別の商標が登録された(されなかった)例をたくさん提出して、登録のハードルが低い(高い)ことを示すことで、当該審決取消訴訟でも商標が登録されるべきである(されるべきではない)と主張することの是非についてです。

 髙部判事は、別の商標が登録された(されなかった)という判断自体が誤っている可能性がある(審判・審決取消訴訟でひっくり返される可能性がある)以上、あまり意味がなく、主張はあくまで当該商標についての具体的なものにした方が効果的であるという趣旨のことをおっしゃっていました。

 この点について、私自身は同じような感覚を持っていたのですが、質疑応答の時間には弁理士の方から突っ込んだ質問がなされており、登録されたものが登録されるべきか否かを判断する裁判所の感覚と、登録させることがお仕事の弁理士の先生の感覚がずれやすい部分だったのかなと思い、強く印象に残っています。

 意味がないということはないでしょうが、審決取消訴訟を戦う際には、こういった裁判所の感覚も踏まえて書面を作成する必要がありそうです。

 

(河部)

 

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2017.03.14更新

1 外観類似で使用差止め

 去年のことになりますが、日本経済新聞の朝刊に、「『コメダの外観』まねはダメ」という記事がありました。

 内容としては、株式会社コメダが運営するコメダ珈琲店の外観、内装及びメニュー表示等を、株式会社ミノスケの運営するマサキ珈琲中島本店がそのまま使用しているとして、株式会社コメダがその使用の差止めを求めた仮処分命令申立事件となっています。

 日経新聞に掲載された決定理由では、「あまりに多くの視覚的特徴が同一または類似している」、「提携など営業上の緊密な関係を混同させる可能性があり、店舗外観の使用はコメダの営業上の利益を侵害する恐れがある」とされています。

 ちなみに、コメダの店舗とマサキ珈琲の外観の対比は以下のとおりです。いかがでしょうか?

 

29.3.14 

出典:「仮処分命令の発令に関するお知らせ」

 

2 記録閲覧

 仮処分決定自体は公開されていないため、その内容を知ることはできませんが、上記の「仮処分命令の発令に関するお知らせ」では、本案訴訟も提起されているという記載がありましたので、本案訴訟に係る記録を閲覧しに行きました。

 

3 事件の背景

 当事者の主張によると、もともと、マサキ珈琲は、コメダ珈琲に対して、フランチャイズ契約の申込みをしていたのですが、コメダ珈琲は、同じ地域に他のフランチャイジーがいること等を理由として、申込みを断ったようです。

 そこで、マサキ珈琲が、フランチャイズ契約を締結することなく、コメダ珈琲と同じような外観、内装及びメニューを備えた店舗の営業を開始してしまったとのことです。

 

4 根拠は不正競争防止法

 記録によると、今回の訴訟では、不正競争防止法(以下「不競法」といいます。)2条1項1号及び2号が根拠とされていました(一般不法行為に基づく損害賠償請求も追加主張されています。)。不競法2条1項1号と2号は、いずれも「商品等表示」と同一若しくは類似の商品等表示を使用する行為を不正競争とするものです。

 「商品等表示」とは、「人の業務に係る氏名、商号、商標、標章、商品の容器若しくは包装その他の商品又は営業を表示するもの」(不正競争防止法2条1項1号かっこ書)であり、商品の出所を示す表示(商品表示)と営業の主体を示す表示(営業表示)を合わせたものです。

 本件では、原告は、まず、店舗の外観を「商品等表示」と主張しました。過去には大阪地判平成19年7月3日判時2003号130頁(ごはんや食堂事件)が店舗外観を「商品等表示」に該当し得ることを認めていますが、本件ではどのような判断がされるのか、注目です。 

 また、より興味深いのは、原告が、店舗の内装や商品のメニューも「商品等表示」と主張しているところです。上記のとおり、商品等表示は商品の出所や営業主体を示すものである必要がありますが、喫茶店で出されているメニューも喫茶店の内装もある程度似通っていますから、そう簡単に「商品等表示」として認められないのではないかと考えられます

 名古屋出身の神田としては、コメダのシロノワールやブーツ型メロンジュース、ロンドマールなどの商品がどのように保護されるのか(あるいはされないのか)注目したいところです。

  

5 コメダ珈琲の店舗に共通する商品等表示の立証の難しさ

 コメダ珈琲の店舗は数多く存在しており、全てが完全に同じ構造ではなく、それぞれが異なった外観ですから、コメダ珈琲の商品等表示を認定するためには、それらに共通する外観等を認定する必要があります。

 そうすると、コメダ珈琲の外観等の特徴的な部分を抽出して、その特徴的部分が店舗全体で共通することを立証しなければなりません。 

 一般に不競法2条1項1号案件は周知性立証が難しいのですが、コメダ珈琲自体は有名ですから、今回のような案件では、商品等表示といえるかが勝負のカギとなりそうです。

  

6 損害論への移行

 調書を見ると、本件は、前回の期日で損害論へ移行したようです。

 損害論へ移行したということは、不競止法2条1項1号又は2号の充足性が認められたということを意味します。

 理由は明らかでありませんが、判決に至った場合には必ずチェックしようと思います。

(神田、平田)

  


 

1 ごはんや食堂事件において、大阪地裁は、「仮に店舗外観全体について周知営業表示性が認められたとしても、これを前提に店舗外観全体の類否を検討するに当たっては、単に、店舗外観を全体として見た場合の漠然とした印象、雰囲気や、当該店舗外観に関するコンセプトに似ている点があるというだけでは足りず、少なくとも需要者の目を惹く特徴的ないし主要な構成部分が同一であるか著しく類似しており、 その結果、飲食店の利用者たる需要者において、当該店舗の営業主体が同一であるとの誤認混同を生じさせる客観的なおそれがあることを要すると解すべきである。」としています。

 コメダのプレスリリースによると、仮処分においては、店舗建物自体の使用は禁止しているが、その余の申立てについては却下されていることから、店舗の内装や商品のメニューについては、商品等表示と認められなかったであろうと推測されます。

 

 

 

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2017.02.03更新

1 髙部判事の講演に出席

 今回のブログは弁理士の先生方向けの記事です。

 昨年の話ですが、髙部眞規子知的財産高等裁判所部総括判事による、日本弁理士クラブでの商標訴訟の実務の講演に、特別に出席させていただきました。その際に、弁理士の先生と裁判所・弁護士の感覚の違いという点で、特に印象に残ったことをご紹介させていただきます。

 

 

2 発信主義と到達主義

 1点目は、審決取消訴訟の期間制限についてのものです。

 審決取消訴訟は、「審決又は決定の謄本の送達があった日から三十日を経過した後は、提起することができない」(特許法178条3項)とされています(外国法人の場合には、審判長が90日間の附加期間を定めるため、120日となります。)。

 特許法19条は、特許庁に提出する提出期間が定められている書類の効力発生時期について、証明をしたときは日本郵便に差し出した日時に「特許庁に到達したものとみなす」として、発信主義を定めています。

 これに対し、裁判所に提出する書類についてはこのような特別規定がなく、あくまで裁判所に到達した日時に到達したことになります。

 

 

3 期限徒過の危険性

 特許庁に対す出願業務では、期限の最終日に消印をもらって郵便局に提出しさえすれば、期限の問題はクリアできます。

 しかし、髙部判事のお話によれば、この出願業務に慣れている弁理士の先生の中には、同じようにすれば、審決取消訴訟の出訴期間制限もクリアできると誤解されている方もおり、年間数件は、出訴期限の30日を経過した後に訴状を提出したとして、訴えが却下されてしまっているそうです。

 弊所の弁護士は、こうした出願実務と訴訟実務の違いを熟知しておりますので、弁理士の先生から審決取消訴訟の訴状提出についてご相談いただいた場合には、必要に応じて予め発信主義でないことをお伝えしています。しかし、出願実務のことをあまりご存じでない弁護士の場合には、誤解の存在自体を認識していない可能性が高く、訴訟のプロである弁護士に相談したから安心と思っていたら、思わぬミスを招いてしまった・・・という事態が起きないとも限りません。

 期間制限の徒過は、取り返しのつかない致命的なミスです。是非、裁判所が到達主義であるという点にご留意いただきたいと思います。

 

 次回は、2点目についてお話しさせていただきます。

(河部)

 

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2017.01.27更新

謹啓 梅花の候、皆様方にはますますご健勝のこととお喜び申し上げます。

 さて、弊所は、昨年12月に司法研修所を卒業した平田慎二弁護士を新たに迎えました。

 同弁護士は、京都大学工学部電気電子工学科を卒業後、特許庁に入庁し、審査官をしながら、弊職らが教鞭を執る法科大学院に通い、首席で卒業後、司法試験に合格しました。かかる経歴の弁護士の加入は、弊所にとって貴重な戦力になるものと期待いたしております。

 同弁護士の加入により、弊所の弁護士は6名の体制になります。これまで以上にきめ細やかで迅速なリーガルサービスを提供できるよう、なお一層の努力を重ねてまいります。

 何卒倍旧のご指導・ご鞭撻を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。

謹白

                      平成29年1月吉日                      

                          弁護士 小林 幸夫

                          弁護士 弓削田 博

 

 

拝啓 早春の候、益々ご清栄のこととお喜び申し上げます。

 私平田慎二は、この度司法修習を終了し、小林・弓削田法律事務所にて、弁護士として第二の人生を踏み出すことになりました。

 私は、特許庁において9年8月、審査業務、統計調査業務、品質管理業務等に従事して参りました。在庁中に、知財訴訟に関わりたいという思いから、中央大学法学部、桐蔭法科大学院の夜間部で学びました。理科系弁護士として、特許庁時代の経験を活かして、皆様のご期待に沿えるよう、誠心誠意、最大の努力の限りを尽くす所存です。

 何卒ご指導ご鞭撻のほど、宜しくお願い申し上げます。

敬具 

                           弁護士 平田 慎二

 

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2017.01.05更新

 明けましておめでとうございます。

 

 平素は、小林・弓削田法律事務所に格別のご高配を賜り、厚くお礼申しあげます。

 

 昨年は、弁護士1名と事務局1名を増員して、より多くの案件に対応できる体制を整えることができました。

 

 小林・弓削田法律事務所では、本年も、この1月から、元特許庁審査官の平田慎二弁護士を迎えて弁護士6名の体制となり、より一層の陣容の充実を図りました。また、今後も増員を計画しております。

 

 陣容の拡大に伴い、小林・弓削田法律事務所はサービスの質・スピードをさらに向上させていく所存でおりますので、引き続きご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます。

 

2017年1月吉日

  

小林・弓削田法律事務所

所長弁護士・弁理士 小林 幸夫

パートナー弁護士  弓削田 博

 

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2016.12.27更新

 1 個人情報活用の必要性 

 前々回のブログで、改正個人情報保護法の1号型の「個人情報」も、なお不明確な部分があることをご紹介しました。

 そうすると、企業からすれば、どのような場合に当該情報を「個人情報」として取り扱えばよいのか不明確です。他方で、経済界ではビッグデータをマーケティング等で活用したいという強い要請があります。 

 

 

2 Suica事件 

 少し前の話になりますが、平成25年7月頃、JR東日本が日立製作所に対し、Suicaの情報を販売したことが問題視され、新聞等でも取り上げられました。この事件では、JR東日本は、乗車駅や降車駅に関する情報を提供しただけで、氏名や生年月日等の個人を特定できる情報を提供していませんでした。 

 それにもかかわらず、個人情報保護法違反では?というユーザーの声により、JR東日本は、情報の提供を中止せざるを得なくなりました。

 

 

3 匿名加工情報とは 

 Suica事件は、ビッグデータ利用の要請が高まる一方で、個人情報保護要請の高まりと、企業のビッグデータを活用したいという要請が衝突したものですが、旧個人情報保護法制定時には、ビッグデータの活用自体が議論されていませんでした。 

 そこで、改正法では、「個人情報」の利用に対するビジネス上の要請に応えるため、「匿名加工情報」という概念が設けられました。

 

 改正個人情報保護法2項9項は、「匿名加工情報」について、以下のとおり定義しています。

 

 この法律において「匿名加工情報」とは、次の各号に掲げる個人情報の区分に応じて当該各号に定める措置を講じて特定の個人を識別することができないように個人情報を加工して得られる個人に関する情報であって、当該個人情報を復元することができないようにしたものをいう。 

一 第1項第1号に該当する個人情報 

  当該個人情報に含まれる記述等の一部を削除すること(当該一部の記述等を復元す

 ることのできる規則性を有しない方法により他の記述等に置き換えることを含む。) 

二 第1項第2号に該当する個人情報 

  当該個人情報に含まれる個人識別符号の全部を削除すること(当該個人識別符号を

 復元することのできる規則性を有しない方法により他の記述等に置き換えることを含

 む。)

 

 また、「匿名加工情報」の作成方法について、改正法36条1項は、「個人情報保護委員会規則で定める基準」に従って、当該個人情報を加工しなければならないとしています。この「個人情報保護委員会規則で定める基準」は、以下のとおりです。

 

(匿名加工情報の作成の方法に関する基準) 

第十九条 

法第三十六条第一項の個人情報保護委員会規則で定める基準は、次のとおりとする。 

一 個人情報に含まれる特定の個人を識別することができる記述等の全部又は一部を削

 除すること(当該全部又は一部の記述等を復元することのできる規則性を有しない方

 法により他の記述等に置き換えることを含む。)。 

二 個人情報に含まれる個人識別符号の全部を削除すること(当該個人識別符号を復元

 することのできる規則性を有しない方法により他の記述等に置き換えることを含

 む。)。 

三 個人情報と当該個人情報に措置を講じて得られる情報とを連結する符号(現に個人

 情報取扱事業者において取り扱う情報を相互に連結する符号に限る。)を削除するこ

 と(当該符号を復元することのできる規則性を有しない方法により当該個人情報と当

 該個人情報に措置を講じて得られる情報を連結することができない符号に置き換える

 ことを含む。)。 

四 特異な記述等を削除すること(当該特異な記述等を復元することのできる規則性を

 有しない方法により他の記述等に置き換えることを含む。)。 

五 前各号に掲げる措置のほか、個人情報に含まれる記述等と当該個人情報を含む個人

 情報データベース等を構成する他の個人情報に含まれる記述等との差異その他の当該

 個人情報データベース等の性質を勘案し、その結果を踏まえて適切な措置を講ずるこ

 と。

 

 以上の基準も必ずしも明確ではありませんが、今後、経済産業省の「匿名個人情報マニュアル」や認定個人情報保護団体の作成する個人情報保護方針により、事例ごとの類型的な措置が固まっていくことが期待されます。

 

 

4 匿名加工情報の第三者提供時の注意 

 匿名加工情報は、「個人情報」ではありませんので、理論的には個人情報保護法が適用されず、事業者は当該情報を自由に利用できることとなります。もっとも、匿名加工情報が第三者提供されるに際し、提供先の持つ情報と照合されて、「個人情報」となってしまうことを防止するため、事業者は、提供先に対し、提供に係る情報が匿名加工情報であることを明示しなければならないとされています。 

 また、あらかじめ第三者に提供される匿名加工情報に含まれる個人に関する情報の項目及び情報の提供について、個人情報取扱事業者は公表しなければなりません(改正法36条4項、37条)。 

 

(河部、神田)

 

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2016.12.22更新

1 改正法施行は平成29年5月30日から

 改正個人情報保護法の具体的な施行日は、最近まで決まっていなかったのですが、平成28年12月20日の閣議決定により、改正個人情報保護法の全面施行日が平成29年5月30日からとなりました。

 なお、オプトアウトによる第三者提供(改正法23条2項)を行うには、個人情報保護委員会へ届け出ることが必要となり、この届出は、改正法施行前でも可能であることは、以前のブログでもご紹介したとおりですが、この改正法施行前の届出は、平成29年3月1日から可能となりました。

 

 

2 改正前の適用除外

 改正法の施行に伴い、大きく影響を受けるのが、「小規模事業者」です。

 改正前個人情報保護法では、その事業の用に供する個人情報データベース等(紙媒体、電子媒体を問わず、特定の個人情報を検索できるように体系的に構成したもの)を構成する個人情報によって識別される特定の個人の数の合計が過去6か月以内のいずれの日においても5000を超えない者は、いわゆる「小規模事業者」として、個人情報保護法の適用対象外とされていました(法2条3項5号、政令2条柱書)。

 これは、保有する個人情報が少ない事業者は、通常事業規模も小さく、個人情報保護法の要求する個人情報管理を要求するのは酷であるという趣旨でした。

 

 

3 改正後は小規模事業者でも個人情報管理に注意が必要

 しかし、企業による個人情報の漏洩問題が大きく報道され、インターネット等の急速な普及により、取り扱う個人情報の数が少なくても個人の権利を侵害する危険性は変わらないことが明らかとなり、上記の適用対象外要件は撤廃されました。

 平成29年5月30日以降個人情報を取り扱う企業様は、その取り扱う個人情報の数に拘わらず、個人情報管理に気を遣う必要があります。

 

(河部、神田)

 

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

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