2016.08.10更新

1 小林・弓削田法律事務所の業務内容②

 前回に引き続き、第70期弁護士採用に向けた小林・弓削田法律事務所のご紹介をしたいと思います。

 今回は、弊所の主たる業務である知財訴訟の特徴について、他の訴訟案件とどう違うのか、どういう人が向いているのかなどを、当該訴訟の第一起案を担当することの多いアソシエイト弁護士の視点で、まずは知財訴訟全般について、具体的に掘り下げてみます。

 

2 知財訴訟全体の特徴

 ⑴ 高い論理性が求められる

 一概には言えない面もありますが、あえて、依頼者の気持ちの部分が強い家事事件案件などと比較すると、同じ紛争案件ではあっても、知財訴訟は高い論理性が要求されます。ご依頼者様や共同受任をする弁理士の先生方も、非常に論理的な方々ばかりです。

 弁護士1年生であっても、論理性を重んじる非常に知的レベルの高い方々にご納得いただけるだけの説明ができれば、それを受け入れていただけますし、それができないようであれば、信用を勝ち取ることはできません。緻密な論理を構成できる人の方、それも言葉でそれを表現できる方が、弊所には向いていると思います(最近、準備書面だけでなく、口頭で説明をしなければならない技術説明会も増えています。)。

 もちろん、弊所内で「もう知財訴訟を任せても大丈夫だな」というコンセンサスが取れるまでは、パートナー弁護士とは別に年次が上のアソシエイト弁護士が入り、証拠の隅々まで確認した上で訴訟に臨むので、最初から完璧を求められるという話ではありません。

 最初は、「●●先生」と言われる度に、「●●先生(笑)」と言われているような被害妄想に陥りますが、仕事ぶりによってある程度信用を得られると、弁護士にならずに企業に就職していたとしたらはるか上の上司であっただろう方々や、知財のスペシャリストであり年次で言えば意見を言うのもおこがましいようなはるかに上の弁理士の先生方から、訴訟の専門家として意見を求められるようになります。私個人としては、早い段階でこういった経験ができることは、弊所の魅力の一つだと思っています。

 

 ⑵ 事前に勝ち負けが分からない事件が多い

 著作権関係はクリエイターの方の想いが強い案件が多かったりして若干毛色が異なりますが、多くの知財紛争は、感情的な対立は少なく、お互いに経済的合理性に基づいた行動がなされることが多いです。したがって、勝ち負けのはっきりした案件では、話し合いで解決してしまうため訴訟に至ること自体が少なく、勝ち負けの分からない事件ばかりが、侵害訴訟に進むことになります。

 勝ち負けが分からないことは、訴訟を勝負の場として捉え、自らの弁護士としての力量が試されることを楽しめる方にとっては、最高の舞台でしょう(後述のとおり、和解ができなかった場合の勝ち負けは裁判所のHPに全て載ります。この点も知財訴訟の痺れるところです。)。

逆に、こういった気持になれない方は、弊所には向いていないかもしれません。

 なお、弊所では、勝負にこだわる職人集団でありたいという考えから、依頼者様のご希望がない限り、訴訟案件についてはタイムチャージ制ではなく、着手金・報酬制で受任をしています。

 

 ⑶ 判決に至ればほぼ全てが裁判所のHPに掲載される

 知財事件は、判決に至れば基本的に全件が裁判所のHPに掲載されます。また、判例時報等に掲載される確率も、一般の民事訴訟と比較すれば格段に高いと思います。

 特に、同時に侵害訴訟が係属していない審決取消訴訟案件は、和解で解決することはほとんどないため、受任した事件ほぼ全てが裁判所HPに掲載されます。

自分が担当した案件が世間の耳目を集めるというのは、「重要な事件を扱っている」という気持ちにさせてくれる点で非常に嬉しいものですが、当然のことながら敗訴判決も掲載されてしまうので、辛い部分もあります。

 ちなみに、侵害訴訟のかなりの部分は和解で解決することが多いです。

 

3 まとめ

 今回は、知財訴訟全体について、その特徴やどんな人が知財訴訟に向いているかを私なりに述べてみました。次回は、もう少し踏み込んで、特許訴訟とその他の知財訴訟に分けて、説明をしてみたいと思います。                                 (河部)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2016.07.19更新

 前回の記事に続いて、今回は弓削田弁護士の珠海市での講演の様子を、ご紹介したいと思います。

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 セミナーのテーマが中国と日本の知的財産保護制度の比較で、中国側の講師には、中国の知的財産訴訟に関わる珠海の知的財産裁判所(第1審を担当)の裁判長、曁南大学教授(ウィキペディアによると、「華僑の最高学府」と称されているそうです。)、中国の知財弁護士といった錚々たる方々が名を連ねていました。

他方、日本側の講師は、弁理士の河野英仁先生 と弓削田弁護士です。

 

 第1部では、講師それぞれが講演を行います。

 最初に、河野英仁先生が日本の特許出願制度についてお話をされました。中国語に堪能な河野先生は、通訳を介さず中国語で講演をなさっています。

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 次が弓削田弁護士。日本の特許法や知財訴訟の実務について、お話をさせていただきました。

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  海外での講演ということもあり、弓削田弁護士の講演内容は、日本国内のオープンなセミナーではとてもできないような、かなり踏み込んだ内容となっていました。会場内では、事前に内容を知らされていなかった私が一番びっくりしていたかもしれません(^_^;) 

 ある聴講者の方からは、こういった踏み込んだ内容の講演は、きっと中国でもニーズがあるとお褒めの言葉をいただきました。私個人としても、知的財産訴訟に関わる企業様が実際に多くの知的財産訴訟に携わる弁護士に話を聴くのであれば、こういった内容こそ聴きたいのではないかと思います。

 

 後ろの方から撮影した写真は、こんな感じです↓ 

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 この後、中国の裁判官、弁護士、大学教授の方などの講演が続きます。

 

 少し休憩をはさんで、パネルディスカッションに入ります。

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 司会進行役は、中国弁護士の韦胜雨氏(左手前)が務めます。写真は、弓削田弁護士がパネリストの方からの質問に回答している様子です。

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 中国の方からのご質問は、税関での差止制度に関するものが多かったです。中国には税関で差止めるという制度自体がないそうで、その影響かもしれません。

  

 以上、弓削田弁護士の中国珠海市での講演の様子でした。        (河部)

 

 

 

 

 

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2016.07.12更新

 少し前になりますが、弓削田弁護士と私で、中国の珠海市へ出張してきました。珠海市はマカオの程近く、香港からフェリーで1時間ほどの距離にあります。

 

 短い時間ではありましたが、現地のある大企業の本社見学等をさせていただき、懇親の場も設けていただきました。中国流の歓迎は凄いの一言、弓削田弁護士も私も日本人としてはお酒には強い方だと思うのですが、圧倒されてしまいました(^_^;)

また、弓削田弁護士の講演、今回の出張の一環です。

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 そして本社に伺った際、その企業様の歴史を紹介する展示スペースで、こんなパネルを発見しました!

 

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 分かりにくいかもしれませんが、その企業様の「Overseas Legal Team」のうち、日本の「Legal Team」として、河野英仁先生の河野特許事務所と、弊所が記載されています!

 

 わざわざ自社紹介の展示スペースで、小林・弓削田法律事務所の名をパネルに掲載しているということは、我々を評価してくださっているということであろうと、素直に喜びたいと思います(^^)                                             (河部)

 

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2016.07.04更新

1 第70期弁護士採用に向けて

 小林・弓削田法律事務所では、現在司法修習中の第69期弁護士の採用が決まっていますが、第70期弁護士についても、採用を予定しています。

 弁護士が何百人も所属する大事務所であれば、大学やロースクールの先輩が勤務していたりして、事務所の業務内容や雰囲気を感じ取りやすいでしょうが、弊所のような事務所だと、HPを見るくらいの手段しかなく、就職活動時にどんな事務所なのか把握するのは難しいと思います。幸い杞憂に終わりましたが、かくいう私も、面接するときも、入所する前も、「本当のところどんな事務所なんだろう?」と不安に感じていました。

 そこで、本ブログを利用して、数回に分けて、小林・弓削田法律事務所の業務内容や事務所の雰囲気などを、お伝えできればと思っています。まずは最も興味があるであろう、業務内容についてからです。

 

2 知財事務所にも色々ある

 弊所のHPをご覧いただければ、弊所が知的財産法を中心に取り扱っていることはお分かりいただけると思います。しかし、世の中に「知財専門」を謳っている事務所はたくさんあり、私の感覚では、知財事務所にも、少しずつ業務内容に違いがあるように思います。

 今回は、以下の5つの観点から、知財事務所としての弊所の特徴を見ていきたいと思います。

 ① 実際問題として取扱業務は知財案件が多いのか、

   知財以外の分野の仕事の方が多いのか。

   ② 特許案件が多いのか、著作権案件が多いのか。

 ③ 侵害訴訟や契約書チェックなどの弁護士が得意とする案件が多いのか、

      出願などの弁理士が得意とする案件が多いのか。

 ④ 紛争案件が多いのか、契約書チェック等の予防法務案件が多いのか、

 ⑤ 国内案件が多いのか、渉外案件が多いのか。

 

3 小林・弓削田法律事務所は知財案件が多い

 ①についてですが、弊所の業務は、圧倒的に知財案件の割合が高いと思います。現在私が担当している訴訟案件の割合でいえば、7割近くが知財訴訟です。以前はその他の事件の割合がもう少し高かったのですが、最近は特に知財事件の割合が増えてきているように感じます。知財事件は書面の量も多く時間がかかりますから、時間の割合でいうと、知財の占める割合はもっと増えることになります。

 顧問契約をいただいている会社様からの法律相談でも、複数の法律事務所を利用されているある程度規模の大きな会社様の場合、弊所は知財絡みのご相談だけいただくということが多いです。また、法律問題全般をお任せいただいている場合でも、広告代理店様などでは、知財系のご相談が多かったりします(詳しくは以前の記事をご覧ください。)。

 

4 小林・弓削田法律事務所は産業財産権(特許・意匠・商標)案件が多い

 ②についていうと、相談案件では著作権関係の案件も多いものの、紛争案件になると、圧倒的に特許・商標・意匠といった産業財産権といわれる分野の案件が多いです。

いわゆるエンターテインメント法の分野だけに興味があり、特許・意匠・商標案件に興味が持てないという方は、あまり弊所には向いていないかもしれません。

 もちろん「推薦者の声」にメッセージをいただいたさかなクン関係の契約書なども手掛けており(詳しくはこちらをご覧ください。)、他の事務所と比較すれば著作権案件に携わる頻度はかなり多いと思います。

 

5 小林・弓削田法律事務所は訴訟案件が多い

 ③と④はまとめてしまいます。

 弊所では、小林弁護士が弁理士出身であり、現在も弁理士登録をしているものの、出願代理案件についてご相談をいただいた場合、予算・技術分野・外国出願の有無など、依頼者様のご要望に応じて、最適な弁理士の先生をご紹介するため出願代理業務は原則として取り扱っておりません(審判手続の代理は行っています。)。ほとんどが訴訟事件やこれに関連した無効審判事件(審決取消訴訟事件)です。

 また、④についてですが、契約書チェック等も一定数存在するものの、やはり主たる業務は紛争案件、それも訴訟案件です。訴訟案件の数については、こちらのブログが参考になるかと思います。

 

6 少しずつ渉外案件が…

 現在のところ、弊所の依頼者は、国内企業の数が多いです。もっとも、私が入所した頃と比較して、外国企業の知財事件を担当する件数や、英文契約書のチェック件数は増えているように感じます。語学堪能な方がいらっしゃれば、その能力を発揮する機会は十分あります。

 

7 まとめ

 以上のとおり、小林・弓削田法律事務所は、知財事務所の中でも、知財訴訟に特化しています。知財訴訟は、経験できる事務所と経験できない事務所がはっきり分かれますし、所属するアソシエイト弁護士全員が多くの知財訴訟を経験できる事務所というのは、かなり稀だと思います。知財、中でも訴訟案件にご興味がある方は、是非とも小林・弓削田法律事務所の門を叩いてみてください(^^)           (河部)

 

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2016.06.21更新

  以前のブログで、初版発行が昭和33年の鉱業法基本書をご紹介したことがありました。今回は、著作権法です。

 特許法や著作権法は権利が発生した時期の法律が適用されるため、次々と改正される知的財産法分野では、しばしば改正前の旧法にあたらねばならないことがあります。特に著作権法は、死後50年(著作権法51条2項)、映画の著作権に至っては70年(著作権法54条1項)と存続期間が長いため、おそろしく古い旧法にあたらなければならないことがあります。

 少し前のご相談で、私が生まれるよりはるか昔に創作された著作物が問題となったため、当時の著作権法を調査する必要が生じました。普段は1割引きの至誠堂書店様にお世話になります(以前のブログをご覧ください。)が、こんなときはアマゾンが便利です。

 

 1週間もせずに届いた著作権法は、こんな感じです↓

 patent

 

 昭和53年3月20日再版第5版発行、鉱業法ほどではないにしろ、なかなかのものです。

 kougyou

 

 鉱業法と並べると、こうなります↓

 conpete  

  博物館に展示されている古文書を思わせるような紙の色ですが、一応実際のご相談で使用する現役の基本書です(^_^;)                                                          (河部)

 

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2016.06.07更新

1 特許訴訟と辞典合戦

 以前のブログで国語辞典に言及したことがありましたが、今回のブログでは、特許訴訟に必須の科学用語辞典を題材にしてみたいと思います。

 特許権侵害訴訟においては、特許法104条の2(被告は原告が侵害行為であると主張する行為の具体的態様を明らかにしなければならないとするもの。)の存在もあって、事実関係に争いがあるというより、構成要件中の文言の意味解釈に争いがある場合が多いです。こういう場合、明細書の記載などから当該文言の意味を特定できる理屈を組み立てるだけでなく、自らに有利な記載のある辞書、辞典を引用しあうことがよくあります。

 

2 JIS工業用語大辞典の購入

 『新・注解特許法上巻』は、「明細書が当該技術分野の通常の学術的知識を持つ当業者を名宛人としているからには国語辞典における定義に拘泥することなく学術用語としての普通の意味を探求する解釈が正しいあり方である。その際、マグローヒル科学技術用語辞典あるいはJIS工業用語大辞典等の科学辞典類が参照されることが多い。」としています。

 『新・注解特許法』で例示されるほど知財業界で有名な辞典ですから、私も、入所してしばらくして大きな特許権侵害訴訟の第一起案を任されたときに、ちょうどJIS工業用語大辞典に出ていそうな用語の解釈が問題になっていたため、JIS工業用語大辞典を購入しました(ちなみに、マグローヒル科学技術用語辞典は小林弁護士のものを拝借しています。)。

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3 高かったかな…

 1年目から大きな特許訴訟を担当させてもらい、絶対に勝ちたいと意気込んでいた(今でもそうですが)から躊躇はありませんでしたが、駆け出し弁護士にとって、税別5万2000円は結構大きいですよね(^_^;)

 もちろん、実際に特許訴訟で役に立っているので、後悔はありません。それからも、科学用語辞典の買い増しは続いています。

                                                                                          (河部)

 

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2016.05.31更新

 最近、来年4月から商標審査基準が改訂され、産地名を用いた酒類の商標の登録がされやすくなるというニュース が出ていましたね。

 

 弊所では出願関係の業務は行っておらず、特許や商標の出願についてのご相談をいただいた場合、技術分野やご予算、外国出願の場合は出願国などお話を伺った上で、その方に最適と思われる知り合いの弁理士の先生をご紹介しています。なので、審査基準が改訂されても、残念ながら、お酒関係の商標出願のお仕事が増えるということはありません。

 しかし、お酒の登録商標が増えれば、酒蔵同士が争う侵害訴訟も増えるかもしれません。

 弊所には弓削田弁護士を筆頭に、酒好きが揃っています。お酒関係の登録商標が増えた暁には、是非とも侵害訴訟を担当したいものです・・・祝勝会が楽しみです(笑)

                                                                                                        (河部)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2016.05.30更新

 先日、河部弁護士が話題の「フランク三浦」の時計を購入したことに関してブログをアップしていました。

そこで今回は、話題の「フランク三浦」の判決について、原告の主張する取消事由1(商標法4条1項11号該当性の判断の誤り)及び取消事由3(商標法4条1項15号該当性の判断の誤り)に対する判旨を簡単にご紹介したいと思います。

 

1 判例の要旨

⑴ 取消事由1について

ア 本件商標と引用商標1(引用商標2及び3については割愛します。)の称呼、

      外観及び観念の類似について

 判決によると、裁判所は、最高裁昭和39年(行ツ)第110号同43年2月27日第三小法廷判決・民集22巻2号399頁の規範を引用したうえで、本件商標である「フランク三浦」と引用商標である「フランク ミュラー」について、「両商標を一連に称呼するときは、全体の語感。語調が近似した紛らわしいものというべきであり、本件商標と引用商標1は、称呼において類似する。他方、本件商標は手書き風の片仮名及び監事を組み合わせた構成から成るのに対し、引用商標1は片仮名のみの構成から成るものであるから、本件商標と引用商標1は、その外観において明確に区別し得る。さらに、本件商標からは、『フランク三浦』との名ないしは名称を用いる日本人ないしは日本と関係を有する人物との観念が生じるのに対し、引用商標1からは、外国の高級ブランドである被告商品の観念が生じるから、両者は観念において大きく相違する。そして、本件商標及び引用商標1の指定商品において、専ら商標の称呼のみによって商標を識別し、商品の出所が判別される実情があることを認めるに足りる証拠はない。」としたうえで、「本件商標及び引用商標1が同一又は類似の商品に使用されたとしても、商品の出所につき誤認行動死を生ずるおそれがあるとはいえない。そうすると、本件商標は引用商標1に類似するものということはできない。」と判断しました。

 

イ 被告の反論

 これに対し、被告は、①「本件商標は、著名ブランドとしての『フランクミュラー』の観念を想起させる場合がある。」、また、②「原告が被告商品と外観が酷似した商品に本件商標を付して販売していること、本件商標は引用商標を模倣したものであることに照らすと、原告商品と被告商品との間で関連付けが行われ、原告商品が被告と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずる恐れがあることは否定できない」と反論しました。

 

ウ 反論に対する裁判所の判断

 判決によると、裁判所は、①の反論について、本件商標の称呼から引用商標1を「連想」することはあり得るとしたうえで、「本件商標は、その中に『三浦』という明らかに日本との関連を示す語が用いられており、かつ、その外観は、漢字を含んだ手書き風の文字から成るなど、外国の高級ブランドである被告商品を示す引用商標1とは出所として関連される主体が大きく異なるものである上に、被告がその業務に置いて日本人の姓又は日本の地名に関連する語を含む商標を用いていることや、そのような語を含む商標ないしは標章を広告宣伝等に使用していたことを裏付ける証拠もない」ことから、「本件商標が被告商品を表示すると認識する者とは認められないし、本件商標から引用商標1と類似の観念が生じるものともいえない。」と判断しました。

 また、裁判所は、②の反論について、「原告が被告商品と外観が酷似した商品に本件商標を付して販売しているとの被告の主張は、本件商標の登録査定時以降の事情に基づくものであり、それ自体失当である。また、仮にこの事情を考慮したとしても、本件商標と引用商標とでは…観念や外観において大きな相違があること、被告商品は、多くが100万円を超える高級腕時計であるのに対し…原告商品は、その価格が4000円から6000円程度の低価格時計であって…被告商品とはその指向性を全く異にするものであって、取引者や需要者が、双方の商品を混同するとは到底考えられないことなどに照らすと、上記事情は、両商標が類似するものとはいえないとの前記(ア)の認定を左右する事情とはいえない。」と判断しています。

 

⑵ 取消事由3について

ア 本件商標の「他人の業務に係る商品または役務と混同を生ずるおそれが

  ある商標」の該当性

 判決によると、裁判所は、最高裁平成10年(行ヒ)第85号動12年7月11日第三小法廷判決・民集54巻6号1848頁の規範を引用したうえで、「被告仕様商標2を付した時計が、時計そのものを展示する方法により販売されたり、被告商品の外観を示す写真を掲載して宣伝広告がなされていること、本件商標の登録査定以降の事情ではあるものの、本件商標を付した原告商品も、インターネット販売される際に、商品の写真を掲載したうえで販売されていたことに照らすと、本件商標の指定商品のうちの『時計』については、商品の出所を識別するに当たり、商標の外観及び観念も重視されるものと認められ」るとし、「加えて、被告がその業務において日本人の姓又は日本の地名を用いた商標を使用している事実はないことに照らすと、本件商標を上記指定商品に使用した時に、当該商品が被告…の業務に係る商品であると誤信されるおそれがあるとは言えないというべきである。」と判断され、上記要件の該当性が否定されました。

 

イ 主たる被告の反論

 これに対し、被告は、上記要件の該当性を否定する根拠として、「①原告商品の外観が被告商品の外観と酷似すること、②原告商品は…被告使用商標へのただ乗り(フリーライド)に他ならない」と反論しました。

 

ウ 反論に対する裁判所の判断

 判決によると、裁判所は、①の反論に対して、「①については…本件商標の商標登録出願時及び登録査定時よりも後の事情に基づく主張であるし…原告商品と被告商品は、外観が類似しているといっても、その指向性を全く異にするものであって、高級ブランド商品を製造販売する被告のグループ会社が、原告商品のような商品を製造販売することはおよそ考え難いことや、前記⑵で指摘した点に照らすと、上記事情は、本件商標が『他人の…混同を生ずるおそれがある商標』に該当するものとは認められないとの認定を左右する事情とはいえない。」と判断しました。

 また、裁判所は、②の反論に対し、商標法4条1項15号の目的を述べたうえで、「②については…飽くまで同号に該当する商標を許さないことにより、上記の目的を達するものであって、ただ乗りと評価されるような商標の登録を一般的に禁止する根拠となるものではない。」と判断しました。

 

2 コメント

 本裁判例は、商標法4条1項11号該当性につき、本件商標と引用商標とは、称呼が類似するが、外観及び観念が著しく相違しているところ、取引の実情を考慮したとしても、商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれはなく、本件商標は引用商標に類似しないことから、同号に該当しないと判断し、また、同項15号該当性につき、販売や宣伝広告の仕方から、商品の出所を識別する際に、商標の外観及び観念が重視されることや取引の実情を考慮すると、本件商標は同号に該当しないとして、本件商標の無効審決を取り消したものです。

 本件商標と引用商標の外観及び観念が大きく異なることは、本件の重要な要素ではありますが、その他にも、取引の実情としての原告商品と被告商品の指向性の違いというのも本件では、一つ大きな要素を占めていると考えられます。

 河部弁護士も先のブログでも言っていましたが、「フランク三浦」の時計は高級ブランド腕時計と比べるまでもないチープな作りでした。原告代表者がインタビューで答えていたとおり、まさに「ウチはとことんチープにいくのがコンセプトなので」というものを体現したものであり、さすがの我々でもフランクミュラーとは誤認混同するはずがないような商品でした(この原告代表者のインタビューは裁判でも証拠として採用され、両商品の指向性の違いを基礎付ける要素となっています。)。

 このように、本件では、商品の価格や販売方法、商品のコンセプト等を詳細に認定したうえで、取引の実情として商品の指向性が違うということを認定して、審決を取消しました。今後、同種の事件が起こった際には、当てはめ部分に関して、一つ参考になる裁判例かと思われます。

 なお、裁判所は、原告商品と被告商品の外観が類似していることを認めているような判断をしていますが、本件は審決取消訴訟でしたので、原告商品の販売等が不競法違反になるかどうかについては判断していません。もし、本件が侵害訴訟であったなら、結果はどのようになっていたのでしょうね。                (藤沼)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2016.05.18更新

1 弁論準備手続期日から口頭弁論期日へ?

 最近、特許権の審決取消訴訟や侵害訴訟で、裁判所から、技術説明会を公開の法廷で行えないか、との要請を受けることがありました。

 技術説明会は法律上の制度ではなく、複雑な特許事件についての裁判官の理解を助けるため、慣行的に行われているもので、従前は、第三者が許可なく見ることはできない弁論準備手続期日の一種として扱われていました。

この運用を変え、口頭弁論期日として技術説明会を行うというのが、裁判所の要請でした。

 

2 公開の影響は?

 世間の注目を集めている特許権侵害訴訟であれば、法廷(公開法廷とはいっても、おそらくラウンドテーブル法廷でおこなわれるため、技術説明会の様子自体はあまり変わらないのだと思います。)に記者が傍聴しにきたりするのかもしれません。また、審決取消訴訟であれば、自らは審決取消訴訟の当事者ではない競合他社が、技術説明会の内容を傍聴することもありそうです(今でも、特許庁の口頭審理ではそういった事案にたまにお目にかかります)。

 また、我々代理人からすると、今までは相手方代理人のプレゼンテーションの様子を見ることしかできませんでしたが、これからは相手方ではない代理人のプレゼンテーションを傍聴できることになります。自分の事件の際は自らの説明や相手方の説明のどこに反論をするか考えるので精一杯ですから、なかなか相手方のプレゼンテーション技術を研究しようなどという余裕はありませんが、今後は、勉強用に他の代理人の技術説明会を傍聴しに行く、ということも考えられます。

 逆に言えば、こちらも見られる可能性があるわけですから、今まで以上に緊張しますね(^_^;)

 審決取消訴訟や侵害訴訟の当事者たる企業の担当者の方からすれば、訴訟を依頼する知財弁護士・弁理士を選ぶ際に、技術説明会の様子を検討材料にする、なんてこともあるのかもしれません。

 いずれにせよ、今後の動向に注意を払いたいと思います。

                                   (河部)

投稿者: 小林・弓削田法律事務所

2016.05.13更新

 司法試験シーズンですね。今回は、思い出話も兼ねて、弁護士なら誰でも持っている六法(法令集の意味で「六法」という用語を使っています。)を題材にしてみたいと思います。

 

1 受験生時代の六法の思い出

 六法といっても、様々な出版社から収録されている法令の異なる六法がたくさん出版されています。私個人は、受験生時代は受験の際に用いる六法に慣れた方が試験で有利になると考え、学部生時代はロースクール受験の際に使用する『法科大学院試験六法』(第一法規)

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 ロースクール生時代は司法試験受験の際に使用する『司法試験用六法』(第一法規)

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 司法修習生時代は修習の卒業試験である二回試験の際に使用する『デイリー六法』(三省堂)

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 と、使用する六法を変えてきました。

『司法試験用六法』は、試験本番でもらえるものと書店で購入できるものとが若干異なるので、合格前には尊敬する先輩から試験本番でもらえる『司法試験用六法』を譲り受け(お守り的な意味合いもあります。)、合格後には一番仲の良い後輩に試験本番でもらえる『司法試験用六法』を譲るなんて行事もありました。

今でも行われているのでしょうか?

 ブランド問題にも携わる知財弁護士としては、中央大学が法科大学院試験の際に、大学のロゴマークを入れた特注『法科大学院試験六法』を配布していた(今はどうなのでしょう?)ことにも、触れておかねばなりません(小林弁護士と藤沼弁護士の母校ですしね。)。

 

2 実務家になってからの六法

 晴れて弁護士になると、毎年弁護士会から『携帯実務六法』が配られます。

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 しかし,弊所のような知財事務所では、一番使う知的財産関係法が収録されていないので、残念ながらあまり日の目を見ることはありません(^_^;)

  小林弁護士は、弁理士の受験時代(40年以上前から?)から、携帯用の六法として『知的財産権法文集』(発明推進協会)を愛用しているようです。頻繁に(一年に2回か、3回)改訂されます。知財高裁の弁論準備期日に出廷した際、裁判官や調査官も同じ法文集を持参していることを目にします。

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 私は超コンパクトな『知的財産権基本法文集』(PATECH企画)が好みです。

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 事務所で使用する六法は、弊所では『判例六法Professional』が多数派です。装丁がかっこいいですしね。もっとも、仕事ではこのレベルの六法にも載っていない法令を調べることも多く、結局インターネットが頼りだったりします。

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3 ネットでも入手できない特許施行規則様式

 ではインターネットは万能かというと、そうはいきません。知財関係では、特許法施行規則の「様式」は政府の法令データ提供システムで出てこないので、『工業所有権(産業財産権)法令集』(発明推進協会)が必要です。

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 この「様式」は、特許庁への提出書類について定めたものなので、弁理士の先生方はともかく、弁護士にとって使用頻度は多くないのですが、〔備考〕の記載が準備書面作成でこちらの主張を強化するのに役立つことがあります。

 

4 小林弁護士が改訂を熱望する知財六法

 ちなみに、私が入所した頃、有斐閣の知的財産法判例六法を小林弁護士が買ってくれ、これで条文を引きながら判例を覚えるように、と指導を受けたのですが、残念ながら改訂がされないままになっています。

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 三省堂からも知的財産権六法という同種の六法があり、こちらは改訂されてはいますが、判例が条文のすぐ後ろに掲載されていません。そのため、お目当ての判例と条文をセットで読むことができないのが難点です。有斐閣知財判例六法の改訂がないのがよほど残念なのか、小林弁護士は、なじみの法律専門書店に行くと、有斐閣の知財六法の改訂は計画されていないのか、としきりに聞いています。

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投稿者: 小林・弓削田法律事務所

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