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弁護士業務と国語辞典

2015.05.22 Fri
  • 弁護士/河部 康弘

1 国語辞典と弁護士業務

こんにちは、河部です。

小説・映画で『舟を編む』が話題になったりしていて、以前はあまり注目されなかった国語辞典に少しだけ目が向けられているような気がしています。

今回は、そんな国語辞典を例にとって、あまり気づいてもらえない弁護士業務における地味な努力をご紹介したいと思います。

2 訴訟における国語辞典の提出

国語辞典が証拠として裁判所に提出される場合、岩波書店の『広辞苑』が提出されることが圧倒的に多いですが、細かなニュアンスを伝えたい場合など、『広辞苑』が最適でない場合もあります(私の主観ですが、『広辞苑』は必要最小限だけを記載していて、細かなニュアンスには踏み込んでいないイメージです。)。

サンキュータツオ著『学校では教えてくれない!国語辞典の遊び方』が各国語辞典の性格に踏み込んでいて勉強になるのですが、同じ日本語を説明していても、国語辞典によってその説明の仕方は結構異なります。

その違いをうまく使って主張を組み立て、また逆に揚げ足を取られないようにするため、私が国語辞典の記載を証拠として提出するときは、複数の国語辞典を引き、その事案に一番適した国語辞典の記載を提出しています。

微妙なニュアンスが重要な場合は多数の辞書を引いて一番適した辞書、揚げ足を取られる危険に配慮し守りに徹する場合は『広辞苑』、といった具合です。

3 複数の『広辞苑』

小林・弓削田法律事務所には、広辞苑だけで、『広辞苑第四版』、『広辞苑第五版』、『広辞苑第六版』の3つが置いてあります。最新のものだけ残して残りは捨ててしまえば、と思われるかもしれませんが、これには理由があります。

特許訴訟においては、特許請求の範囲に記載された文言の意味解釈が問題になることが多いのですが、意味解釈は、出願当時の意味を基準として行われます。

分かりにくいと思うので、卑近な例を挙げて説明してみます。

昔は「ヤバい」という言葉が否定的な場合にのみ使われていましたが、最近は肯定的な意味でも使われています。出願日が古い特許で「ヤバい」が使われていたら、否定的な意味だと解釈しなければなりませんが、最近出願された特許で「ヤバい」が使われていたら、肯定的な意味で解釈した方が正しい場合もあり得るということです。

言葉の意味が変わるのには時間がかかり、版が変わっても『広辞苑』の記載は同じことがほとんどですが、出願時点で出版されていない『広辞苑』に則って主張することは、理論的に正しくない(と相手に突っ込まれる余地を与えない)ため、特許の出願日に応じて、提出する『広辞苑』の版を変えているのです。

4 地味に努力しています

このように、誰にも気づいてもらえないだろうなと思いながら、プロの矜恃で行っている地味な努力は、結構あります。いつか報われると信じて…       (河部)

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