弁護士ノート

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ガーシュインの楽曲の著作権管理再開に学ぶ共同著作物の特殊性

2021.11.18 弁護士:小林 幸夫 エンターテインメント法

1 アメリカの作曲家ジョージ・ガーシュインとその楽曲の存続期間
 みなさんは、アメリカの作曲家ジョージ・ガーシュインの楽曲は聞いたことがあるでしょうか。当方はクラリネットの独奏から始まる「ラプソディ・イン・ブルー」というピアノと管弦楽の曲が大好きです。彼は1937年に38歳の若さで死亡していますが、数多くの名曲を産みだしていました。1937年に死亡しているので、3794日の戦時加算をしても1998年に死亡後50年(当時の著作権法では死後70年ではなく50年で存続期間が満了していました)経過しているので彼の楽曲はすべてパブリックドメインとして無料で利用できることとなっていました。

 ところが、彼の兄(アイラ)や他の兄弟から、実は共同著作物であるから存続期間が残っているという主張をアメリカその他の国に述べていました。そして、日本の彼の楽曲を管理していたJASRAC(一般社団法人日本音楽著作権協会)は、提出された資料をもとにこの主張を認め、楽曲の管理、つまり著作権利用料を来年から徴収すると発表したのです。全部の楽曲ではない点、兄アイラの二人だけの楽曲ではない点に注意が必要です。詳細はJASRACのプレスリリースをご覧下さい。以下の図は兄アイラとの共有著作物に関する存続期間計算図です。
https://www.jasrac.or.jp/smt/release/21/09_1.html


 

2 共同著作物の特殊性と著作物利用に関する今後の注意点
 ここで共同著作物の効果としての特殊性について確認したいと思います。

 第1に、著作者人格権の行使は全員の合意が必要であること、第2に著作権の持分の処分だけでなく、著作財産権の行使においても全員の合意が必要であること。したがって、共著による書籍(初版1000部だとして)をさらに1000部増刷する場合も全員の同意が必要となります。第3に存続期間は死後70年(51条2項)ですが、共同著作物の場合は、最後に死亡した著作者の死後70年という点です。

 ただ、ガーシュインのように一旦存続期間が切れたと思われた著作物が後日共同著作物であることが判明して存続期間の計算が変更し、復活したという実例は聞いたことがありませんでした。

 今後、他人の著作物を利用する際には、単独の著作物か共同著作物か、共同著作物の可能性がないか、共同著作物とした場合は共同著作者全員の生存の有無を十分調査する必要が出てきそうです。

所長 弁護士 小林幸夫

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