弁護士ノート

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商標的使用をしないと不使用取消しされる? ~不使用取消手続における商標的使用の要否~

2026.10.01 弁護士:山田 亮 著作権法

1 はじめに
 知財訴訟に携わっていると、“商標の不使用取消に関する審決取消訴訟の裁判例は、商標的使用が必要か否かについて判断が分かれており、錯綜している” と聞くことがあります。
 そこで今回は、裁判例が本当に錯綜しているのかを検証し、裁判例の傾向を明らかにした上で、その傾向の当否に迫ります。
 四月掲載のブログでは、裁判例を読む際に事案を分析することの重要性を説きましたが(裁判例を「読む」ということ――タオル絵柄の著作物性を認めた事例を題材に)、今回はその各論です。

2 裁判例の趨勢
 まず裁判例は、“商標が商品又は役務の出所を表示し、自他商品又は役務を識別するものと需要者等において認識し得る態様で使用されること”を必要とする立場(必要説)と、“何らかの態様で使用されていれば足りる”とする立場(不要説)”に分かれており、たしかに錯綜しているように思えます。
 もっとも、不要説に立つ裁判例のほとんどは、識別力の強い商標が、記述的に、すなわち商品又は役務の内容を説明するために使われている事例であり、「使用」(商標法50条1項)を緩やかに肯定しています。例えば知財高判平成27年11月26日[アイライト] ⅰや知財高判令和8年6月29日[たべるん]ⅱ等は、まさにそのような例です 。ⅲ
 他方、必要説に立つ裁判例は、識別力が弱い商標の「使用」が問題となった事例です。例えば、知財高判平成31年1月29日[QRコード]ⅳは、使用態様を吟味して「使用」を肯定し、知財高判令和4年2月9日[知本主義]ⅴ は、使用態様を吟味して「使用」を否定しました。ⅵ

QRコード事件の使用商標の一部。「QRコード」の語は、普通名称化しており識別力が弱いが、識別機能を発揮する態様で使われている。

 したがって、裁判例は、①識別力の強い商標が、記述的な使われ方をしている事例では、不要説的に考えて緩やかに「使用」を認め、②商標の識別力が弱い事例では、必要説的に考えて「商標的使用」という高いハードルを課し、使用態様を吟味する、という傾向にあると整理できます。

3 検討
 では、裁判例の上記傾向は妥当でしょうか。
 商標法50条の趣旨は、使用を通じた信用の蓄積がない商標の登録を取り消す点にあります。
 本来的に識別力が強い商標は、たとえ記述的に使われていても、需要者の目を惹き、信用が蓄積されますから、商標的使用がない場合に「使用」を認めても、同条の趣旨に悖ることはありません。
 他方、本来的に識別力が弱い商標は、ロゴ化されるなどの商標的な使い方をしない限り、需要者の目を惹かず信用が蓄積されませんので、使用態様における識別機能の発揮、すなわち商標的使用を必要とするべきです。
 したがって、信用基準説と評し得る裁判例全体の傾向は、50条の趣旨に適合するものであり、妥当であるといえます。

4 結びに代えて
 以上のとおり、「使用」の認定判断では、商標それ自体又はその使用態様において、識別機能を発揮していること(信用の蓄積)が求められています。
 識別力が本来的に弱い商標については、ロゴ化したり、強調してⓇマークを付けたりするなど、万全な不使用取消対策が必要です。

弁護士 山田 亮

※ⅰ 判例時報2296号116頁。商標「アイライト」の文字が、個装箱に貼付されたラベルに白抜きで表示。
※ⅱ 裁判所ウェブサイト(令和 8 年(行ケ)第 10009 号)。商標「たべるん」の黒色文字が、被告ウェブサイト上のキャラクター図形の直下に記載。
※ⅲ その他、知財高判令和7年2月27日(令和6年(行ケ)第10087号)[UNBRAKO]など。
※ⅳ 裁判所ウェブサイト(平成30年(行ケ)第10059号)。商標「QRコード」の赤色文字等が、カタログに記載。
※ⅴ 裁判所ウェブサイト(令和3年(行ケ)第10076号)。書籍の表紙等に「知本主義の時代を生きろ」等と、商標「知本主義」の文字を用いた表現が記載。
※ⅵ その他、知財高判平成 27 年 9 月 30 日裁判所ウェブサイト(平成 27 年(行ケ)第 10032 号)[ヨーロピアン]など。

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