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先日、五月会創立60周年記念誌にて、私がお世話になった田宮甫先生(私が最初に所属した法律事務所の所長)からの教えや学びについて、寄稿させていただきました。先生との関わりの中で印象に残っていることや、現在の自分にも生きている大切な示唆を振り返った内容となっております。
本ブログでは、その中から一部を抜粋してご紹介いたします。
最近、若手弁護士を主な対象とした講演を依頼されることがあり、以下のような弁護士川柳を紹介しました。実際は田宮先生からの教えを川柳のような形式にしただけなのですが。

本ブログでは、2『初動が8割、あと2割。=最初の面談でがっちりつかめ』をご紹介します。
これは、依頼者との最初のミーティングが重要であることと、初動の動きで事件受任の8割は確実ということです。依頼者から最初の相談があった場合「では後日検討して回答します」ではだめだ、それでは仕事は取れないということです。
入所して5年目のとき、大企業の依頼者が来られた際、先生は話を聞くなり、「よし、分かった、これから現場に行こう」と言い出しました。私は「今からですか?今日は4件(先生から指示を受けた件)の裁判期日があるので難しいです、後日にしませんか」と言ったのですが、「何を言っているんだ。今すぐだ」ということで、その場で現場に向かいました。4件の期日対応は他の先輩弁護士にお願いしたのです。現場は広大な土地で複数の問題が絡む案件でしたが、当事務所で受任することになりました。
後日聞いたところによると、依頼者は複数の顧問弁護士に相談し、その後方針を決めて担当してもらう事務所を選ぶ予定だったそうです。しかし田宮先生が即座に現場へ向かい、すでに事件に着手したことで、そのまま当所が受任することになったという訳です。当時の私は、田宮先生の意図が全く分からず、なんで人の予定を勝手にひっくり返すかなあと思っていました。しかし、初動を迅速にしないと、仕事は来ないということです。自分が独立して数年経過して初めて田宮先生の意図が理解できました。
なお、この不動産事件は2、3年かかりましたが解決し、同土地は超高級住宅街として生まれ変わりました。依頼者に呼ばれて田宮先生とその現場に立ったときの喜び、感激は忘れられない思い出です。
思い返せば、「よし、今から現場へ行こう」という田宮先生の一言から始まり、そこで全てが決まったのかもしれません。当方に新しい案件が来た際、事務所の弁護士に「現場に行こう」「現物を見よう」と声をかけるたびに、田宮先生のことを思いだします。全然田宮先生のような迫力はないのですが。
弁護士 小林 幸夫
