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近年、民事訴訟手続のデジタル化が段階的に進められてきましたが、令和8年5月21日より「フェーズ3」と呼ばれる段階に移行します(参考:フェーズ2)。
フェーズ3の特徴は、mints(民事裁判書類電子提出システム)を利用し、訴状や準備書面、証拠、裁判所からの送達書類が原則として電子データ(電磁的記録)として管理・閲覧される点にあります。最も大きな変更点は、電磁的記録に記録された情報の内容に係る証拠調べ、いわゆる「電証」の新設です。
従来の民事訴訟では、電子データは紙資料の補助的な位置づけにとどまり、最終的な訴訟記録は紙を前提として構成されてきました。原本自体が電子データで作成されていても、証拠として提出する際には紙媒体として証拠調べが行われることが一般的でした。
これに対しフェーズ3では、紙媒体であっても原則として電子データ化して提出し、原本性が問題となる場合にのみ原本の証拠調べが行われるという実務が予定されています。
知財訴訟では、特許発明の内容や被告製品の構造の説明など、文章だけでは理解しにくい内容が多分に含まれており、色分けをする等の視覚的な理解が重要となる場面が少なくありません。
フェーズ3の下では上記の「電証」によって、技術説明資料、製品画像や構成比較表、動画データといった電子データ自体が証拠となります。そのため、裁判官が主要な証拠を印刷された紙媒体ではなく電子データとして画面上で閲覧することを前提に、見やすさや分かりやすさを意識して資料作成をすることが、これまで以上に重要になると考えられます。
このように、フェーズ3への移行による訴訟記録の電子化は、単なる利便性向上にとどまらず、法律事務所における訴訟資料の作成方法や、裁判所における訴訟記録の把握の仕方が変わることを意味します。
当事務所では、知財訴訟を主要な取扱分野の一つとして、制度改正や裁判所の実務運用を踏まえた訴訟対応に継続的に取り組んでおります。フェーズ3への対応や、将来の紛争を想定した資料整理の在り方についても、状況に応じた助言を行ってまいります。
※本記事は、本日時点の民事訴訟デジタル化(フェーズ3)に関する弁護士会の研修の内容に基づいて作成しております。
弁護士 平田 慎二
