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【判例紹介】住宅地図の著作物性

2022.08.01 Mon
  • 著作権法
  • 弁護士/弓削田 博

住宅地図の著作物性を巡る新判決
 令和4年5月27日、東京地方裁判所民事第29部(知的財産部)は、原告である株式会社ゼンリンの住宅地図に著作物性があることを認め、被告らに対して著作権侵害行為の差止めと損害賠償の支払いを命じました(なお、弊所は本件の原告代理人を務めさせていただきました。)。東京地判令和令和4年5月27日(令和元年(ワ)第26366号)
 住宅地図の著作物性に関しては、これまで、富山地方裁判所が昭和53年9月27日に言い渡した判決が代表例とされておりました。しかし、同判決は、先例としては年代的にいささか古く、また、東京地裁の知的財産部や知財高裁といった知財専門の裁判所の判断ではなかったため、知財専門の裁判所による新たな判断が待たれていました。今回の判決は、まさにその待望の判決です。

本東京地裁判決の事案
 本件の被告らは、原告であるゼンリンが作成・販売した住宅地図をコピーし、それを切り貼りするなどしてポスティング業務を行うための地図を作成する等の行為をしていました。そこで、原告であるゼンリンは、被告らのこうした行為が住宅地図の著作権侵害行為にあたるとして、侵害行為の差止めと損害賠償を求めて被告らを提訴しました。

住宅地図には著作物性がある
 被告らの反論は多岐にわたるのですが、被告らが住宅地図の著作物性を争ったために、東京地裁は住宅地図の著作物性を真正面から判断し、次のように述べてこれを肯定しました。

「本件改訂により発行された原告各地図は、都市計画図等を基にしつつ、原告がそれまでに作成していた住宅地図における情報を記載し、調査員が現地を訪れて家形枠の形状等を調査して得た情報を書き加えるなどし、住宅地図として完成させたものであり、目的の地図を容易に検索することができる工夫がされ、イラストを用いることにより、施設がわかりやすく表示されたり、道路等の名称や建物の居住者名、住居表示等が記載されたり、建物等を真上から見たときの形を表す枠線である家形枠が記載されたりするなど、長年にわたり、住宅地図を作成販売してきた原告において、住宅地図に必要と考える情報を取捨選択し、より見やすいと考える方法により表示したものということができる。したがって、本件改訂により発行された原告各地図は、作成者の思想又は感情が創作的に表現されたもの(著作権法2条1項)と評価することができるから、地図の著作物(著作権法10条1項6号)であると認めるのが相当である。」

著作権侵害による損害額
 本件東京地裁判決は、著作権侵害による損害賠償請求権についても認めているので、この点についても簡単に触れたいと思います。
  原告各地図の著作権の行使につき受けるべき金銭の額に相当する額 1頁当たり200円
  被告会社による原告各地図の複製頁数 96万9801頁
  原告の損害額 1億9396万0200円
  弁護士費用相当額 1900万円
 東京地裁は、上記のとおりの認定を行い、原告であるゼンリンに生じた損害額は合計で2億1296万0200円であると判断しました。
 同じ知財訴訟でも、特許権侵害事件であれば2億円を超える損害賠償額が認められることも珍しくありませんが、それに比べて高額な損害賠償額とはなりにくい著作権侵害事件で2億1296万0200円もの損害賠償請求が認められた珍しいケースと言って良いと思います。

本件のゆくえ
 被告らは、本件東京地裁判決を不服として知的財産高等裁判所に控訴しました。控訴審で和解が成立するのか、はたまた知財高裁の判断が下されるのか。守秘義務に違反しない範囲でお話しできるような結果が出ましたら、またブログに書いてみようと思います。

弁護士 弓削田 博

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