弁護士ノート

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現在の司法修習事情②〜司法試験受験生の就活と修習準備〜

2022.09.16 弁護士:平塚 健士朗 その他の知的財産関連業務

1.はじめに
 前回は、司法修習の概要について紹介しました。今回からは、現在の司法修習の具体的な話に入ろうと思いましたが、ちょうどこの記事を書いているタイミングで司法試験の合格発表がありました。

 そこで、司法試験受験後の受験生(就活生)の生活について紹介したいと思います。あくまで一個人の感想程度の話なので、話半分に読んでもらえればと思いますが、合格者の皆様や未来の合格者の皆様、また、そんな方々の採用を考えている事務所・企業の方々の参考になる部分があれば幸いです。

 2.司法試験受験後、合格発表前のモラトリアム期間(就職活動開始)
 ⑴ 大手事務所が採用活動を開始!
 司法試験の受験が終わると、多くの受験生は、就活を始めることになります(サマクラなどで既に就職先が決まっている人もいます。)。私の年は、8月に試験が行われたので、その頃から就活が始まっていたように思います。

 私の知る限り、比較的規模が大きく、毎年一定数の新人を採用する事務所は、このタイミングで採用活動を行っていました。この時期は、まだ就職先が決まっていない受験生が多くいるので、採用することが決まっているのであれば、事務所側にとっても採用活動を行うのに良い期間なのだと思います。

 そのため、大手の企業法務事務所に行きたい受験生は、この期間に積極的に就活をしていました。とはいえ、一日中就活ということでもないので、この期間は、遊んでいる時間が多かったと思います。

 ⑵ 就活生にとって大切な、事務所の情報収集方法
 ところで、就活をする上では、当然、事務所の情報を得る必要があるわけです。しかし、基本的に法律事務所はブラックボックスで、情報を得る機会は、説明会・事務所のHP・サマクラ・エクスターン等に限られます。説明会・サマクラ・エクスターンを実施する事務所は全体の数から見れば決して多くないですし、事務所のHPから得られる情報など大抵の事務所で皆無に等しいです。そのため、就活生は、規模や業務分野程度しか、事務所の情報が得られないのです。

 では、説明会等がなければどこで情報を得ればよいのかというと、エントリー後の初回面接です。書類審査通過が前提のなんとも乱暴な回答ですが、ここが最も情報を得られる機会です。そのため、少しでも興味を持った事務所があれば、取り敢えず応募して話を聞いてみるのもありだと思います。就活生にとっては、エントリーシートの書き方から面接での対応、さらには今後の面接での質問事項まで学べる良い機会なのでおすすめです。

 法律事務所の面接は、一般企業の面接とかなり違うということはよく言われることで(一般企業の就活はしたことないですが、ガッツリ質問されるような事務所はほとんどなく、終始雑談ないし就活生が質問する事務所が多かった印象です。)、それを経験できるのは、今後本当に入りたい事務所が出てきたときのためにも、かなり貴重な機会だと思います。

 ⑶ この期間は、人生最後の夏休み!?
 また、私は、この期間に、ロースクールの制度を利用して、リサーチペーパー(題名:「同人誌(二次創作)・コスプレと著作権の関係及び今後の展望」)という簡単な論文を書いていました。せっかく時間があるのだから、好きな知財の研究をしてみようと始めたことですが、大変ではあったものの、とても勉強になりました。小泉先生や奥邨先生には、ただでさえ忙しい中、私のリサーチペーパーに付き合っていただいて、非常にありがたい気持ちです。

 私の年は、ちょうどコロナが全力を出していた頃なので、あまり動き回ることができませんでしたが、就活生は、この期間が最も時間を自由に使えるので、自分のやりたいことを思い切りやっていただければと思います。

3.司法試験合格発表!司法修習に向けた準備
 ⑴ 最低限、修習の手続だけは忘れずに!
 司法試験の合格発表があると、周りの人に合格の連絡をしつつ、一気に司法修習の準備を進めなければなりません。提出書類の準備や引っ越し、導入修習の予習など司法修習関係だけでもやらなければならないことがぽこぽこと湧いてきます。特に、提出が必要な書類の期限はかなり短いので、周囲の合格者と連絡を取りながら、しっかり期限内に提出することが大切です。最低限これさえやれば、あとはなんとかなるでしょう。

 ⑵ 修習地は好きな場所がおすすめ
 また、このときに修習地の希望も提出することになるので、あらかじめ決めておくといいかもしれません。最近は、面接をオンラインで行える事務所がほとんどなので、少なくとも東京やその周辺での就職を希望しているのであれば、好きな場所に希望を出して良いと思います。最終面接だけは事務所にて対面で行うところが多いですが、就活で修習を休むことは研修所に認められているので、全く問題ありません。

 1年間修習地で過ごすことを考えて、行ってみたい場所に出すのがおすすめです。もっとも、地方での就職を希望しているのであれば、就職したい土地で修習するのが圧倒的に有利なので、就職希望地を第1希望にすることをおすすめします。これは単に距離が近いから有利という話ではないので、ぜひ第1希望に。

 ちなみに私は、第1希望から順に名古屋、京都、奈良、金沢、函館、富山で希望を出しました。ただ、全く一貫性のない希望だったからか、私が若かったからか、これらのどの場所にもあたりませんでした。しかし、それでも修習はとても楽しく、その土地も楽しむことができたので、仮に希望の修習地に当たらなかった場合でも、楽しむ気持ちを忘れずに修習に臨むと良いと思います。

 ⑶ 就活第2シーズンは、小規模事務所が採用活動開始!
 また、合格発表直前では一旦落ち着いていた採用活動が、このタイミングで再度活発になります。ここでは、小規模な事務所が採用活動を始めていた印象です。小規模な事務所がいいという人は、ここで本格的に就活を始めることになります。

 私はというと、なかなか希望するタイプの事務所が採用活動を行わないので、それに近い事務所に応募しつつ、希望するタイプの事務所の先生に直接メールを送って採用してもらえないか聞いていました。突然のメールにも関わらず、少なくない先生から返信をもらえて、直接対面ないしメールで相談に応じていただけました。大変ありがたいことです。

 修習生であれば、忙しい中時間を作ってくださる先生もいるので、もし入りたい事務所に強い希望があるのであれば、メールしてみると良いかもしれません。採用には至らなくとも、自分がやりたい分野の先生の話を聞ける機会はとても得難いものだと思います。

 ⑷ 修習に向けた準備
 この期間は何かと忙しいですが、そうこうしているうちに、修習地の決定通知が届きます。私の年は、最初の導入修習がオンラインだったので、私は、導入修習が始まる前に修習地に引っ越しをしました。今年は和光での導入修習が決まったようですが、導入修習中は比較的忙しいので、引越し先だけでも導入修習前に決めておくと良いかもしれません。基本的には、裁判所の近くに家を借りることになると思いますが、検察庁にも通うことを考えると、裁判所の位置、検察庁の位置、生活のしやすさ等を踏まえて、家の場所を決めるのがベターです。

 また、導入修習直前に白表紙という修習で使用する本が大量に送られてきます。それに加えて、大量の予習範囲も伝えられます。これまでの司法試験とは違う実務に関する問題なので、時間がかかるかもしれませんが、修習予定者は頑張ってください。

 4.おわりに
 今回は、司法試験後から司法修習が始まるまでのことを紹介しました。なんとなく書いている途中から受験生・合格者向けの記事になってしまいましたが、それ以外の方も、現在の司法試験受験生が受験後こんな流れで司法修習に向かって行くのだなあと面白がってくれれば幸いです。次回は、ようやく司法修習の話に入っていこうと思います。

(平塚)

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