弁護士ノート

lawyer notes

新しいタイプの商標

2015.04.02 弁護士:河部 康弘 商標法

1 平成26年特許法等改正法の施行

こんにちは、河部です。今回は、知財事務所らしく、最近施行日を迎えたホットな話題、新しいタイプの商標について少し触れてみたいと思います。

昨日、平成26年特許法等改正法が施行されました。特許法の関係では特許異議申立制度が創設されましたが、こちらよりも話題性があるのは、新しいタイプの商標の保護制度創設ではないでしょうか。少し前の日経新聞などにも、記事が掲載されていましたね。

2 新たに登録できる商標の種類

新たに登録ができるようになったのは、①動き商標、②ホログラム商標、③色彩のみからなる商標、④音商標、⑤位置商標、の5つです。

3 新しいタイプの商標の訴訟を担当するとしたら…

⑴ 新しいタイプの商標についての起案

弊所では基本的に出願代理は行っておりません(出願関係についてご相談をいただいた場合、お話を伺った上で、小林弁護士の豊富な弁理士人脈を駆使し、ニーズに合った最適な弁理士の先生をご紹介しています。)ので、施行後すぐに新しいタイプの商標を取り扱うことはなさそうです。しかし、今後、無効審判や審決取消訴訟、侵害訴訟のご依頼があるかもしれません。

その場合、私のような起案担当のアソシエイト弁護士は、新しいタイプの商標の類否を論じなければならないという課題に直面します。

⑵ どう表現するのか?

①動き商標や②ホログラム商標については、動いている、見る方向によって違うという特徴があるとはいえ、場面場面を切り取れば(商標法審査基準〔改訂第11版〕の10〜12頁あたりの記載を見ても、場面場面を切り取って類否を判断することが想定されているように思います。)、外観・観念・称呼+取引の実情という氷山印事件(最高裁昭和43年2月27年判決、昭和39年(行ツ)第110号)の判断基準を用いて今までどおり表現できそうです。

⑤位置商標であれば、意匠法、特に部分意匠の類否判断の判例などを参考にすれば対応できる気もします。

しかし、③色彩のみからなる商標、④音商標の中でも言語的要素を用ないものは、なかなかの難題です…

色彩が似ているか似ていないか、音が似ているか似ていないかを検討する場面は、他の知的財産分野でもお目にかかったことがありません。いざ起案に直面したら、大いに悩みそうですね(^_^;)

※ 色彩については、同一の場合しか保護されないという改正商標法70条4項の規定を見落としていました。「似ているか似ていないか」ではなくて「同じか同じでないか」になります。

4 事案は少ないかも

初期の事件は実例として重宝されるでしょうし、私も知財弁護士の端くれとして是非とも早く手がけてみたい事案ではあります。

しかし、③色彩のみからなる商標や、④音商標のうち言語的要素を用いないものは、原則として登録されないことになっています(商標法審査基準〔改訂第11版〕34頁〜35頁)。登録が拒絶された場合の査定系審判は出願代理をした弁理士の先生がそのまま担当される場合が多いですし、我々が担当することが多い当事者系審判や審決取消訴訟、侵害訴訟の案件は、登録の絶対数が多くないと事件数も伸びません。

残念ながら、私が起案を担当するのはもう少し先のことになりそうです。 (河部)

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