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髙部判事の講演③

2017.03.21 Tue
  • 特許法
  • 知的財産訴訟
  • 弁護士/河部 康弘

1 特許についての講演

ブログの更新が滞っている間に、特許権関係訴訟についての講演にも出席しました。

2 記載要件違反は認められにくい?

今回の講演で印象に残ったのは、「記載要件違反の主張については、よほどのことがない限り、特許庁における判断を尊重する」旨の発言をなさっていたことです(受講から時間が経っており、細かなニュアンスは違っているかもしれません。)。

3 『パテント』の記事にも

この点については、『パテント2016 Vol.69 No.3』の記事になっている清水節現知財高裁所長の講演録にも言及があります。

すなわち、清水判事は、「なお、私自身は、いったん成立した特許について特許法36 条6 項1 号又は2 号の明確性、サポート要件違反により無効と判断することは、例外的と考えています。特に明確性要件について、査定系はともかく、無効審判においては、当業者に準ずる特許庁の審査官が不明確でないとし、多少の文言上の不一致や、技術的にやや不明なところがあっても一応理解できて特許にしたのだから、無効にしなければならないということは、例外的だろうと思います。重箱の隅をつつけば、明細書に不備な記載は見つかるかもしれませんが、そのようなことで、一度特許にしたものを無効にすることは余りよいことではないと思います。ただし、個人的な意見なので、必ずしも裁判官に共通するものではありません。実際にも36 条違反のみで無効の抗弁が成立した事例は余りないと思います。進歩性もない事例について、36条についても、この際判断しておこうという場合はありますが、やはり無効の抗弁は、進歩性、新規性で勝負するのが本筋だと思います。また、個人的には、36条違反を余りたくさん主張すると争点が拡散しますので、なるべく無駄な論点は増やさないでいただきたいと思います。知財事件に限らず、一般に民事系の裁判官は、根拠の薄い論点で争点を拡散させないでほしいと考えています。」として、個人的な意見であるとはしながらも明確に述べています。

髙部判事も同趣旨の発言をなさっていることからすると、これが知財裁判官の基本的な考え方なのかもしれません。侵害訴訟では必ずと言っていいほど無効論主張をすることになりますが、この点も踏まえて、どこまで記載要件違反の主張をするか、よく検討する必要がありそうです。

(河部)

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