弁護士ノート

lawyer notes

鉱業法

2017.03.24 弁護士:河部 康弘 一般企業法務

1 鉱業法の簡単な紹介

随分前に我妻先生の基本書『鉱業法』をブログで取り上げたところ、実際に鉱業法のご相談をいくつかいただきました。そこで、簡単にではありますが、鉱業法の中身を取り上げてみたいと思います。

2 土地を所有していても鉱物は採掘できない

鉱業法を勉強して一番驚く部分は、たとえ土地の所有権を有していても、鉱業権を有していなければ採掘が許されない(一部例外はあります。)どころか、刑事罰に処されかねない(鉱業法147条1項)点です。

土地の所有権を有しているにもかかわらず、第三者が鉱業権設定登録を受けると、その土地の地下にある鉱物の権利は設定登録を受けた第三者のものになってしまうというのは、民法の世界とはかなり異なり、我々弁護士でも、きちんと鉱業法を学んでおかないと誤ったアドバイスをしてしまいかねません。

もちろん、鉱業権を取得したからといって勝手に他人の土地に入って良いというわけではなく、採掘するためには、土地所有権の問題は避けて通れません。鉱業法も、土地所有権との関係について、調整規程を設けています(鉱業法101条〜108条)。

3 鉱業権は「特許」

鉱業権は、国に許可を求め、国が許可をすることによって独占的な権利が発生する、行政法学的な意味での「特許」です。ちなみに、弊所の得意分野である特許法の「特許権」も、国が許可することである範囲の技術に独占権を与えるものであり、当然と言えば当然ですが講学上の「特許」に当たります。

土地を採掘する権利なので、土地を所有者から購入しなければならないように国から鉱業権を購入しなければならないようにも思えますが、特許権と同じで、鉱業権を購入する必要はなく、登録免許税を払うだけです。

しかも、特許権と同じく、早いもの勝ちとなっています(特定鉱物を除きます。)。

4 鉱業権の実施

鉱業法は、国の産業政策のための法律であり、国は鉱物を採掘して産業の発展に寄与してほしいと考えているわけですから、鉱業権の設定登録を受けるためには、その者が「鉱物の合理的な開発を適確に遂行するに足りる経理的基礎及び技術的能力を備えていること」(鉱業法40条1項1号)が要求され、また、鉱業権者は設定登録があった日から6か月以内に事業に着手しなければならない(鉱業法62条1項)とされています。また、事業に着手する際には、どのように採掘をするのかを示す施業案を提出し、経済産業大臣から認可を受けなければなりません(鉱業法63条2項)。

5 次回は平成24年改正

以上、簡単に鉱業法の特徴的な部分を説明させていただきました。次回は、平成24年の鉱業法改正について触れてみたいと思います。

(河部)

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