弁護士ノート

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種々の自動車エンジンの紹介

2020.01.31 特許法

前回に引き続き、自動車エンジンについてご説明いたします。今回は、実用化されているエンジンから研究段階のものまで、種々の自動車エンジンを紹介いたします。

1 ハイブリッドシステム(ストロングハイブリッド)
ガソリンエンジンとモーターから成るパワートレインにより、①発進・低速時はモーターで走行、②加速時・通常走行時はエンジンとモーターの両方で走行、③減速時はエンジンを停止させてモーターを回生ブレーキとして機能させる制御を行うものです。2018年度国内登録車販売ランキングの上位10車種中9車種をハイブリッドカーが占めています。

ハイブリッドシステムは、大きく分けて
(1)パラレル方式(エンジン・モーターが駆動系に直結したもの)
(2)シリーズ方式(モーターのみが駆動系に直結し、エンジンは発電用に使用されるもの)
(3)シリーズ・パラレル方式(エンジンの出力を発電用と駆動用に使い分けるもの)
の3つがあります。

図:代表的なハイブリッドシステム(clicccar.com【自動車用語辞典:電動化技術「ハイブリッド」】ウェブページ、株式会社三栄)

2 マイルドハイブリッド
駆動用のモーターを備えておらず、通常の自動車に搭載されている発電機(オルターネーター)を強化してモーターの役割として使うようにしたものです。
モーターやバッテリーを小さくできるため、コンパクトカーや軽自動車に採用される傾向があります。

3 ミラーサイクルエンジン
通常のタイミングよりも吸気バルブを早く閉じる(又は遅く閉じる)ことで、実質的な圧縮比を小さく抑え、膨張比だけをより大きくすることにより、少ない混合気から効率よく膨張圧力を取り出し、エネルギー効率の向上を実現したエンジンです。アトキンソンサイクルとも呼ばれています。
前述のハイブリッドシステムのエンジン等、低燃費車に広く採用されています。

4 ロータリーエンジン
ローターハウジング内をおにぎり型のローターが回転して4サイクルを行う方式のエンジンです。

図:ロータリーエンジン概要(カーセンサー「ロータリーエンジンで快適室内空間!家族全員で楽しめるスポーツカーRX-8」ウェブページ、株式会社リクルート)

ローターの円運動をそのまま回転運動として駆動系に伝達できるためパワーロスが少ない、部品点数が少なくコンパクトで軽量、というメリットがある一方、燃費が悪くオイル消費が激しい等のデメリットがあります。

5 ディーゼルエンジン

軽油を燃料とするエンジンで、ガソリンエンジンと異なり点火プラグを有しておらず、圧縮されて高温となったシリンダ内に燃料を霧状に噴射して自然着火させる方式です。ガソリンエンジンよりも圧縮比を上げることができるため、熱効率も40%〜50%と高いです。
1990年代後半からコモンレール方式が採用され、エミッション性能が飛躍的に向上した「クリーンディーゼル」が登場しました。

6 水素レシプロエンジン
ガソリンや軽油等の化石燃料ではなく、水素ガスを燃料とするレシプロエンジンです。
ガソリンエンジンと同じ構造が使えるためエンジン設計が容易な上に、排ガスがほとんど出ない(ほぼ水しか排出されない)という優れたエンジンですが、水素の漏れ防止やインフラ整備等の課題があります。

7 スターリングエンジン
シリンダ内のガスを外部から加熱・冷却し、ガスを膨張・収縮させることで仕事を得る方式のエンジンです。
存在し得る熱機関で最も高い効率で熱エネルギーを仕事に変換できる(カルノーサイクルに近い)エンジンと言われていますが、ガスのシーリング問題、ピストン(ディスプレーサーピストン及びパワーピストン)の摺動性向上など多くの課題が存在しており、未だ自動車エンジンとして実用化には至っていません。

(田仲)

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