弁護士ノート

lawyer notes

映画製作と法律相談

2021.08.26 弁護士:小林 幸夫 エンターテインメント法

私は新型コロナウイルスが発生する前は,映画をよく見ていました。映画を見終わった後,最後にスタッフの名前が記載されたエンドロールもじっくり見ていました。映画製作には多くの人の協力が必要であることが分かります。

実は当所も映画製作に関する法律相談を行っています。例えば,犯罪・刑事事件を題材とした映画の台本チェックです。手続的にありえない刑事訴訟法を無視したシーンを指摘し,修正を助言したことがありました。以前はいわゆる写り込みの事例(撮影したシーンにたまたま他の著作物が写っていた場合)の相談が多かったのですが,現在は著作権法30条の2「付随対象著作物の利用」によって適法性の条件が条文化され,この相談は減っています。その他,海外での撮影に際して現地労働組合(ユニオン)に所属するスタッフとの業務委託契約書のチェック,撮影場所(ホテル)との利用に際して締結する施設利用契約書のチェックなどがあります。
ちょっとイレギュラーな相談もありました。撮影隊のカメラのコード(かなり太い)が,「自分の車のドアにぶつかった。」とのクレーム処理,あるシーンに架空の携帯番号の表示を出したら,実在する電話番号だったなどです。原作者の承諾が得られなかったので,大幅に脚本を改訂し,翻案権侵害と言われないような脚本作成の助言という依頼もありました。女性弁護士の鞄はどんな鞄が相応しいのかと助監督から聞かれたこともありました。

これらの法律相談で重要なことは,回答のスピードです。電話で即答しなければならない場合もありますし,(撮影期間が短いので)1日で脚本を全部読んでその日のうちに回答する場合もありました。

このように映画制作に関する法律相談は,スピード感をもって取り組むので,緊張することがありますが大変やりがいのある業務です。そして最大のご褒美は,関与した映画の試写会に呼ばれ,映画のエンドロールに事務所の名前を見つけることです。ちょっとした相談をうけた映画のすべてに名前が掲載されることはありませんが,映画好きとしては関与した映画のエンドロールに載ることほど嬉しいことはありません。過去に掲載された映画を紹介しますと以下の通りです。
2003年製作 「ドラゴンヘッド」
2006年製作 「悲しき天使」
2007年製作 「LIFE 天国で君に逢えたら」
2016年製作 「ミュージアム」
そして来年公開予定の「TANGタング」にも関与しました。是非ご覧下さい。

これからもエンターテインメントの一つである映画に関与していきたいと思います。

所長 弁護士 小林幸夫

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