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審決等取消訴訟における審決等の結論に影響を及ぼす瑕疵

2022.02.10 Thu
  • 知的財産訴訟
  • 弁護士/平田 慎二

 審決取消訴訟¹において、原告の立場で主張を組み立てる際に、「審決等の結論に影響を及ぼすことが明らか」か否かという論点について、しばしば頭を悩ませることがあります。

 この論点を主張しなければならない理由は、特許法第181条第1項には、「当該請求を理由があると認めるときは、当該審決又は決定を取り消さなければならない。」と規定されているところ、審決等に実体的又は手続的な瑕疵²があったとしても、その瑕疵が審決等の結論に影響を及ぼすことが明らかでない場合は、審決等が取り消されないと解釈されているからです(最高裁昭和45年(行ツ)第32号同51年5月6日第1小法廷判決)。例えば、引用発明の認定変更があるという手続的瑕疵が認められたとしても、審査過程・審判過程において実質的に必要な議論が尽くされており、かつ、結論が変わらない場合には、その瑕疵が審決等の結論に影響を及ぼさないという方向に傾くことになります。また、審決等において相違点の看過があるという実体的瑕疵が認められとしても、看過された構成についても実質的に容易と判断されており、かつ、当事者双方も看過した構成を含めて議論を尽くしている場合には、その瑕疵が審決等の結論に影響を及ぼさないという方向に傾くことになります³。他方、発明の要旨認定、引用発明の認定、動機付け、阻害要因の存在についての認定に誤りがあるという実体的瑕疵が認められた場合には、容易想到性の判断を維持できないことが明らかですので、審決等の結論に影響を及ぼす方向に傾くことになります⁴。

 拒絶査定不服審判においては、審決が審査段階よりも詳細な認定を行うことが一般的ですので、引用発明の認定変更、一致点・相違点の認定の変更等がしばしば行われます。これらは、形式的には手続的瑕疵に該当しそうですが、認定が変更された部分な発明の構成との関係で重要でない場合には、結論に影響を及ぼすものではないと結論付けられる可能性があります。そのため、原告としては、瑕疵があることだけを主張するだけではなく、認定が変更された部分に係る構成が発明の重要な部分であること等を主張し⁵、結論に影響を及ぼすものと裁判所に認定してもらう必要があります。この主張をどのように組み立てるのかが、専門家としての腕の見せ所になります。

 また、審決等取消訴訟においては、原告が取消事由を主張し、被告が反論し、原告が再反論をしたところで、審理が終結するという流れが基本となっています。特に拒絶審決や取消決定に対する取消訴訟では、この基本の流れで審理が終結するケースが多くあります。そのため、原告が提出する第1回目の準備書面には、審決の実体的瑕疵及び手続的瑕疵を主張するとともに、その瑕疵が審決等の結論に影響を及ぼすことを網羅的に主張する必要があります。

平田


1 特許審判の審決や特許異議申立ての取消決定等(審決等)について不服がある場合、その取消を求めて、知的財産高等裁判所に訴訟を提起することができます。そして、審決に対する訴訟を審決取消訴訟といい、決定に対する訴訟を決定取消訴訟といい、両者はまとめて審決等取消訴訟と総称されます。

2 審決等取消訴訟においては、審判段階と同様に、新規性・進歩性等の特許要件について審理が行われますが、審決等取消訴訟の訴訟物は、審決等の実体上及び手続上の違法性一般であり、新規性・進歩性の存否等の特許性そのものではありません。そのため、審決等取消訴訟においては、審決等における特許性の認定・判断の誤りがあることを理由とする実体的取消事由のみならず、審決等における引用発明の認定変更、主引例の変更、根拠条文の変更があること等を理由とする手続的取消事由を主張することができます。

3 近時の裁判例についてみると、令和2年(行ケ)第10016号では相違点の認定誤りが、結論に影響を及ぼさないものとされています。

4 近時の裁判例についてみると、知財高判令和2年(行ケ)第10092号では引用発明の認定誤りが、知財高判令和2年(行ケ)第10032号、知財高判令和2年(行ケ)第10011号、知財高判令和元年(行ケ)第10079号及び知財高判令和元年(行ケ)第10080号では相違点の看過が、知財高判平成31年(行ケ)第10021号では訂正要件の判断の誤りが、結論に影響を及ぼすものとされています。

5 主張の例としては次のようなものが考えられます。「本件拒絶査定の理由は、……であるのに対し、審決の理由は、……であって、……が異なるものであり、原告には、……に基づく拒絶理由を回避するための補正をする機会はなかった。このような審査・審判手続の具体的経過に照らすと、……に基づく拒絶理由通知がされていない審決時において、原告の防御の機会が実質的に保障されていない。したがって、審判合議体は、特許法159条2項により準用される同法50条本文に基づき、新たな拒絶理由として、……に基づく拒絶理由を通知すべきであった。それにもかかわらず、上記拒絶理由通知をすることなく……した審決には、同法159条2項により準用される同法50条本文所定の手続を怠った違法があり、この違法は審決の結論に影響を及ぼすものである。」

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