弁護士ノート

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ルブタン事件被告商品を買ってみた

2022.04.22 弁護士:河部 康弘 Fashion Law 不正競争防止法 買ってみた

 最近、知財業界ではクリスチャン・ルブタンの「レッドソール」に関する不正競争防止法の判決が話題になっていますね。東京地裁令和4年3月11日判決・平成31年(ワ)第11108号事件です。

 この判決で面白いのは、「そして、前記認定事実及び第2回口頭弁論期日における検証の結果(第2回口頭弁論調書及び検証調書各参照)によれば、原告商品の靴底は革製であり、これに赤色のラッカー塗装をしているため、靴底の色は、いわばマニュキュアのような光沢がある赤色(以下「ラッカーレッド」という。)であって、原告商品の形態は、この点において特徴があるのに対し、被告商品の靴底はゴム製であり、これに特段塗装はされていないため、靴底の色は光沢がない赤色であることが認められる。そうすると、原告商品の形態と被告商品の形態とは、材質等から生ずる靴底の光沢及び質感において明らかに印象を異にするものであるから、少なくとも被告商品の形態は、原告商品が提供する高級ブランド品としての価値に鑑みると、原告らの出所を表示するものとして周知であると認めることはできない。」としているところです。
 ラッカーレッドこそが、クリスチャン・ルブタンの特徴であると判決自らが認めており、原告側の商品等表示の特定を、靴底のラッカーレッドに限定していれば、特別顕著性が認められていたのかもしれません(もちろん、原告側は類似性との関係でラッカーレッドを商品等表示として特定できなかったわけですが。)。

 しかし、判決37頁以降の被告商品の写真を見ると、靴底が若干光っていて、光沢があるようにも見えます。原告商品と比較しても、あまり変わらないような・・・

 やはり現物を見ないと。弊所では小林弁護士がよく弁理士会関東会の研修などで「三現主義」を強調していますので、弊所弁護士なら現物の確認は必須です。
 実際、判決も「第2回口頭弁論期日における検証の結果(第2回口頭弁論調書及び検証調書各参照)によれば」としており、検証を経て現物を確認していることが分かります。
知財訴訟の実務では、検証は裁判所内の事務手続が煩雑なためか裁判所があまり好まず、「事実上」という言葉で裁判上の手続に乗せずに期日において現物を確認するに留まることが多いのですが、この件ではあえて検証をしているわけです。

 ということで、かつてのコラム「『フランク三浦』を買ってみた」以来6年ぶりに、話題の事件の被告商品を購入してみました!
 楽天市場で見つかったのは被告商品の7です。1万8700円、ネタのためだけに買うにはちょっと高い、フランク三浦は5000円しなかったはず(^^;

 ルブタン本物(こちらは買っていません笑)と現物を見て比較すると、たしかに光沢感の違いは明らかなのですが、写真にすると思ったほど伝わらないですね。


 知財業界の方の中には、現物を見てみたいという方も多いと思います。実際にその目で見てみると、裁判所が「ラッカーレッド」として強調する意味が分かりますよ。

 しばらくは事務所に置いておくつもりですので、気軽にお声がけください!

河部

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