弁護士ノート

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写真の著作権侵害における損害の考え方

2025.05.13 弁護士:藤沼 光太 知的財産訴訟 著作権法

少し前ですが、弊所が写真の著作権侵害の原告の代理人を務めた裁判の判決がありました(東京地方裁判所令和5年5月18日(令和4年(ワ)第13979号))。
この裁判の争点は主として損害額の認定となりますが、著作権を侵害された写真延べ335枚の損害について、裁判所は、原告が参照すべきと主張していたamana imagesの料金表については主張を排斥しましたが、損害額算定にあたり写真素材サイト(PIXTA)の料金表を参照することには一定の合理性があるとして、写真1枚あたり6000円を損害として認定しました。

この損害について、同時期に写真の著作権侵害に関する興味深い裁判例が出されているので紹介いたします。

<SCANPANフライパンに関する画像の著作権侵害にかかる事件>
原審:東京地方裁判所 令和3年(ワ)第21922号控訴審:知的財産高等裁判所 令和5年(ネ)第10002号)

・事件の概要
原告は、被告のウェブサイトに掲載されたSCANPANフライパンの画像8枚(「本件画像①」〜「本件画像⑧」)について著作権(複製権・送信可能化権)侵害を主張し、損害賠償を求めました。

・裁判所の判断
 まず控訴審では、著作権法114条3項について次のとおり判断しました。
「著作権法114条3項によって、著作権者が著作権侵害によって受けた損害の額とすることのできる『受けるべき金銭の額に相当する額』の算定に当たっては、当該著作物の利用回数あるいは当該利用から生じた利益等の、当該著作物の直接の侵害行為の物理的な分量に従うのみならず、当該著作物の利用期間、利用態様、当該著作物から享受できる内容又は価値、侵害者の内心の態様(同条5項参照)、当該著作物を利用する市場の状況、他の者への利用許諾の状況等の諸般の事情を総合考慮して定めるべきものである。」

その上で、裁判所は、8枚の画像が一体として使用されるよう作成されていたことを考慮し、これらを一体のものと捉えました。さらに、これらが異なる7つのウェブページで掲載されていたにもかかわらず、ページごとに損害を算定することは適切ではないとして、総額5万円の損害を認定しました。

・注目すべきポイント
 この判例で注目すべき点は、以下の通りです。
① 著作権法114条3項の一般論を述べた点
② 新聞社などの画像の使用料にかかる証拠を参考にしなかった点
③ 異なるウェブページでの同一(ほぼ同一)の写真の使用につき、それぞれ損害を生じると認めなかった点

この中でも、異なるウェブページごとに損害が生じていないとするのは、複製権侵害及び公衆送信権侵害の個数の観点からも注目すべき点であると考えます。

 ちなみに、弊所が担当した裁判例では、重複する写真の損害について明確に争われていなかったことから、侵害された写真の延べ枚数により損害が認められました。もっとも、上記裁判例とは異なり、同一の写真を複数のウェブページで使用されていたとしても、使用目的や使用態様によっては、侵害された写真の延べ枚数にて損害が認められる場合があると考えます。

 ある知財部の裁判官から別の機会に話を聞いたところ、ライセンスを予定していない場合には、侵害された写真の撮影にかかった費用を損害として考えることもあるとのことで、写真の著作権侵害の損害の考え方については、今後も注目していきたいと考えております。

弁護士 藤沼光太

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