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昨今、生成AIの急速な普及に伴い、様々な分野で新たな法的課題が浮き彫りになっています。中でも、これまで一般的には権利としてあまり意識されてこなかった「声」に関しても、声優業界等を中心に無断学習・生成による問題点が強く指摘されてきました。
こうした状況を受け、先月7日、法務省から「肖像、声等の無断利用による民事責任の在り方に関する検討会取りまとめ報告書‐生成AIによるパブリシティ権侵害等に関する解釈指針‐」(以下「本指針」といいます。)が公表されました。
今回は、この解釈指針の概要と実務家としての所感をご紹介します。
1 解釈指針の概要
本指針は、まず「声」の保護に関する権利や法的根拠(パブリシティ権、肖像等をみだりに利用されない権利、不正競争防止法)について一般論を整理し、その上で具体的な想定事例を検討する、という構成になっています。
ここで重要なのは、本指針が「全く新しい法的ルール」を定めたものではなく、あくまで既存の法令や裁判例等を踏まえた現行法の解釈を整理・明確化したものであるという点です。
2 「声」を保護する権利や法律について
生成AIの問題においては、当初から画像や動画の無断利用が強く問題視されていましたが、「声の権利」については、生成AIの問題に限らず、これまで社会全体であまり意識されてこなかった傾向があります。
しかし法的には、有名な最高裁判例(最判平成24年2月2日・ピンク・レディー事件)で示されたパブリシティ権における「肖像等」に「声」も含まれ、法的に保護されるという考え方が従来から有力でした。
本指針でもこの趣旨が明記されており、さらに検討会において「(この点について)異論がなかった」とまで踏み込んで記載されています。あえてこのような強い表現が用いられた背景には、世間一般に対し「声の権利も法的に保護される」という事実を明確に周知する意図があると推測されます。
また、本指針では、パブリシティ権、肖像等をみだりに利用されない権利及び不正競争防止法について、それぞれ「どのような場合に権利侵害となるのか(侵害の基準)」や「権利侵害が認められた場合の効果」についてもわかりやすく解説されています。
3 想定事例について
本指針の後半では、生成AIを用いた肖像や声の無断利用に関する具体的な想定事例が挙げられ、その法的検討のプロセスが詳述されています。
単に事例と結論を羅列するだけでなく、結論に至るまでの思考過程が示されているため、今後同種の法律相談に対応する際にも大変参考になります。特に、事案の性質ごとに場合分けをして精緻な分析が行われている点は、実際の法的トラブルを検討・解決する上で非常に有益だと感じます。
4 結語
本指針は、現行法の解釈を整理したものであり、新たな権利を創設したものではありません。しかし、法的関係が改めて公式に整理されたことは、今後の法律実務において大きな指針となるものと思われます。
特に「声の権利が保護され得る」という原則が国から明示されたことで、今後社会全体で声の権利に対する意識が高まり、不当な権利侵害で苦しむ方が少しでも減ることを強く期待します。
弁護士 平塚 健士朗
