弁護士ノート

lawyer notes

改正個人情報保護法③

2016.12.16 弁護士:河部 康弘 弁護士:神田 秀斗 個人情報保護

1 個人情報とは

 改正個人情報保護法は、「個人情報」の定義をより明確にしています。では、そもそも現行法で「個人情報」とはどのようなものを指すとされているのでしょうか。現行法を理解すると、なぜ改正する必要があるのか理解できると思いますので、今回は現行法についてご説明し、次回、改正法でどのように「個人情報」の定義が変わったのかに触れたいと思います。

2 個人情報保護法における定義

 日常的に使われる「個人情報」という言葉ですが、個人情報保護法がこれを定義しています。

 その内容は、「生存する個人に関する情報であって、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができるものを含む。)をいう。」(2条1項)というものです。

 以下、詳しく見ていきます。

3 「生存する個人に関する情報」

 「個人情報」に該当するためには、「生存する個人に関する情報」であることが必要です。

 亡くなった方、歴史上の人物の情報は、「個人情報」になりません。

 誤解される方が多いのが法人の情報です。「個人」の情報ですから、法人の情報は個人情報に含まれません。

 この点も誤解が多いのですが、個人情報に該当するか否かは、公開されているか否かを問いません。プライバシー=個人情報という理解から、公開されていない私的な情報を個人情報と考えている方も多いのですが、例えば、フェイスブックやブログ等で氏名や生年月日が公開されていたとしても、それらの情報が個人情報であることに変わりはありません。

4 「当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの」

 この点は理解が難しいのですが、その情報により個人を特定できるか否かを「個人情報」の要件とするものです。

 例示されている氏名や生年月日はこれにより特定の個人を特定することができるため、個人情報の最たるものです。また、声や指紋、筆跡等も、一人一人異なるという意味で、個人を特定できる「個人情報」に該当します。

5 「他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができるもの」

 これは、その情報「単体」では個人を特定できなくとも、他の情報と容易に組み合わせられる状況では、個人を特定できる「個人情報」となりうることを規定したものです。

 具体的としては、よく携帯電話番号の例が挙げられます。携帯電話番号は、規則性のない数列であって、それだけでは誰の携帯電話番号か特定できません。しかし、事業者が携帯電話番号を氏名や住所と紐づけて管理していた場合、携帯電話番号と氏名や住所を照合すれば、特定の個人を特定できてしまいます。この場合、氏名や住所のみならず、「携帯電話番号」も個人情報になってしまうのです。その結果、「携帯電話番号」を本人の同意なく第三者に提供できません。

6 個人情報の不明確性

 以上のとおり、「個人情報」に該当するか否かは、その管理の状況等により変わります。

 これでは、事業者からすれば、どのような場合にどのような情報を「個人情報」として取り扱えばよいのか見通しが立たず、新しい事業を行うにあたっての障害となってしまいます。そこで、本改正で個人情報の定義を明確化することになりました(もっとも、実際に明確になっているかは要検討事項ですが・・・)。

 次回は、改正法の「個人情報」の定義に触れたいと思います。

(河部、神田)

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