弁護士ノート

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香港に弁理士はいるのか?

2026.07.01 弁護士:神田 秀斗 弁護士業務

結論:いません。

 これだけでは記事が終わってしまいますので、もう少し話を広げてみます。

1.香港における出願制度
 香港における知的財産(特許、商標及び意匠をいいます。以下、同じ。)の出願は、Intellectual Property Department(知識產權署)に対して行います。なお、著作権に関しては日本と同様に発生主義であり出願制度はありません。

 もっとも、冒頭の結論のとおり、香港における知的財産の出願に関しては代理人(agent)の資格に特に規制はありません。 

 唯一の代理人に関する規制としては、代理人が、
  ①個人である場合には香港に在住していること、
  ②partnershipや会社であれば香港で事業を営んでいること
 のみです。ソリシターが代理する必要もありません。

 すなわち、香港においては弁理士資格に相当する制度は存在せず、その他知的財産出願に関する香港政府公認の資格も存在しません。もちろん、クライアントにおいて、代理人に豊富な経験があるか否か、保険加入の有無などを事前に確認するほうがいいことは言うまでもありません。そのため、基礎出願を行う欧州、UK、中国において弁理士としての資格を有する者が香港でも活躍する例が多く見られます。

 なお、Intellectual Property Departmentのウェブサイトには、
  ①出願に際して知的財産に関する実務家を探すことができるウェブサイトのリンク、
  ②電子出願や知識產權署からの対応を電子で行うことができる事務所リストのリンク
 などが掲載されており、クライアントにおいて出願を検討するにあたって参照されます。

2.肩書規制
 The Patent Ordinance 2008 (Cap.514)は、香港において特許法に相当するものです。これは、1997年6月27日に施行され、その後、The Patents (Amendment) Ordinance 2016 (No 17 of 2016)によって以下の規定が追加されました。

144A. Prohibition on use of certain titles and descriptions
(1) A person must not, in the course of or in connection with the person’s business, trade or profession in Hong Kong, knowingly use or permit the use of a title or description specified in subsection (2).
(2) The title or description is—
 (a) certified patent agent;
 (b) registered patent agent;
 (c) certified patent attorney;
 (d) registered patent attorney; or
 (e) a title or description which may reasonably cause anyone to believe that the person using or permitted to use the title or description holds a qualification—
  (i) that is specifically granted for approving that person to provide patent
 agency services in Hong Kong; and
  (ii) that is recognized by law or endorsed by the Government.
(3) Subsection (1) does not prohibit a person from using, or from permitting the use of, a title or description that—
 (a) solely relates to the person’s qualification for lawfully providing patent agency services in a jurisdiction outside Hong Kong; and
 (b) clearly indicates the jurisdiction.
(4) A person who contravenes subsection (1) commits an offence and is liable on conviction to a fine of $500,000.

 上記条文の日本語訳は、以下のとおりです。

(1) 何人もその香港内の業務、取引又は専業、或いはそれらと関連する状況で、意図的に第2項に規定する名称・説明を使用、又は使用の許可をしてはならない。
(2) 名称又は使用は、以下のとおりである:
 (ア) 公認特許代理者(certified patent agent)
 (イ) 登録特許代理者(registered patent agent)
 (ウ) 公認特許弁理士(certified patent attorney)
 (エ) 登録特許弁理士(registered patent attorney)又は
 (オ) 名称や説明を使用、又は使用の許可を得た者が下記の資格を所持していると勘違いさせる名称や説明:
  ① 香港で特許代理サービスを提供できるように取得した資格
  ② 法律、または香港政府により承認された資格
(3) 第1項は、法管轄地域を明記し、香港以外の法管轄地域で合法的な特許代理サービ スを提供していることのみを示す資格に関する名称や説明の場合にはその使用を制限しない。
(4) 第1項に違反する場合、香港ドル500,000の罰金を科する。

引用:https://www.jpo.go.jp/news/kokusai/mohohin/document/manual/china05.pdf

 以上のとおり、香港において特許業務に関し何らかの公的な資格を有するかのような肩書を有することは禁止されています。これは、香港においてそもそも特許業務に関する公的な資格がないことに由来していると考えられます。

 最近香港で新しく導入された標準特許(O)は、上記で述べたような、海外での出願を基礎出願とするのではなく、香港における独自の出願を可能とするものです。これは、香港をテクノロジーハブとして機能させることを目的としていますが、香港固有の出願を許すということは、やはり出願手続にも一定の資格規制が必要ではないかと思う次第です。

 今後、香港でも弁理士資格制度が登場するかもしれません。

弁護士 神田 秀斗

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