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TRIPP TRAPP最高裁判決
2026年4月24日、ついに応用美術に関する最高裁判決(最判令和8年4月24日〔TRIPP TRAPP III事件最高裁判決〕)が出ました。有名なTRIPP TRAPPの著作物性が争点となった事案です。
最高裁が用いた基準
最高裁は、応用美術(量産実用品)の著作物性について、次のように判断基準を定立しました。「応用美術」という用語はあえて使わず、「量産実用品」を使用した点も注目されます。
「量産実用品の全体又は部分における形状等が、観念上、機能に由来する構成とは別個に、思想又は感情の創作的な表現として把握することができるものである場合には、当該量産実用品の全体又は部分は、著作権法2条1項1号にいう著作物のうち、美術の範囲に属するものに当たるというべきである。」
ポイントは、①量産実用品の「全体又は部分」を対象としていること、②「観念上」機能に由来する構成と分離して把握できれば足りるとしていること、③分離して把握される対象が「思想又は感情の創作的な表現」であることを要求していること、の3点です。観念的に機能由来部分と切り分けて創作的表現と把握できるかを問う枠組みとなっており、従来下級審で分かれていた判断手法に一定の方向性を示したといえます。
応用美術については、以前に「1つと3つの椅子を巡る判決-トリップトラップIII知財高裁判決による非区別説の終焉と残された課題-」コピライトVol.64 No.767(2025年3月号)29頁、「幼児用椅子TRIPP TRAPPは果たして著作物なのか−『美術の範囲』の解釈の深化を目指して−」パテント69巻7号(2016)94頁でも書いているのですが、表現物の外観を要素として重視し過ぎている、判断要素が明らかではない、という問題意識がありました。
結局、最高裁判決でも、基準のあてはめについては、外観に着目した判断という色合いが強いように思えます。
最高裁は、上告人らの主張、つまり、約66度の略L字型を成して床面から立ち上がっている2本の脚を有し、当該2本の脚の間に座面板及び足置板が床面と平行に固定されるようになっている点に創作性が認められる、との主張を取り上げたうえで、次のように述べて著作物性を否定しました。
「上記の点は、子供用の椅子としての機能に由来する構成である脚、座面板及び足置板の配置による形状が美感を起こさせるものであることを基礎付ける事情にすぎない。そして、本件椅子の全体又は部分における形状等は、子供用の椅子としての機能に由来する構成としてしかこれを把握することができず、当該構成とは別個に、思想又は感情の創作的な表現として把握することができるものではない。よって、本件椅子は、著作物に当たるとはいえない。」
今後の課題
外観の特徴は創作性とも関連しますが、果たして「美術の範囲」の解釈にどのように作用するのでしょうか。判断要素として表現物そのものを中心に捉えるのか、外部事情(表現物そのもの以外の事情)を考慮していくのかは最高裁判決によっても明らかではありません。
最高裁判決ですので、今後の裁判では、この基準が使われることになります。もっとも、裁判所がどのようにこの基準を運用していくかは不透明です。
弁護士 木村 剛大
