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INSIGHTコラム

殺菌・消毒・除菌・・・

2020.08.20 Thu
  • 薬機法マネジメント
  • 弁護士/神田 秀斗

1 表示が分かりにくい
 昨今の新型コロナウイルスの流行により,消毒液やウェットティッシュの需要が高まっています。ところが,商品の表記を見ると,「消毒」と書いてあったり,「除菌」と書いてあったり,もしくは何も書いていなかったりと表記方法についてなかなか分かりづらいところがあります。
そこで,購入者の方には正しく商品表記の意味を理解して購入していただきたく,これらの表記に関して検討した結果を記してみようと思います。

2 薬機法上の規制 
 まず,前提となる法律の規制を確認しましょう。
医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(以下「薬機法」といいます。)第68条は,以下のように規定しています。

「(承認前の医薬品、医療機器及び再生医療等製品の広告の禁止)
第六十八条 何人も、第十四条第一項、第二十三条の二の五第一項若しくは第二十三条の二の二十三第一項に規定する
医薬品若しくは医療機器又は再生医療等製品であって、
まだ第十四条第一項、第十九条の二第一項、第二十三条の二の五第一項、
第二十三条の二の十七第一項、第二十三条の二十五第一項若しくは第二十三条の三十七第一項の承認
又は第二十三条の二の二十三第一項の認証を受けていないものについて、
その名称、製造方法、効能、効果又は性能に関する広告をしてはならない。」

 やや分かりにくい条文ですが,要は承認を受けていないのに,「医薬品」であるかのような広告をしてはダメですよという規定です(本ブログの性質上,医療機器及び再生医療等製品は除きます。)

 では,「医薬品」とは何でしょうか。薬機法第2条第1項は,以下のとおり規定しています。

「第二条 この法律で「医薬品」とは、次に掲げる物をいう。
一 日本薬局方に収められている物
二 人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている物であって、
機械器具等(機械器具、歯科材料、医療用品、衛生用品並びにプログラム(電子計算機に対する指令であって、
一の結果を得ることができるように組み合わされたものをいう。以下同じ。)及び
これを記録した記録媒体をいう。以下同じ。)でないもの(医薬部外品及び再生医療等製品を除く。)
三 人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている物であって、
機械器具等でないもの(医薬部外品、化粧品及び再生医療等製品を除く。)」

 2号と3号が重要なのですが,条文からは,薬機法上,医薬品であるか否かは,①「人又は動物の疾病の診断、治療又は予防に使用されることが目的とされている」か否か,②「人又は動物の身体の構造又は機能に影響を及ぼすことが目的とされている」か否かにより判断されていることが分かります。つまり,人の疾病の予防・治療等や人の構造又は機能に影響を及ぼすような製品については,「医薬品」として規制をかけていくと理解できます。

 疾病の予防・治療等とはどのような場合をさすのか分かりにくいですが,まずはこのような薬機法のスタンスについて押さえておきます。重要なのは,疾病の予防・治療等を目的とした広告をする限り,薬機法上の承認を得なければならないということです。

3 殺菌・消毒・除菌・・・
 では,巷にあふれている「殺菌」や「バイ菌を除菌!」,「消毒用」などの表記は,薬機法上の承認を得て広告されているものなのでしょうか。
これを検討するためには,殺菌・消毒・除菌等が「疾病の予防・治療等」を目的とした記載か否かを判断する必要がありますが,まず前提として「殺菌」等の定義について確認してみましょう。定義については,経済産業省のガイドラインや各種公正競争規約等によりバラバラであり,なかなかまとまっているものは少ないですが,日本石鹸洗剤工業会のHP(https://jsda.org/w/03_shiki/a_sekken30.html)や全国家庭電気製品公正取引協議会の別表5(https://www.eftc.or.jp/code/notation/notation_table5.php)を参考に整理すると以下のとおりです。あくまで薬機法上の規制を理解するための大枠的な整理であり,科学的な知見が入っていないことはご容赦ください。

用語 意味
滅菌  微生物を完全に死滅させること。
殺菌  微生物の全部又は一部を殺すこと。
消毒  微生物のうち、病原性のあるものを殺滅、除去すること(無毒化)。
除菌  ある物質又は限られた空間より微生物を減少させること。
抗菌  微生物の発生、生育、増殖を抑制すること。

 
 違いが分かりにくいですが,上から3つ(滅菌,殺菌,消毒)に関しては,菌類を「無くす」ことに,下2つ(除菌,抗菌)に関しては菌を減らすことに主眼があるニュアンスを感じ取ることができます。
以上を前提にすると,「滅菌,殺菌,消毒」は,疾病の予防・治療等を目的とし,「除菌,抗菌」に関しては疾病の予防というよりも清掃・清浄を目的にしていると整理することができます。
したがって,「滅菌,殺菌,消毒」という表記があれば,薬機法上の承認を得ているはずだ!と理解できます(多くの商品は薬機法上の「指定医薬部外品」の承認を得ていますが,この点については割愛します)。

4 自主基準の重要性
 以上が薬機法上の規制の概要ですが,では,具体的にどのような広告内容であればよいのか,なかなか判断が難しいところです。商品表記において,単に「除菌!」とだけ書いてある商品はまれであり,いろいろな宣伝広告を記載するのが通常である以上,出来る限り具体的な基準が求められるところです。
ここで重要な役割を果たすのが自主基準です。例えば,最近(私も)消費が激しいウェットティッシュは,「日本衛生材料工業連合会」が出している自主基準があります(http://www.jhpia.or.jp/standard/wet_wiper/wet_wiper4.html)。ここでも,指定医薬部外品としての承認を受けていないことを前提に,「殺菌又は消毒」について,記載してはダメと書いてあります。

5 除菌,抗菌はフリーハンド?
 以上を前提にすると,「除菌,抗菌」に関しては,どのような場合でも表示することができると思われますがそうではありません。
 上記の「除菌,抗菌」の定義に該当しない商品,極端なことをいえば「水」について,「除菌,抗菌」を謳った場合,これは「嘘」ということになります。したがって,景品表示法上の優良誤認表示(景品表示法第5条第1項第1号)となり,消費者庁からの措置命令(広告の停止等)や課徴金納付命令の対象となります。
 以上のとおり,「除菌,抗菌」について何らの効果がないにもかかわらず広告表記として使用してよいわけでありません。したがって,「除菌,抗菌」について謳っている商品については,(おそらく)ある程度の効果が認められているという前提で購入してよいと思われます。

(神田)

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