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追及権の思想とNFTのロイヤルティ

2021.12.16 Thu
  • Art Law
  • エンターテインメント法
  • 著作権法
  • 弁護士/木村 剛大

OpenSeaなどのNFTマーケットプレイスでは作品の二次流通の際に一定パーセントが作者に支払われるロイヤルティの設定をすることができる仕様になっています。考え方としては、欧州で広く導入されている追及権(Artist’s Resale Right)に似ています。

追及権は、アートディーラー、オークションハウスなどによって原作品が転売されたときにアーティストに対して取引額の一定パーセントが支払われる制度で、アーティストに与えられる権利です。

1920年にフランスで生まれたのが起源とされ、欧州ではいわゆる追及権指令(Directive 2001/ 84 / EC)に基づきEU加盟国を中心に導入されています。

英国の追及権制度については、ウェブ版美術手帖に寄稿していますので、詳細は「日本にはない『追及権』とは何か?その仕組みと重要性」をご参照ください。

もっとも、NFTと追及権は基本的な考え方こそ似ているものの、制度としては全く別物と理解しておくべきでしょう。

作者への還元を実現するための2つの視点

追及権は、紛争を裁判によって解決する伝統的な紛争解決方法を前提として設計されています。裁判によって紛争を解決するための前提条件としては、(i)相手方を特定できること、(ii)費用に見合った効果が見込めることが必要です。

追及権という法制度ではなく、当事者間での契約によって制度を構築する場合、(i)支払いを受けるアーティストは、二次流通の際の売買に関与するわけではないので、売主、買主を特定できない(特定しにくい)、(ii)個々の取引によって生じるロイヤルティの金額は少額のことが多く、裁判をしても費用に見合った効果が見込めないという問題点があります。

追及権による問題点の解決

追及権は、法制度としてロイヤルティの支払いを設計することでこれらの問題点を解決しています。つまり、(i)追及権に基づくロイヤルティが発生するのはギャラリーやオークションハウスなどのプロフェッショナルが介在した取引に限定し、これらのプロフェッショナルに集中管理団体に対し売買の情報を報告する義務を課すことで相手方を特定できるようにし、(ii)個々の取引によって生じるロイヤルティの金額は少額のことが多いため、集中管理団体が多くのアーティストたちに代わり権利行使することで費用対効果のバランスをとっています。

スマートコントラクトによる問題点の解決

これに対して、NFTマーケットプレイスのロイヤルティは、スマートコントラクトによって自動実行される設定となっています。スマートコントラクトによって、(i)買主のウォレットアドレスが特定でき、(ii)買主からのロイヤルティの支払いは自動実行され、アーティストに送金されるため、問題点が解決されていることになります。

アートマーケットへの影響(市場の移動)

追及権は国ごとの法制度のため、導入の際によく指摘されるのは、追及権の導入によって市場が他の国(追及権を導入していない国)に移動してしまうのではないか、という懸念です。

例えば、英国で取引されると追及権の対象になるからロイヤルティも支払う必要がありますが、追及権を導入していないスイスでの取引であればロイヤルティを支払う必要がありません。

しかし、この点は追及権のロイヤルティが0.25%から4%であり、上限額が1万2500ユーロとの限定もあることから、追及権の導入と英国のアートマーケットとの間には明確な悪影響は確認されていないのが現状です。

これに対して、NFTマーケットプレイスでの取引では、市場の移動は考慮する必要はありません。そのため、NFTマーケットプレイスでのロイヤルティ率を決定する際に、追及権で定められているパーセンテージに縛られる必然性はありません。

実際に10%の設定はよく見られますし、20%を超える率が設定されることもあります。新たにNFTマーケットプレイスをつくる際には、追及権制度はあくまで参考程度に把握しておくのがよいでしょう。

弁護士 木村 剛大

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